トルコの最大都市イスタンブールの国際空港で多数の死傷者を出すテロが起きた。中東と欧州などを結ぶ空の玄関口を狙った卑劣な犯行である。断じて許されない。
3人組の実行犯が空港内で銃を乱射した後、相次いで自爆した。トルコ当局は、過激派組織「イスラム国」のロシア人戦闘員らによるテロとみて捜査している。再発防止に向け、事件の全容を早期に解明してもらいたい。
利用客を装って厳戒下の国際空港に入り込み、自爆する手口は、「イスラム国」が3月にブリュッセルで実行したテロと同じだ。
銃や爆弾を隠し持ち、空港にタクシーで乗り付けるテロリストの凶行をどう阻止するのか。警備態勢の見直しは、各国に共通する喫緊の課題である。
「イスラム国」は2年前、イラクとシリアを中心とした「国家」の樹立を一方的に宣言した。原油密売などによる豊富な資金で勢力を拡大してきたが、最近は弱体化の兆候もみられる。
イラク政府軍は6月下旬、中部の要衝ファルージャを奪還した。米軍主導の有志連合による空爆も功を奏し、「イスラム国」は、その支配地域をイラクで45%、シリアで20%失ったとされる。
有志連合は、イラク軍やシリアのクルド人部隊などと連携し、2大拠点として残るイラクのモスル、シリアのラッカの攻略に向け、作戦を強化する必要があろう。
劣勢になった「イスラム国」が存在感をアピールするため、欧米でのテロを活発化させる事態も想定される。関係国が結束し、情報共有を進めねばならない。
トルコのエルドアン大統領が最近、外交姿勢を軟化させたことは、対「イスラム国」包囲網を狭める上で有益だろう。
昨年11月の露軍機撃墜について、プーチン大統領に謝罪の書簡を送り、ロシアによる経済制裁の解除など関係改善へ道を開いた。イスラエルとも、6年ぶりの関係正常化で合意し、テロ対策での協力強化を目指す。
エルドアン氏は強権政治や言論弾圧で批判を受けている。対「イスラム国」戦略でも、消極姿勢や米国との足並みの乱れが指摘されてきた。テロ頻発による観光客の激減などで経済が低迷する中、孤立脱却に乗り出したと言える。
シリアと国境を接するトルコは、「イスラム国」への外国人戦闘員の流入防止や難民問題の対応で重要な役割を担う。国内情勢と対外関係の安定が欠かせない。
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