道徳の成績評価 教師の力量こそ問われる

読売新聞 2016年07月26日

道徳の成績評価 子供の成長過程に注目しよう

思いやりの心や規範意識を育む中で、子供の努力や成長に目を向ける。道徳の授業では、そうした観点が欠かせない。

文部科学省の専門家会議が、2018年度以降に小中学校で正式の教科に格上げされる道徳の評価方法に関して、報告書をまとめた。

1年間を通じ、子供たちの考え方や授業に取り組む姿勢にどんな変化が見られたかを、通知表などに文章で記述する。他の子供と比べる相対評価は行わない。入試の合否判定に使う内申書には、結果を記載しない。そんな内容だ。

道徳は、子供の内面にかかわる分野だけに、そもそも優劣をつける評価はそぐわない。国語や算数・数学などの教科のように、テストによって、点数化する方法が適切でないのは明らかだろう。

一人ひとりの成長過程を丁寧に記録する方向性は妥当である。

報告書は、授業中の発言や作文、感想文を評価の判断材料にすることを提案した。発言する機会が少ない子や作文が苦手な子については、他の生徒の話を聞く態度などに注目するよう求めた。

生徒の特徴に配慮した、きめ細かな評価が必要になるだけに、教師の力量が問われよう。

道徳の授業は学級担任の教師が行う。担任任せにしてしまうと、評価の尺度や観点がばらばらになりかねない。各学校で教師同士がコミュニケーションを重ね、共通認識を持つことが大切だ。

年に何度か、教師が交代で他のクラスの道徳の授業を行っている学校がある。複数の教師が指導することで、子供の新たな面をとらえる効果が見られるという。参考になる取り組みではないか。

道徳については、正規の教科でなかったため、大学の教員養成課程で指導方法が十分に教えられてこなかった。教育委員会などが研修体制を整え、教師の指導力の底上げを図らねばならない。

道徳教育の充実には、教科書の役割が大きい。教科化に伴い、検定教科書が導入されることになり、今年度は小学校用の教科書の検定が実施される。これまでに教科書会社など8社が申請した。

道徳教科書の検定基準は、特定の主義主張に偏った記述を排し、子供たちが多角的に考えられる内容にするよう求めている。

道徳の教科化に対して、愛国心を強要する戦前の国家主義教育を招きかねないとの批判がある。的外れと言うほかない。

厳正な検定を通じ、質の高い教科書が行き渡るようにしたい。

産経新聞 2016年07月25日

道徳の成績評価 教師の力量こそ問われる

道徳の教科化に伴い文部科学省の専門家会議が、成績評価の方法を示した。記述式で児童生徒一人一人が自分の成長を実感できるよう励ますものにする。

「道徳の評価は難しい」と腰が引けた教師にも分かりやすく、妥当な提言だろう。

評価がおざなりでは、子供たちの成長は望めない。教師の意識を変え、道徳教育の充実を実現してもらいたい。

現在、小中学校で週1時間ある「道徳の時間」が、小学校で平成30年度、中学で31年度から「特別の教科」に格上げされる。教科になれば教科書を使い、評価が行われる。今年度は小学校用の教科書検定が行われている最中だ。

道徳は戦後、「価値観を押しつける」といった反対が根強く正式な教科とされなかった。成績を評価することについても「教師の好む発言をする子が増える」などの批判や懸念がいまだにある。

だが道徳は、特定の考え方を押しつける授業と「対極」にある。立場による価値観の違いなど物事を多角的にみる力を養うものだ。教科化を提言した中央教育審議会の答申で明確にされたことだ。

今回、評価にあたっても「自分と違う意見を理解しようとしているか」などの観点をあげた。

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