都知事選論戦 公約の実現性を見極めよう

読売新聞 2016年07月22日

都知事選論戦 公約の実現性を見極めよう

東京都知事選の告示から1週間余が過ぎた。

中盤戦を迎えても、論戦が深まっているとは言い難い。候補者は、公約の実現性を競い、有権者に判断材料を提供すべきだ。

元防衛相の小池百合子氏、自民、公明両党などが推薦する元総務相の増田寛也氏、ジャーナリストで、民進、共産など4野党推薦の鳥越俊太郎氏らが支持を訴える。

主要候補は、都政の重要課題に向き合うことを公約に掲げているものの、いずれもスローガン先行の印象が拭えない。

首都直下地震対策では、一様に建物の耐震化と不燃化を挙げた。2020年東京五輪・パラリンピックについても、費用を抑制しつつ成功を目指す点で一致する。

ただし、木造住宅密集地域での住宅解体費用の補助や、五輪開催費用の分担を巡る国や大会組織委員会との協議など、以前から都が進めてきた取り組みもある。それらをどう受け継ぎ、改めるのか、判然としないのは物足りない。

その中で、8000人を超える待機児童の問題では、具体性にやや濃淡が出ている。

小池氏は、保育所の受け入れ年齢や広さといった規制を「見直す」と主張する。増田氏は「1か月以内に解消に向けた地域別のプログラムを作る」と約束した。

鳥越氏は、告示翌日の15日に公表した政策集に、「あらゆる施策を通じて、待機児童ゼロを目指す」と明記したが、どのような施策なのかは、はっきりしない。

前知事の舛添要一氏の辞職による急な選挙で、準備期間が短かったという事情はあろう。そうであっても、目玉とする政策については、財源や実現への手順をきちんと示すべきではないか。

主張が割れるテーマもある。

在日外国人に対する選挙権の付与に関し、鳥越氏が肯定的な見解を示すのに対し、小池氏は明確に反対する。岩手県知事時代に永住者の地方参政権を認める発言をした増田氏は今回、「慎重に考えるべきだ」と姿勢を変化させた。

選挙権付与は、公務員の任免を「国民固有の権利」と定める憲法に照らし、地方選挙であっても問題が大きい。鳥越氏は、そこをどう考えるのか。

鳥越氏の演説では、野党の国会議員が安倍政権批判に多くの時間を割き、本人も「憲法を大事にする」と呼応している。野党が都知事選をPRの場に利用している、と批判されても仕方がない。

31日の投票日に向け、都民は政策本位で訴えに耳を傾けたい。

産経新聞 2016年07月24日

都知事選と政策 課題克服へ選択肢足りぬ

2代続けて現職が不祥事で途中辞任した混乱に歯止めをかけ、政治を立て直す展望は見えてきただろうか。

中盤にさしかかった東京都知事選で、各候補らの論戦はいまだ十分とはいえない。

終盤に向け、東京が抱える諸課題に向き合い、実現可能な解決策を語ることで、有権者の判断材料を示してもらいたい。

産経新聞の世論調査などによると、選挙戦はジャーナリストの鳥越俊太郎氏、元総務相の増田寛也氏、元防衛相の小池百合子氏の3氏を軸に展開されている。

選挙期間中、東京都の待機児童が昨年より約650人増え、約8400人になったことが発表された。子育て環境の深刻化が改めて浮き彫りになった。

3氏とも待機児童ゼロの方向性を打ち出しているが、説得力に欠けている点は残念である。

鳥越氏の公約には、具体的な処方箋自体がみられない。

増田氏は「緊急プログラム」を就任後、1カ月以内に策定するとしているが、解決の方向性を示していないのは無責任だ。

小池氏は「保育所の受け入れ年齢、広さ制限などの規制見直し」をうたうものの、実現時期などは曖昧なままとなっている。

介護体制の充実や首都直下地震に対応可能な防災対策など、1300万都民の生命と暮らしを守る政策展開は待ったなしである。具体的な答えを示し、論戦を深めることが欠かせない。

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