政府の経済対策と歩調を合わせ、デフレ脱却を目指す姿勢をアピールする狙いなのだろう。
日本銀行が金融政策決定会合で、追加の金融緩和に踏み切った。上場投資信託(ETF)の買い入れ規模を、現在の年3・3兆円から6兆円に増やすことが柱である。
金融緩和は、マイナス金利の導入を決めた今年1月以来だ。
企業の海外展開を支援するため、金融機関に対する米ドル資金の供給枠も倍増させた。
黒田総裁は記者会見で、「海外経済の不透明感が高まっており、企業や家計の経済活動をサポートする」と強調した。
英国の欧州連合(EU)離脱決定などで、世界経済の不安要因が増しているのは事実だ。脱デフレを果たすまで、緩和的な金融政策を粘り強く続ける必要がある。
だが、金融市場の混乱はひとまず沈静化している。日銀は、「国内の物価上昇基調は崩れていない」と説明し、物価上昇率2%の目標の達成時期も従来の「2017年度中」を変更しなかった。
このタイミングで、本格的な追加緩和に動く必要性を見いだし難かったのではないか。実際、日銀は、年間80兆円規模の市場からの国債購入額と、現行のマイナス金利政策は維持した。
それでも日銀がETFの購入額を増やしたのは、「政府の経済対策と相乗効果を発揮する」との考えに加え、決定会合前から、市場では追加緩和への期待が過剰に高まっていたためだ。閣僚からも緩和を求める声が相次いでいた。
こうした状況を踏まえ、日銀として「ゼロ回答」は避けた方が良いと判断したのだろう。
ただ、決定を受けて、市場では、緩和策が株価を下支えするとの思惑が広がる一方で、金融政策が手詰まりになってきたとの見方から円相場や株価が乱高下した。
日銀は次回の決定会合までに、金融政策の手法と効果について検証するとしている。
黒田総裁は従来、「異次元緩和」で市場にサプライズを与える手法で物価上昇を促してきた。
今後は、過去の金融緩和の検証結果を踏まえ、経済や物価の先行きや、政策の方向性について、より丁寧に市場と対話を重ねていくことが求められよう。
無論、脱デフレは、日銀の金融政策だけでは実現できない。
金融緩和と財政政策で景気を下支えしている間に、政府は、経済対策の成長戦略を一段と強化することが肝要である。
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