小中学生の学力水準を測る全国学力テストは、全員参加方式に戻すべきではないか。
小学6年と中学3年の全員参加を前提に、学力テストは過去3回、国語と算数・数学で行われてきた。
しかし、来月に予定される今年のテストは、文部科学省が抽出した一部の小中学校の児童生徒を対象にした方式に変わる。
文科省によると、抽出率は全国の小中学校の約3割にとどまる。ただし、抽出から漏れた学校にも自主参加は認められており、その約6割が参加を希望した。
抽出校と合わせると、小中学校の7割余りがテストを受ける。
従来の全員参加方式で、その効果が浸透し、各校の学力向上への意識が高まった結果だろう。
ただ、自主参加では、採点や集計を、学校や市町村教育委員会が独自に行わねばならない。
教員らの負担が大きく、業者に委託すれば費用がかかる。財政負担を理由に、自主参加に二の足を踏んだところも少なくない。
採点・集計費用を市町村に援助する予定の県は、抽出と自主参加を合わせた参加率が高いが、これを見ても費用の問題が自治体の重荷であることが理解できよう。
同じテストを受けるのに、不公平が生じてはなるまい。今年は実施が間近に迫っているため無理でも、来年以降は見直すべきだ。
学力テストは、学習内容や授業時間を大幅に減らしたゆとり教育への批判と、国際学力調査で学力低下が表面化したことを受け、2007年、43年ぶりに復活した。テスト結果を教育施策と授業の改善に生かす目的だった。
しかし、鳩山内閣の登場で、予算を減らすために、抽出方式が採用されることになった。
全員参加方式に対しては、民主党の有力支持団体・日本教職員組合が、自治体、学校の競争や序列化をあおると批判してきた。全員参加方式中止の本当の狙いは、競争そのものを避けることにあるのではないか。
競争の否定は、学力テストの効用を軽視するものだ。
成績が振るわなかった沖縄県は毎年上位の秋田県と教員の交流を始めた。大阪府では、教育振興基金を創設し、来年度予算案でも、成績が中下位だった6割近くの中学校に学力向上担当教員を配置できるよう予算を計上している。
抽出への変更は、こうした動きに水を差しかねない。全員参加で一定の競争をしてはじめて、学力の向上につながる。
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