仏車突入テロ 祝祭を標的にした新手の蛮行

朝日新聞 2016年07月16日

仏のテロ 許されぬ市民への攻撃

罪のない市民を狙う卑劣な行為が、いったいいつまで続くのだろうか。

フランス南部の国際リゾート都市ニースで、休日の夜を楽しむ人々の中を大型トラックが暴走した。犠牲者は80人を超え、子どもたちも含まれる。

運転手は、銃撃戦の末に射殺された。当局は、テロ事件として捜査している。

どんな理由があろうとも、武器を持たない市民への暴虐は、断じて容認できない。

フランスでは、昨年1月に風刺週刊紙「シャルリー・エブド」襲撃事件が、11月にパリ同時多発テロが、相次いで起きた。また、今年3月にはブリュッセルの空港や地下鉄でも連続テロがあった。

これらを受けて、仏当局は厳戒態勢を取ってきたはずだった。今後は警戒のあり方に見直しも迫られそうだ。

バングラデシュの首都ダッカで今月起きたテロでは、日本人7人が犠牲になった。モンゴルで始まったアジア欧州会議(ASEM)でもテロ対策が主要議題となったが、日本も欧州など各国と緊密に連絡を取り、議論に積極的に参加すべきだ。

事件が起きた14日は、フランス革命を記念する祝日だった。これを祝う花火を見ようと、大勢の人が集まっていた。

海に面した現場は、ニースで最も華やかな街路だ。世界中から観光客やバカンス客がやってくる。さざ波の音を耳に、潮風を肌に散策を楽しむ世界は、自由と平等、博愛を掲げたフランス革命以来、市民社会が模索と成熟を重ねて到達した一つの姿とも言える。

そのような、安心と喜びに満ちたライフスタイルこそが標的になったのか。だからこそ、容疑者はあえてこの日この場所を狙ったとも考えられる。

容疑者は31歳の男性だと報じられている。パリやブリュッセルのテロの場合のように、欧州社会で生まれ育ったいわゆる「ホームグロウン」なのか。過激派とのつながりはあるのか。捜査を待たねばならない。

重要なのは、暴力を封じ込めるだけでなく、なぜ彼らが暴力に向かうのか、背景の解明も含めて対策を練ることだ。そのためには、治安機関や捜査機関だけでなく、社会学や心理学など各分野の英知を結集し、外交問題や社会の格差、移民問題など幅広い分野での課題を検討する必要がある。

道は遠いが、少しずつ歩みを進めたい。まずは各国が協調し、テロや暴力を許さない姿勢を示すことが大切だ。

読売新聞 2016年07月16日

仏車突入テロ 祝祭を標的にした新手の蛮行

革命記念日というフランスの最も重要な祝祭を狙った残虐なテロだ。断じて許されない。

地中海に面する仏南東部の保養地ニースで、革命記念日の14日、大型トラックが遊歩道を約2キロ暴走し、花火の見物客をなぎ倒す事件が起きた。子供を含む多数が犠牲になった。

トラックを運転していた犯人は警官との銃撃戦の末に、死亡した。ニース在住で仏国籍を有する31歳のチュニジア系の男とされる。窃盗の犯罪歴があるが、警察の監視対象ではなかったという。

警備が手薄で、不特定多数の一般市民が集まる「ソフトターゲット」を襲った大量殺人と言える。深刻なのは、比較的容易に入手できるトラックという新手の「凶器」が使用されたことである。

仏政府は、事件を「テロ」と断定し、捜査を始めた。犯行の動機や背景など、全体像の解明を急いでもらいたい。

事件がフランスに与えた衝撃は計り知れない。

オランド大統領は「自由の象徴である日に、フランスが攻撃された」と語り、テロに屈しない決意を表明した。18世紀の市民革命の意義を踏まえた発言だろう。

フランスは、サッカー欧州選手権の開催を厳戒態勢で乗り切り、昨年11月のパリ同時テロの直後に発した非常事態宣言を今月下旬に解除する予定だった。

その矢先に、地方都市で重大なテロが起きたことは、警備の難しさを浮き彫りにした。

オランド氏は、「仏全土がイスラム過激派のテロの脅威に直面している」との認識を示した。

政府は非常事態宣言をさらに3か月延長し、軍の予備役を招集するなど警戒を強化する。数千人の潜在的なテロリストに対する監視態勢の見直しが欠かせない。

欧州連合(EU)は先月の首脳会議で、治安分野での協力拡充で一致した。英国のEU離脱決定に伴う動揺で、欧州のテロ対策の取り組みが停滞してはならない。

モンゴルでのアジア欧州会議(ASEM)首脳会議に出席した安倍首相が「罪のない人々を巻き込む卑劣なテロを断固非難する」と述べたのは当然である。各国首脳からも、テロと戦うフランスへの連帯を示す発言が相次いだ。

今月のバングラデシュでのレストラン襲撃事件では、イスラム過激派によるテロがアジアにも広がっていることが鮮明になった。

今回の会議を、アジアと欧州のテロ対策での協力を一段と深める機会とせねばならない。

産経新聞 2016年07月16日

南仏トラック突入 多様なテロ想定し備えを

フランス南部ニースで、革命記念日の花火見物の群衆に大型トラックが突っ込み、住民や観光客ら多数が死傷した。

トラックは約2キロにわたり、人々をなぎ倒しながら暴走した。運転していた男は、警官隊に射殺された。

市民を無差別に襲った残忍なテロである。いかなる理由があったとしても、断じて許すことはできない。

テロは警備の弱点や隙をついて行われる。今回はトラックが凶器となり、車内からフランスとチュニジアの二重国籍の男の身分証がみつかった。

単独犯なら事前のテロ情報もつかみにくい。捜査当局は、犯行の動機やイスラム過激派との関係解明などに全力を挙げてもらいたい。犯行を未然に防ぐ手立てがなかったかも検証すべきだ。

フランスでは昨年1月、風刺週刊紙などへの連続テロが起きた。11月の同時多発テロでは、パリ中心部の劇場や飲食店が襲撃され、130人が犠牲になった。

このとき発動された非常事態は3度延長され、国内で約1カ月にわたり開催されたサッカー欧州選手権では厳戒態勢が敷かれた。

だが、今回のように、休暇シーズンの催しなど警備が手薄なソフトターゲットが狙われた場合、テロを完全に防ぐのは困難だ。

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