韓国慰安婦財団 支援を着実に軌道に乗せたい

朝日新聞 2016年07月29日

慰安婦財団 緒に就いたにすぎない

戦時中、日本軍将兵たちの性の相手を強いられた元慰安婦らの支援にあたる韓国の財団がきのう、立ち上がった。

昨年末の日韓両政府による合意を受けた設立で、元慰安婦らへの具体的な措置にあたる。

政府同士が長年の懸案に終止符を打つべく合意したからといって、被害者らの負った傷がすぐに癒やされるはずもない。

元慰安婦らが少しでも心穏やかな余生を送れるよう日韓双方が今後も不断の努力を続ける必要がある。問題解決への取り組みは緒に就いたにすぎない。

元慰安婦らの考えは多様だ。彼女らの声に丁寧に耳を傾け、できることから着実に実行に移していくしかあるまい。

財団幹部が元慰安婦ら一人ひとりを訪ねて意見を聞いて回ったところ、相当数が財団を支持する意向を示したという。

その一方で、政治合意は日本の法的責任や国家賠償を明確に記していないとして、一部の元慰安婦や支援団体が反発し、白紙撤回を求めている。

責任をめぐる問題は、四半世紀の間、両国が決着点を見いだせなかった原因の一つである。だが合意は日本軍の関与の下で起きた問題だとし、安倍首相が謝罪と反省の意を表明するなど政府としての責任を認めた。

いま大切なのは、この合意を土台にして、元慰安婦の救済を具体的にどう進めていくかだろう。その目標に向かって、韓国の支援団体も財団の中で意見を述べて、ともに力を合わせてもらいたい。

日本政府は来月初めの局長級会談などを経て、10億円を財団に送る方針だ。合意に基づく行動で、当然の判断といえる。

自民党内には、ソウルの日本大使館前にある少女像の移転の確約を迫る声がある。だが固執すれば、合意の履行をむずかしくする。むしろ移転できるような環境の整備を急ぐべきだ。

また、韓国では合意内容を安倍首相が公の場で語らないことも不信を招いている。

首相はことし1月の国会で、合意の文言を繰り返して発言することは、「最終的、不可逆的に終わったことにならない」として、言及を拒んだ。これでは首相の真意に疑念が投げかけられるのもやむをえまい。

後戻りしない最終的な解決のためには、合意にあるように、日韓両政府が協力して事業にあたる必要がある。

互いに一方的な解釈を強調することなく、合意の精神を最大限尊重する。そのことが、問題解決への早道であることをいま一度、肝に銘じるべきである。

読売新聞 2016年07月29日

韓国慰安婦財団 支援を着実に軌道に乗せたい

慰安婦問題を巡る昨年末の日韓合意が、ようやく実行段階に入った。関係改善の流れを確実なものにせねばならない。

韓国政府が、元慰安婦を支援する「和解・癒やし財団」を発足させた。

理事長には、女性問題の専門家で、財団設立準備委員会の委員長を務めた金兌玄・誠信女子大名誉教授が就任した。

財団は、日本政府から10億円の拠出を受ける。元慰安婦や遺族に対し、見舞金の性格を持つ「癒やし金」の支給や名誉回復などの措置を検討している。

金氏は記者会見で、面談した元慰安婦の大半が「財団の事業に参加すると意思表示した」ことを明らかにした。

慰安婦問題は、四半世紀にわたり日韓関係に刺さったトゲであり、朴槿恵政権下での関係悪化の最大の要因となった。

朴大統領は、残り1年半余りの任期中に、財団の活動を軌道に乗せ、慰安婦問題を決着させるよう一層の努力が求められる。

日本政府は、8月中にも10億円を拠出する方向で調整中だ。合意時に存命していた元慰安婦46人のうち、6人が財団設立前に亡くなった。早期に資金を拠出し、事業を進めることが適切である。

1995年に日本政府が設立したアジア女性基金は、韓国では61人の元慰安婦に「償い金」を支給した。だが、元慰安婦を支援する団体が反発し、韓国政府が基金に協力しなかったため、十分な成果を上げられなかった。

この反省を踏まえ、今回は、韓国政府が財団の設立と運営に責任を負う態勢をとった点が重要だ。「最終的かつ不可逆的解決」と位置づけ、問題を蒸し返さないよう韓国側にクギも刺している。

懸念されるのは、元慰安婦の支援団体や左派野党が、合意への反対姿勢を崩していないことだ。財団発足の記者会見場に反対派の学生らが乱入する騒ぎもあった。

韓国側は、日本側が撤去を求めるソウルの日本大使館前の少女像について「適切に解決されるよう努力する」と約束している。像を設置した支援団体を説得できるかどうか、きちんと注視したい。

岸田外相はビエンチャンで尹炳世外相と会談し、「日韓合意以来、両国関係は前向きに進展している」と評価した。核実験やミサイル発射など挑発を重ねる北朝鮮への対処で意思疎通が円滑になったのは間違いない。

日韓は米国との同盟を軸に、安全保障協力を強めるべきだ。

産経新聞 2016年07月28日

慰安婦財団の設立 韓国は日本をおとしめる慰安婦像を早急に撤去すべきだ 約束守れぬ国と真の友好関係は築けない

韓国政府が元慰安婦の支援を目的とした財団を設立する。慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を表明した日韓合意に基づくものだ。

財団の事業内容や運営を通じ、韓国は合意を誠実に守るべきである。

しかし、本当に合意を履行できるのか。韓国側の姿勢には、なお疑念が拭えない。

財団の正式発足を前に、韓国外務省の副報道官は会見で、日本が拠出する10億円について「約束した資金はすぐに拠出されると思う」と述べた。それを言うなら先にやることがあるだろう。

在韓日本大使館前の道路に設置された慰安婦像は、いまだに撤去されず、像のまわりでは反日集会などが繰り返されている。

合意は韓国側が慰安婦像撤去に努力すると定めている。そもそも、公道に無許可で違法に設置されたものだ。公館の安寧や尊厳維持の観点からも、国際社会の儀礼からも外れている。

韓国政府は民間が設置したことを言い訳にしているが通らない。合意を守る象徴的な意味からも、日本をおとしめる像を早急に撤去すべきだ。

先にラオスで開かれた日韓外相会談で、合意を着実に履行することを確認したという。昨年末、両外相がそろって国際社会に表明してから7カ月たつのに「再確認」しなければならないこと自体、合意履行作業が滞っている表れである。それは、国内の反発を抑えきれず腰が引けた韓国政府の事情によるところが大きい。

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