安全に留意し、ルールを守ってこそ、ゲームは楽しい。
世界各国で大人気のスマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」の配信が、日本でも始まった。
無料でアプリをダウンロードし、スマホのカメラで周辺を映し出すと、風景の中にポケモンが合成表示される。それにボールを当てて捕まえるゲームだ。
任天堂の関連会社ポケモンなどが手がける。街を歩き回りながらキャラクターを集める新タイプのゲームとして話題となった。
米国では1日の利用者数が約2300万人に達した。スマホ向けゲームでは過去最高だという。ダウンロードしているのは、ポケモンが人気を呼んだ1990年代に子供だった人たちが中心だ。
日本発のコンテンツが海外でも愛されている好例である。
経済的効果も見込める。ポケモンを捕まえるための道具を入手できるスポットを、飲食店などに設定すれば、集客に役立つだろう。日本マクドナルドはポケモンGOとの提携を発表した。
任天堂の株価は一時、6年ぶりに3万円台を記録した。関連株も好況だ。ゲーム業界の起爆剤となることが期待されている。
一方で、懸念も多い。
米国では、スマホの画面に気を取られ、看板などにぶつかって負傷する人が相次いでいる。運転中にゲームに興じて事故を起こしたり、足を踏み外して崖から転落したりした例もある。
日本でも、歩きながらメールなどをする「歩きスマホ」が大きな問題となっている。ポケモンGOが、それに拍車をかけることにならないか。駅のホームで事故が起きかねないと、鉄道会社は神経をとがらせている。
ゲームにそぐわない場所にまで利用者が足を踏み入れることも考えられる。米国では、同時テロ跡地の慰霊碑やホロコースト記念博物館などにポケモンが現れ、施設側が不快感を示している。
事業者には、危険な場所や不適切な施設を洗い出し、ゲームの舞台から外すようにソフトを設定することが求められる。トラブルが生じた際に、その場所を速やかに除外する柔軟な対応も必要だ。
夏休みに入り、ポケモンGOで遊ぶ子供たちは多いだろう。政府は、ネット上で注意を喚起し、菅官房長官は記者会見で、「安全に使うため、注意点を守ってほしい」と異例の呼びかけをした。
家庭でも、保護者が子供に守るべきことをきちんと伝えたい。