ダッカ銃撃 団結し過激主義を退けよ

朝日新聞 2016年07月04日

ダッカ襲撃 テロ拡散を阻む結束を

人々が集う日常の空間を、またもテロが無残に切り裂いた。

バングラデシュの首都ダッカで武装集団がレストランを襲撃し、多数の客を殺害した。

この国の発展のために日本の経済協力事業に取り組んでいた7人の日本人のほか、主要な輸出産業である衣料ビジネスで働くイタリア人、米国の大学に通う学生らが犠牲になった。

断じて許すことのできない卑劣な凶行である。

過激派組織「イスラム国」(IS)を名乗る犯行声明が出たが、背景はまだ不明だ。日本政府は今後の安全対策のためにも現地当局と積極的に協力し、情報収集を進めてもらいたい。

中東・アフリカから欧米、そしてアジアへ。テロは地球規模に拡散したといってよい。

チュニジアでは博物館、フランスではコンサート会場や飲食店、ベルギーとトルコでは国際空港が狙われた。共通点は、市民や外国人が集まり、警備が難しい場所が襲われたことだ。

市民の暮らしを狙う無差別暴力は自由への挑戦であり、今回も国連安保理を含む国際社会が強く非難したのは当然だ。

各地のテロにかかわったとされるISは、本拠のイラクとシリアで劣勢に立たされている。かわりに世界各地の支持者にテロを呼びかけて、影響力の維持を図ろうとしている。

最近は、その国で生まれ育ちながら、ネットでISに感化されたり、IS支配地に渡って訓練を受けたりした若者の関与が目立つ。今回も、現地の若者が実行したとみられている。

各国政府は綿密に情報を共有し、資金や武器の流れを断つなどして、テロの拡散防止に向けた結束を強める必要がある。

同時に、根本原因から目をそむけてはなるまい。なぜ若者はテロに手を染めるのか。

バングラデシュでは近年、安くて豊富な労働力が外資を呼び込み、年6%台の経済成長が続いた。半面、格差が広がり、学歴があっても大した仕事に就けない若者も増えていたという。

「穏健なイスラム社会」とみられてきたこの国で、現状への不満が過激思想へと転じる下地は静かにつくられていたのだ。

日本人もテロへの備えを強めざるを得ないが、心配なのは「外国は怖い」という意識が国際支援への関心や投資の意欲を冷え込ませることだ。

途上国の発展の道が断たれ、若者が希望をなくせば、テロのリスクは膨らむ。貧困や格差の解消に向けて、どう世界に関与し続けるか。グローバル化時代の各国に課された宿題だ。

読売新聞 2016年07月03日

ダッカ邦人死傷 テロの脅威が一段と拡散した

バングラデシュの開発支援に取り組む邦人が巻き添えになった。卑劣なテロである。

武装集団が首都ダッカのレストランを襲撃し、外国人客らを人質にして立てこもった。多数の客が死傷した。国際協力機構(JICA)の事業に関わる日本人も7人が死亡し、1人が負傷した。

不特定多数が集まる「ソフトターゲット」を狙った蛮行だ。安倍首相がハシナ首相との電話会談で、「このような非道な行為はいかなる理由でも許されない」と強く非難したのは当然である。

武装集団は店内で、「アラー・アクバル(神は偉大なり)」と叫びながら銃を発砲し、駆けつけた警官隊に爆弾を投げたという。

治安部隊が約10時間後に突入した際、銃撃戦や爆発が起きたという情報もある。バングラデシュ政府には、犠牲者が出た経緯も含め、事件の全容や救出作戦の詳細を明らかにしてもらいたい。

過激派組織「イスラム国」は今月上旬までのラマダン(断食月)中のテロを呼びかけていた。系列メディアが犯行声明を出した。国際テロ組織アル・カーイダ系支部が関与したとの見方もある。

バングラデシュはイスラム教徒が人口の90%を占める。中東、アフリカ、欧州から、テロの脅威が波及しているのは間違いない。

昨年以降、イスラム主義に批判的な作家やヒンズー教徒、外国人らを標的とする殺害事件や脅迫が相次いでいる。このうち約20件で、「イスラム国」支部を名乗る組織の犯行声明があった。

ハシナ首相は「国内に『イスラム国』は存在しない」と一貫して主張し、野党勢力が一連の事件に関与していると訴える。

テロ問題を政敵の打倒に利用しているのではないか。

安倍首相は参院選の遊説を中止し、首相官邸で陣頭指揮を執った。昨年発足した官邸直轄の国際テロ情報収集ユニットや医師らによる支援チームが、木原誠二外務副大臣と共に現地対応に当たる。

萩生田光一官房副長官は「危機管理態勢は全く問題ない」と強調した。日本人の治療や帰国の支援を優先することが重要だ。

政府やJICAなど関係機関は、テロ情報の収集、分析を強化し、在留邦人や旅行者への危険情報の発信に努めねばならない。

日本人が海外でテロに巻き込まれる例はもはや珍しくない。「イスラム国」は日本人も対象にすると威嚇している。現地の治安情勢に注意することが欠かせない。

産経新聞 2016年07月03日

ダッカ銃撃 団結し過激主義を退けよ

バングラデシュの首都ダッカのカフェに、武装グループが人質を取って立てこもった。警察が突入し犯人を射殺したが、日本人を含む人質と警察官も多数が死傷した。

襲撃犯は「アラー(神)は偉大なり」と叫びながら発砲した。過激組織「イスラム国」(IS)系の通信社が犯行声明を出したが、地元の過激派との見方もある。捜査当局は、武装グループの組織を早期に解明し、壊滅を目指してほしい。

現場周辺は日本などの大使館や外国人向け飲食店も多い繁華街で、国際社会の動揺を狙ったものだろう。どんな理由があれ、恐怖と暴力に訴えるテロ行為は許すことができない。

安倍晋三首相はバングラデシュのハシナ首相との電話会談で「断固として非難する」と述べた。テロへの怒りは、国際連携に結びつけなくてはならない。

欧州では、パリやブリュッセルで同時多発テロが起き、多くの市民が亡くなった。米フロリダ州でも6月、ISに忠誠を誓う男が米史上最悪の銃乱射事件を起こした。トルコでは6月末、イスタンブールの国際空港での自爆テロで多数が死傷した。バングラデシュでも最近、イスラム過激派による外国人やヒンズー教徒などを狙った凶行が相次ぎ、昨年10月には日本人男性も犠牲になっていた。

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