ロシアの薬物汚染 不正断ち五輪の価値守れ

読売新聞 2016年06月24日

露ドーピング 五輪から汚染を排除できるか

ハードルを課しながらも、ロシアをリオデジャネイロ五輪から排除しなかった。極めて政治的な判断だと言えよう。

国際オリンピック委員会(IOC)が主要国際競技連盟などとの五輪サミットを開き、国ぐるみのドーピング問題で揺れるロシア選手のリオ五輪参加を条件付きで容認した。

陸上競技を含む五輪の全競技を対象に、ロシア国外の機関による検査などで潔白が証明できた選手は、ロシア代表として出場できる。8月に迫るリオ五輪の混乱を抑えるための苦肉の策だろう。

昨年11月にロシア陸上界の大がかりなドーピング違反が明らかになって以降も、ロシアでは陸上競技に限らず、検査逃れなどの不正が相次いで発覚した。

立ち入りに特別な許可を必要とする軍事拠点を居場所として検査官に伝えるなど、驚くべき悪質な実態が報告されている。

国際陸上競技連盟が17日、「ドーピング文化に顕著な変化が見られない」と結論付け、ロシア陸連の資格停止処分を解除しなかったのは、うなずける。

IOCも、この決定を支持した。それでも、条件付きでのリオ五輪参加を認めた背景には、ロシアへの配慮がうかがえる。

プーチン露大統領は「個人の責任であり、違反していない者が犠牲になってはならない」と国際陸連の決定に反発していた。ドーピングが組織的に行われていたことを考えれば、「個人責任」との主張は当たるまい。

ただ、ロシアは、陸上競技などでメダルを量産してきたスポーツ大国でもある。開催立候補都市の減少などで五輪の将来に危機感を強めるIOCが、ロシアとの関係に決定的な亀裂が生じるのを避けたとしても、不思議ではない。

IOCは、ケニアにも同様の条件を課した。ロシアだけを狙い撃ちにしたわけではない、と印象付ける思惑も透けて見える。

ロシアのドーピングは、旧ソ連時代から続くとされる。薬物の力を借りて勝利し、国威発揚につなげる。国主導でフェアプレーの精神をないがしろにしてきた。2014年のソチ五輪でも、検体のすり替え疑惑などが浮上している。

テニスのマリア・シャラポワ選手は禁止薬物を服用したとして、2年間の出場停止となった。

ロシアはドーピングの土壌を一掃できるのか。各選手のリオ五輪出場の是非を判断する各競技の国際連盟は、厳正な検査ルールの整備を急がねばならない。

産経新聞 2016年06月23日

ロシアの薬物汚染 不正断ち五輪の価値守れ

ドーピングと違法賭博は、スポーツの価値を損なう「二大悪」として、国際オリンピック委員会(IOC)などが根絶に努めている。違反者に対して厳しい姿勢で臨むのは当然である。

国際陸上競技連盟は組織的なドーピングで資格停止処分としていたロシア陸連に対し、リオデジャネイロ五輪への参加を認めない決議をした。

一方でIOCはロシアの全競技の選手について、国外の薬物検査で潔白が証明されることを五輪参加の条件とした。検査体制の不備を指摘されたケニアの全選手についても同様の措置をとる。

極めて異例の判断だが、不正に手を染めた関係者は、ファンや五輪を裏切る行為を恥ずべきだ。

世界反ドーピング機関(WADA)の報告書によれば、ロシアの検査体制を「不適格」とした昨秋からの半年間で選手に52件の陽性反応があり、700件超の検査逃れや拒否もあったという。対応が後ろ向きであったばかりか、国ぐるみの関与も疑われた。

2020年に東京五輪を控える日本にとっても重い課題である。現行法では、検査機関である日本アンチ・ドーピング機構(JADA)が警察や税関などの行政機関から疑わしい選手の情報提供を受けることに制約がある。

ロンドン五輪では関係機関の連携により、開幕前の半年間で107人の違反者を摘発した。20年五輪でも違反者の入国を水際で食い止められるよう、スポーツ庁などは法整備を急ぐ必要がある。検査体制の充実や啓発の努力も惜しんではならない。

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