米軍属の男が起訴された沖縄県の女性殺害事件を踏まえた、迅速かつ現実的な対応と言える。
岸田外相と中谷防衛相がケネディ駐日米大使、ドーラン在日米軍司令官と会談し、日米地位協定の対象となる軍属の範囲を実質的に縮小することで合意した。
軍属は、米国予算による被雇用者、在日米軍が公式に招いた技術アドバイザーやコンサルタントなど4分類に限定する。日本の在留資格を持つ者は除外される。今回の事件の男は含まれなくなる。
軍属でなければ、公務中も日本の警察による身柄拘束が可能だ。日本側の裁判対象を拡大する。
日米両政府は数か月以内に、詳細を定めた文書をまとめる。日本側は、拘束力のある補足協定などの形式の文書にしたいという。実効性を持たせることが大切だ。
沖縄県内では、日米地位協定の抜本改定を求める声が根強い。
ただ、現状でも、殺人、婦女暴行など凶悪事件に関しては、起訴前の身柄引き渡しに米側が「好意的考慮」を払う仕組みである。
日本の警察や検察、裁判所が権限を適切に行使できるルールの確立が優先されるのではないか。
女性殺害事件後も、沖縄で米軍関係者が酒酔い運転容疑などで逮捕される事件が相次いでいる。
米軍は一時的に飲酒禁止令を出すなどしたが、効果は限定的だ。綱紀粛正の教育や研修の徹底を重ねて強く求めたい。
重要なのは、沖縄の過重な基地負担を着実に軽減することだ。
在日米軍が先月下旬、沖縄の米軍専用施設の数は全国比で39%に過ぎないとネット上で指摘した。沖縄県の翁長雄志知事は「ねじまげたのは残念だ」と反発した。
米軍専用施設に限れば、面積の全国比は74%に上り、この数字が長年、沖縄への基地集中を象徴すると喧伝されてきた。
だが、小松基地、東富士・北富士演習場など、米軍と自衛隊の共用施設を含めると、沖縄の施設の面積は22%にとどまる。統計次第で、その印象は大きく変わる。
日米合意に基づき、県内最大の米軍施設である北部訓練場の一部の返還が実現すれば、県内の米軍施設の総面積は2割も減る。
さらに、普天間飛行場を含め、人口が多い県南部の米軍施設の返還が進めば、県民は負担軽減を一段と実感できよう。
一連の施設返還計画を実行に移す際に、沖縄県が果たすべき役割は大きい。翁長氏には、積極的に政府と協調してもらいたい。
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