原子力発電を日本の主要エネルギー源として活用していくために、重要な一歩と言えよう。
営業運転の開始から40年を超えた関西電力高浜原子力発電所1、2号機について、原子力規制委員会が20年間の運転延長を認可した。
福島第一原発事故後に厳格化された新規制制度は、原発の運転期間を40年に制限し、例外的に最長20年間の延長を認めている。今回、それが初めて適用された。
40年超の原発でも、安全を確認して稼働させれば、電力の安定供給上、大いに有益である。
ただし、老朽原発の再稼働は容易ではない。関電は着実にハードルを越える必要がある。
最大の関門は、設備やシステムの改修だ。全長約1300キロ・メートルのケーブルの6割を難燃性に取り換える。残る部分も防火シートで巻くといった措置を施す。
重大事故に備え、格納容器上部に、コンクリート製の強固な覆いを建設する工事も待ち受ける。中央制御室では、安全確保の要となる制御盤を最新のタイプに更新する。複雑な制御システムを確実に機能させねばならない。
関電は、2019年秋に工事を終え、再稼働を目指す。規制委は工事の進展に合わせて、厳格な検査を実施する。格納容器内の主要設備の一部は、実際に揺さぶり、耐震性能を確認するという。
地元の理解を得ることも、再稼働に欠かせない条件である。関電は、工事内容や再稼働の必要性を丁寧に説明せねばならない。
工事には、2000億円を超える巨費を要するが、再稼働にこぎ着けられれば、1か月で90億円の収益改善につながる見通しだ。
関電は、一連の手続きを円滑に進め、今後も続く原発の長期運転のモデルとしてもらいたい。
規制委にも、審査の効率化が求められる。制度の仕組み自体を見直すことも大切だ。
電力会社が時間的余裕を持って運転延長を申請しようにも、現行では申請時期が限られている。さらに、運転開始後40年の日までに審査が未了だと、廃炉になる。
当然ながら、審査スケジュールは綱渡りになる。他の審査にもしわ寄せが出る。今回も、他の原発の再稼働審査が滞っている。
40年で運転を制限することが科学的に妥当かどうか、という根本的な問題も残っている。
政府は、30年度の原発比率として20~22%の目標を掲げる。その達成には、運転延長だけでなく、原発の新増設も検討すべきだ。
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