川内原発と新知事 安定供給の責務忘れずに

朝日新聞 2016年07月17日

川内原発 新知事は考えを語れ

「原発をいったん停止して再点検する」

全国で唯一稼働中の九州電力川内原発を抱える鹿児島県の知事に、こう訴えた元テレビ朝日コメンテーター、三反園訓(みたぞのさとし)氏(58)が就任する。無所属新顔として知事選に立ち、川内原発の再稼働に同意した現職の伊藤祐一郎氏(68)を破った。

4選を目指した伊藤氏への多選批判が決め手になったとの見方が多いが、三反園氏が熊本地震を受けて川内原発一時停止の公約を打ち出した影響も小さくなかっただろう。地震発生直後の1週間で、停止を求めるメールや電話が九電に5千件も寄せられるなど不安が広がったからだ。

ところが、三反園氏は当選直後に「九電に一時停止を申し入れる」と改めて表明したものの、その後は詳しい説明をしていない。一時停止を選挙公約にしていたとはいえ、運動期間中に積極的に訴えたわけではなかった。それだけに、原発推進・反対両派を含め、県民の間に疑心暗鬼も生じているようだ。

知事には稼働中の原発を止める法的権限はない。ただ、昨年夏から秋に再稼働した川内原発1、2号機はこの秋から冬にかけて定期点検で再び止まる。九電が点検終了後に稼働させる際、知事の同意はいらないものの意向は無視もできず、稼働へハードルは高くなる。

三反園氏は、自らの考えをしっかり語り続けるべきではないか。九電や再稼働を支えた県議会との向き合い方を練っているのでは、との見方もあるが、まずは県民に対して説明することが基本のはずだ。

三反園氏が知事選で掲げた公約は、(1)川内原発を停止し、施設の点検と避難計画の見直しを行う(2)有識者による原子力問題検討委員会を置く、といった内容だ。

熊本地震では熊本県内で数多くの道路や橋が崩壊し、余震が次第に川内原発に近づいていった。もし原発近くが震源になると避難路が寸断されるのではないか。そんな県民の不安に応じようとする姿勢がうかがえる。

三反園氏がいう原子力問題検討委と同種の委員会は、すでに新潟県や静岡県などにある。再稼働を目指す原発の安全審査は政府の原子力規制委員会が担うが、議論を専門家任せにせず、地方自治体が住民を守る役割を積極的に果たすことは大切だ。

原発一時停止を掲げて当選した以上、考えを丁寧に説明し、県民の不安を解消する努力を続ける。それが新知事に求められている姿勢である。

産経新聞 2016年07月15日

川内原発と新知事 安定供給の責務忘れずに

鹿児島県知事に当選した元テレビ朝日記者、三反園訓氏が、九州電力の川内原発(同県薩摩川内市)について一時的な稼働停止を求める姿勢を示している。

選挙中、三反園氏は「熊本地震の影響で県民に不安が広がっている」と主張し、安全性確認の調査が必要だとしてきた。だが、原発の運転停止を求める法的権限を知事は持たない。

それよりも、知事には地元の暮らしや産業を守るため、電力の安定供給を促すことの重要性を忘れないでほしい。原発を含めた多様な電源を、十分に確保しておくことに重きを置くべきだ。

川内1、2号機は昨年、原子力規制委員会の安全審査に合格し、国内の原発として唯一、再稼働を始めた。現職の伊藤祐一郎知事は再稼働に前向きな姿勢をとってきたが、ゴーサインを出したのはあくまでも規制委である。

今年4月に熊本県で2回にわたって震度7の強い地震が発生し、その後も余震が続いたことなどをとらえ、三反園氏は知事選公約で、活断層などを調査するため、原発停止を求めるとした。

だが、一連の地震で川内原発で観測された揺れは、自動停止の設定値を大幅に下回っている。規制委も地震後の臨時会合で「安全性に問題があるとは判断していない」との結論を下している。

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