世界経済を安定基調に乗せるには、経済基盤をより強固にするための構造改革が、各国に求められている。
主要20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が中国で開かれた。
共同声明は、英国の欧州連合(EU)離脱決定で「世界経済の不確実性が増している」と指摘した。「将来的に、英国がEUの緊密なパートナーであることを期待する」とも強調した。
ハモンド英財務相は、麻生財務相ら各国代表と会談し、離脱への道筋などについて意見交換した。世界経済への悪影響を抑えるには、情報開示に努め、離脱交渉を円滑に進めることが重要だ。
金融市場は、英国民投票後に乱高下した為替や株式の相場が、概ね投票前の水準に戻った。
しかし、国際紛争や頻発するテロなど、世界経済が直面する脅威はむしろ増している。
国際通貨基金(IMF)は今月、今年と来年の世界の経済成長率見通しを引き下げた。不確実性の高まりで、消費や投資が減速するとみているためだ。
G20が、必要に応じて金融、財政、構造改革の政策手段を総動員することを改めて確認したのは、妥当である。
中でも、安定成長のためには、民間の活動を促して潜在成長力を高める構造改革がカギを握る。
規制緩和や、労働市場改革、成長分野の投資促進などで生産性を高める。賃金増を消費拡大につなげる。日本も、こうした改革を着実に進める必要がある。
共同声明は、中国鉄鋼の過剰生産問題で、市場を歪める政府補助金に「注目を必要とする」と懸念を示した。中国は不採算な国営企業の改革を進めねばならない。
雇用の確保などを名目にした保護主義の台頭も、世界経済の大きなリスクである。英国のEU離脱決定は、内向き志向の表れだ。
米大統領選の共和党候補となったトランプ氏は「米国第一」を訴え、日米など12か国が合意した環太平洋経済連携協定(TPP)を全面否定している。
G20会議では、自由貿易による互恵主義を揺るがす動きを警戒する声が相次いだ。共同声明が「あらゆる形態の保護主義に対抗する」と明記したのは当然だ。
日本は、秋の臨時国会で速やかにTPPの承認や関連法案の成立を図り、米議会の承認に弾みをつけたい。TPP発効は、日EUの経済連携協定(EPA)交渉の前進にもつながろう。
この記事へのコメントはありません。