思いやりの心や規範意識を育む中で、子供の努力や成長に目を向ける。道徳の授業では、そうした観点が欠かせない。
文部科学省の専門家会議が、2018年度以降に小中学校で正式の教科に格上げされる道徳の評価方法に関して、報告書をまとめた。
1年間を通じ、子供たちの考え方や授業に取り組む姿勢にどんな変化が見られたかを、通知表などに文章で記述する。他の子供と比べる相対評価は行わない。入試の合否判定に使う内申書には、結果を記載しない。そんな内容だ。
道徳は、子供の内面にかかわる分野だけに、そもそも優劣をつける評価はそぐわない。国語や算数・数学などの教科のように、テストによって、点数化する方法が適切でないのは明らかだろう。
一人ひとりの成長過程を丁寧に記録する方向性は妥当である。
報告書は、授業中の発言や作文、感想文を評価の判断材料にすることを提案した。発言する機会が少ない子や作文が苦手な子については、他の生徒の話を聞く態度などに注目するよう求めた。
生徒の特徴に配慮した、きめ細かな評価が必要になるだけに、教師の力量が問われよう。
道徳の授業は学級担任の教師が行う。担任任せにしてしまうと、評価の尺度や観点がばらばらになりかねない。各学校で教師同士がコミュニケーションを重ね、共通認識を持つことが大切だ。
年に何度か、教師が交代で他のクラスの道徳の授業を行っている学校がある。複数の教師が指導することで、子供の新たな面をとらえる効果が見られるという。参考になる取り組みではないか。
道徳については、正規の教科でなかったため、大学の教員養成課程で指導方法が十分に教えられてこなかった。教育委員会などが研修体制を整え、教師の指導力の底上げを図らねばならない。
道徳教育の充実には、教科書の役割が大きい。教科化に伴い、検定教科書が導入されることになり、今年度は小学校用の教科書の検定が実施される。これまでに教科書会社など8社が申請した。
道徳教科書の検定基準は、特定の主義主張に偏った記述を排し、子供たちが多角的に考えられる内容にするよう求めている。
道徳の教科化に対して、愛国心を強要する戦前の国家主義教育を招きかねないとの批判がある。的外れと言うほかない。
厳正な検定を通じ、質の高い教科書が行き渡るようにしたい。
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