学力テスト 民主は政策の誤り認めよ

読売新聞 2010年03月12日

全国学力テスト 全員参加方式に戻すべきだ

小中学生の学力水準を測る全国学力テストは、全員参加方式に戻すべきではないか。

小学6年と中学3年の全員参加を前提に、学力テストは過去3回、国語と算数・数学で行われてきた。

しかし、来月に予定される今年のテストは、文部科学省が抽出した一部の小中学校の児童生徒を対象にした方式に変わる。

文科省によると、抽出率は全国の小中学校の約3割にとどまる。ただし、抽出から漏れた学校にも自主参加は認められており、その約6割が参加を希望した。

抽出校と合わせると、小中学校の7割余りがテストを受ける。

従来の全員参加方式で、その効果が浸透し、各校の学力向上への意識が高まった結果だろう。

ただ、自主参加では、採点や集計を、学校や市町村教育委員会が独自に行わねばならない。

教員らの負担が大きく、業者に委託すれば費用がかかる。財政負担を理由に、自主参加に二の足を踏んだところも少なくない。

採点・集計費用を市町村に援助する予定の県は、抽出と自主参加を合わせた参加率が高いが、これを見ても費用の問題が自治体の重荷であることが理解できよう。

同じテストを受けるのに、不公平が生じてはなるまい。今年は実施が間近に迫っているため無理でも、来年以降は見直すべきだ。

学力テストは、学習内容や授業時間を大幅に減らしたゆとり教育への批判と、国際学力調査で学力低下が表面化したことを受け、2007年、43年ぶりに復活した。テスト結果を教育施策と授業の改善に生かす目的だった。

しかし、鳩山内閣の登場で、予算を減らすために、抽出方式が採用されることになった。

全員参加方式に対しては、民主党の有力支持団体・日本教職員組合が、自治体、学校の競争や序列化をあおると批判してきた。全員参加方式中止の本当の狙いは、競争そのものを避けることにあるのではないか。

競争の否定は、学力テストの効用を軽視するものだ。

成績が振るわなかった沖縄県は毎年上位の秋田県と教員の交流を始めた。大阪府では、教育振興基金を創設し、来年度予算案でも、成績が中下位だった6割近くの中学校に学力向上担当教員を配置できるよう予算を計上している。

抽出への変更は、こうした動きに水を差しかねない。全員参加で一定の競争をしてはじめて、学力の向上につながる。

産経新聞 2010年03月08日

学力テスト 民主は政策の誤り認めよ

小学6年生と中学3年生を対象にした全国学力テストの参加校が2月末現在の文部科学省のまとめで7割を超えた。

民主党政権で全員参加から抽出方式に切り替えられ、さらに抽出率が文科省が示した4割から同政権の事業仕分けで3割に縮小された。

民主党と文科省は、自主参加校がこれほど多い結果をどう受け止めるのか。政策の誤りを認め、全員参加に戻すべきだ。

全国学力テストはゆとり教育で学力低下が深刻化したため、平成19年に復活し、来月20日が4回目となる。全員参加により、成績上位の自治体や学校に学ぼうという機運が出始めたばかりだ。

民主党の縮小理由は経費削減のほか、全員参加で自治体や学校の成績が公表されると「過度の競争をあおる」というものだ。日本教職員組合(日教組)は昭和30年代に同様の主張で学力テストの反対闘争をした。その結果、全国的に学力を把握する手段がなくなり、その後のゆとり教育による学力低下も見逃された。

日教組出身の輿石東・同党参院議員会長は先月、山梨県での講演で「そのうち全部やめるという話になる」と、廃止や再縮小をほのめかす私見を述べたという。民主党政権ではほかにも、教員免許更新制廃止など日教組の主張に沿った教育政策が懸念される。

学力テストは、学校の入試のように差をつけるための試験ではない。「過度の競争」は杞憂(きゆう)で、むしろ健全な競争を学力向上につなげる効果が大きい。

内容も基礎知識に加え、資料を読んで意見を書く文章力や、社会に出て必要な思考力を養う良問が練られている。抽出方式で参加できない学校では、児童生徒が自らの課題を見失う恐れもある。自主参加が多いのもこのためだ。

成績上位の秋田など11県は全校が参加する。自主参加校には文科省から問題用紙が無料配布されるが、集めて採点はしてくれず、全国集計にも反映されない。自主参加校の採点や分析に必要な予算をつける自治体もあるが、一方で財政難などを理由に参加できない自治体がある。残念なことだ。

民主党政権は教育の地方分権で学校の裁量を広げ、地域ごとの特色ある教育を進めるという。それならば、なおのこと教育の成果や課題を学力テストなどでしっかり把握し、地域や保護者らに情報を公開することが求められる。

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