都知事選 冷徹に新たな顔の選択を

朝日新聞 2016年07月14日

都知事選 「東京の未来」論じよう

1300万都民のリーダーを選ぶ東京都知事選が、きょう告示される。

立候補を表明しているのは、自民党衆院議員で元防衛相の小池百合子氏、元岩手県知事で編著「地方消滅」で人口急減社会に警鐘を鳴らした増田寛也氏、ジャーナリストで「憲法改正への流れを変えたい」と手を挙げた鳥越俊太郎氏ら。

増田氏は自民、公明などが推す。これに反発する小池氏との間で自公陣営は分裂選挙となる。

鳥越氏は民進、共産、社民、生活の野党4党が参院選での共闘の流れを引き継ぎ、野党統一候補として支える。

元日弁連会長で前回は共産、社民両党の推薦を受け、次点だった宇都宮健児氏も、いったん立候補を表明した。

だが、野党票の分裂を避けようと、野党4党が鳥越氏への一本化を呼びかけた。宇都宮氏もこれに応じ、最終的に出馬を取りやめた。

各政党の候補者選びが参院選後にバタバタと進んだこともあり、都民にとって、各候補が何をめざすのか、その政策を聞く機会が乏しいまま選挙戦に突入することは残念でならない。

だからこそ、各候補に求めたい。「東京の未来」をどう描くのか、17日間の選挙戦を通して具体的な政策を競い合うことによって、有権者に判断基準を示してもらいたい。

都政が抱える課題は明白だ。

東京五輪・パラリンピックの準備が迫られるのはもちろんのことだ。約8千人といわれる保育所待機児童の解消、首都直下地震への備えも急務だ。

新知事が任期を終える2020年から都は人口減少に転じ、2035年には都民の3人に1人が65歳以上となる。「巨大都市の超高齢化」という未曽有の難問に直面することになる。

きのう日本記者クラブで行われた主な候補の会見でも、こうした点が論点となった。

逆にいえば、これらの課題を「解決する」と言うだけでは何も語っていないに等しい。

大切なのは、山積する課題に優先順位を示し、将来への大きな道筋を示すことだ。

少子高齢化、東京一極集中をはじめ全国共通の課題にメッセージを出し、時には国政にもの申す発信力も「首都の顔」として大事な資質だろう。

無党派層の多い都知事選は、知名度が優先されがちだ。それではダメだというのが猪瀬、舛添両都政の停滞で学んだ教訓だった。その苦さを、17日間の選挙期間中、忘れずにいたい。

読売新聞 2016年07月15日

都知事選告示 重責全うする「顔」を今度こそ

東京都知事選が告示された。2代続けて知事が政治とカネの問題で辞職するという異常な事態を受けた選挙だ。

都政の安定を取り戻して、重責を全うできる人物を、今度こそ見極めたい。

自民、公明両党などが推薦する元総務相の増田寛也氏、ジャーナリストで、民進など4野党推薦の鳥越俊太郎氏、元防衛相の小池百合子氏ら21人が立候補した。

前知事の舛添要一氏と2代前の知事だった猪瀬直樹氏は、ともに高い知名度を武器に当選した。2人が任期途中で失脚した教訓から、真に資質に優れた知事の誕生を都民は望んでいよう。

しかし、政党による候補者選びは迷走を重ね、有力候補の顔ぶれが確定したのは告示前夜という慌ただしさだった。結局、知名度頼みの選考となった印象が強い。

岩手県知事も務めた増田氏は、豊富な行政経験をアピールする。ただ、地方の衰退を食い止めるために、東京への一極集中の是正を唱えてきたことと、都知事の職務との整合性をどう取るのか。分かりやすい説明が求められる。

鳥越氏は、告示の前々日に出馬表明した際の記者会見で、「まだ公約はできていない」と述べた。主張に具体性を欠いたままでは、都民は判断のしようがない。

国政での野党共闘の枠組みを都知事選にまで持ち込み、統一候補とした4党の対応も疑問だ。

小池氏は都議会の冒頭解散を打ち出した。増田氏を擁立した自民党都連や都議会との対決姿勢を強調する戦術なのだろう。舛添氏の公私混同問題を検証する第三者委員会の設置も公約に挙げた。

都政の課題は山積している。新知事の任期は、2020年東京五輪・パラリンピックまでの4年間とほぼ重なる。準備に万全を期すことが最大の使命と言えよう。

少子高齢化対策や大規模災害への備えも重要だ。

増田氏は、待機児童問題、高齢化、首都直下地震という「三つの不安」の解消を掲げる。鳥越氏は「予算を見直して少子高齢化に手を打つ」と訴える。小池氏は「保育士の待遇改善」「建物の強靱きょうじん化」などで対処すると主張する。

舛添氏も4年で待機児童をゼロにすると公約し、保育サービスを拡充したが、在任中に大きく減少させることはできなかった。

公約を実行に移すための具体策こそが問われている。候補者は、政策の実現性を競うべきだ。31日の投票日に向け、密度の濃い論戦を展開してもらいたい。

産経新聞 2016年07月14日

都知事選 冷徹に新たな顔の選択を

首都の顔を選択する東京都知事選は14日、告示される。

新知事には、まず、2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催都市のトップにふさわしい人物であることが求められる。

同時に、深刻な少子高齢化の対策や待機児童の解消、防災都市づくりなど、山積する課題に対峙(たいじ)する強いリーダーシップが欠かせない。

猪瀬直樹氏、舛添要一氏と、2代続けて「政治とカネ」の問題によるお粗末な退任劇を繰り広げた末の選挙である。清廉な人物であることは大前提だ。

こうした条件を満たす候補者は誰なのか。有権者は冷徹な目で吟味する必要がある。もう失敗は、許されない。

ただ、13日に日本記者クラブで行われた立候補予定者の共同会見をみる限り、十分な選択肢が用意されたとは言い難い。

共同会見には、元日弁連会長の宇都宮健児氏、元防衛相の小池百合子氏、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏、元総務相の増田寛也氏が出席した。

それぞれの知事選に対する「一言」は以下の通りである。「困ったを希望に変える東京へ」「東京大改革」「がん検診100%」「混迷に終止符」。そして全候補が、五輪の成功と経費の見直しを標榜(ひょうぼう)し、待機児童の解消を約束した。そこに、大きな差異は見いだしにくい。

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