革命記念日というフランスの最も重要な祝祭を狙った残虐なテロだ。断じて許されない。
地中海に面する仏南東部の保養地ニースで、革命記念日の14日、大型トラックが遊歩道を約2キロ暴走し、花火の見物客をなぎ倒す事件が起きた。子供を含む多数が犠牲になった。
トラックを運転していた犯人は警官との銃撃戦の末に、死亡した。ニース在住で仏国籍を有する31歳のチュニジア系の男とされる。窃盗の犯罪歴があるが、警察の監視対象ではなかったという。
警備が手薄で、不特定多数の一般市民が集まる「ソフトターゲット」を襲った大量殺人と言える。深刻なのは、比較的容易に入手できるトラックという新手の「凶器」が使用されたことである。
仏政府は、事件を「テロ」と断定し、捜査を始めた。犯行の動機や背景など、全体像の解明を急いでもらいたい。
事件がフランスに与えた衝撃は計り知れない。
オランド大統領は「自由の象徴である日に、フランスが攻撃された」と語り、テロに屈しない決意を表明した。18世紀の市民革命の意義を踏まえた発言だろう。
フランスは、サッカー欧州選手権の開催を厳戒態勢で乗り切り、昨年11月のパリ同時テロの直後に発した非常事態宣言を今月下旬に解除する予定だった。
その矢先に、地方都市で重大なテロが起きたことは、警備の難しさを浮き彫りにした。
オランド氏は、「仏全土がイスラム過激派のテロの脅威に直面している」との認識を示した。
政府は非常事態宣言をさらに3か月延長し、軍の予備役を招集するなど警戒を強化する。数千人の潜在的なテロリストに対する監視態勢の見直しが欠かせない。
欧州連合(EU)は先月の首脳会議で、治安分野での協力拡充で一致した。英国のEU離脱決定に伴う動揺で、欧州のテロ対策の取り組みが停滞してはならない。
モンゴルでのアジア欧州会議(ASEM)首脳会議に出席した安倍首相が「罪のない人々を巻き込む卑劣なテロを断固非難する」と述べたのは当然である。各国首脳からも、テロと戦うフランスへの連帯を示す発言が相次いだ。
今月のバングラデシュでのレストラン襲撃事件では、イスラム過激派によるテロがアジアにも広がっていることが鮮明になった。
今回の会議を、アジアと欧州のテロ対策での協力を一段と深める機会とせねばならない。
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