ハードルを課しながらも、ロシアをリオデジャネイロ五輪から排除しなかった。極めて政治的な判断だと言えよう。
国際オリンピック委員会(IOC)が主要国際競技連盟などとの五輪サミットを開き、国ぐるみのドーピング問題で揺れるロシア選手のリオ五輪参加を条件付きで容認した。
陸上競技を含む五輪の全競技を対象に、ロシア国外の機関による検査などで潔白が証明できた選手は、ロシア代表として出場できる。8月に迫るリオ五輪の混乱を抑えるための苦肉の策だろう。
昨年11月にロシア陸上界の大がかりなドーピング違反が明らかになって以降も、ロシアでは陸上競技に限らず、検査逃れなどの不正が相次いで発覚した。
立ち入りに特別な許可を必要とする軍事拠点を居場所として検査官に伝えるなど、驚くべき悪質な実態が報告されている。
国際陸上競技連盟が17日、「ドーピング文化に顕著な変化が見られない」と結論付け、ロシア陸連の資格停止処分を解除しなかったのは、うなずける。
IOCも、この決定を支持した。それでも、条件付きでのリオ五輪参加を認めた背景には、ロシアへの配慮がうかがえる。
プーチン露大統領は「個人の責任であり、違反していない者が犠牲になってはならない」と国際陸連の決定に反発していた。ドーピングが組織的に行われていたことを考えれば、「個人責任」との主張は当たるまい。
ただ、ロシアは、陸上競技などでメダルを量産してきたスポーツ大国でもある。開催立候補都市の減少などで五輪の将来に危機感を強めるIOCが、ロシアとの関係に決定的な亀裂が生じるのを避けたとしても、不思議ではない。
IOCは、ケニアにも同様の条件を課した。ロシアだけを狙い撃ちにしたわけではない、と印象付ける思惑も透けて見える。
ロシアのドーピングは、旧ソ連時代から続くとされる。薬物の力を借りて勝利し、国威発揚につなげる。国主導でフェアプレーの精神を蔑ろにしてきた。2014年のソチ五輪でも、検体のすり替え疑惑などが浮上している。
テニスのマリア・シャラポワ選手は禁止薬物を服用したとして、2年間の出場停止となった。
ロシアはドーピングの土壌を一掃できるのか。各選手のリオ五輪出場の是非を判断する各競技の国際連盟は、厳正な検査ルールの整備を急がねばならない。
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