東京都知事選の告示から1週間余が過ぎた。
中盤戦を迎えても、論戦が深まっているとは言い難い。候補者は、公約の実現性を競い、有権者に判断材料を提供すべきだ。
元防衛相の小池百合子氏、自民、公明両党などが推薦する元総務相の増田寛也氏、ジャーナリストで、民進、共産など4野党推薦の鳥越俊太郎氏らが支持を訴える。
主要候補は、都政の重要課題に向き合うことを公約に掲げているものの、いずれもスローガン先行の印象が拭えない。
首都直下地震対策では、一様に建物の耐震化と不燃化を挙げた。2020年東京五輪・パラリンピックについても、費用を抑制しつつ成功を目指す点で一致する。
ただし、木造住宅密集地域での住宅解体費用の補助や、五輪開催費用の分担を巡る国や大会組織委員会との協議など、以前から都が進めてきた取り組みもある。それらをどう受け継ぎ、改めるのか、判然としないのは物足りない。
その中で、8000人を超える待機児童の問題では、具体性にやや濃淡が出ている。
小池氏は、保育所の受け入れ年齢や広さといった規制を「見直す」と主張する。増田氏は「1か月以内に解消に向けた地域別のプログラムを作る」と約束した。
鳥越氏は、告示翌日の15日に公表した政策集に、「あらゆる施策を通じて、待機児童ゼロを目指す」と明記したが、どのような施策なのかは、はっきりしない。
前知事の舛添要一氏の辞職による急な選挙で、準備期間が短かったという事情はあろう。そうであっても、目玉とする政策については、財源や実現への手順をきちんと示すべきではないか。
主張が割れるテーマもある。
在日外国人に対する選挙権の付与に関し、鳥越氏が肯定的な見解を示すのに対し、小池氏は明確に反対する。岩手県知事時代に永住者の地方参政権を認める発言をした増田氏は今回、「慎重に考えるべきだ」と姿勢を変化させた。
選挙権付与は、公務員の任免を「国民固有の権利」と定める憲法に照らし、地方選挙であっても問題が大きい。鳥越氏は、そこをどう考えるのか。
鳥越氏の演説では、野党の国会議員が安倍政権批判に多くの時間を割き、本人も「憲法を大事にする」と呼応している。野党が都知事選をPRの場に利用している、と批判されても仕方がない。
31日の投票日に向け、都民は政策本位で訴えに耳を傾けたい。
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