日中間の緊張をどこまでエスカレートさせるのか。中国の振る舞いは看過できない。
中国海軍のフリゲート艦1隻が9日未明、約2時間20分にわたって、沖縄県の尖閣諸島周辺の接続水域内を航行した。海上自衛隊の警告にも応じなかった。
中国はこれまで尖閣周辺の領海で海警局の公船の侵入を繰り返してきた。軍の艦艇が接続水域に入ったのは初めてだ。挑発行動が新たな段階に入ったと言えよう。
菅官房長官は「緊張を一方的に高める行為で、深刻に懸念している。尖閣諸島は歴史的にも国際法上も、日本固有の領土だ」と強調した。斎木昭隆外務次官が直ちに中国の程永華駐日大使を呼び、厳重に抗議したのは当然である。
中国軍艦艇と同時間帯にロシア軍の艦艇3隻も近くの接続水域を航行し、海自の護衛艦が追尾していた。中国側がこうした動きに乗じた可能性があるという。
国際法上、接続水域での外国艦艇の航行は認められている。ロシアには必要な注意喚起を行ったが、意図の分析が求められる。
日本政府は、尖閣沖の領海に中国軍艦艇が侵入した場合、自衛隊に海上警備行動を発令し、艦艇を派遣する方針を決めている。
米国など関係国と緊密に連携して、警戒・監視に万全を期すべきだ。武装漁船の接近など「グレーゾーン事態」を含む不測の事態に備えておくことも肝要である。
中国国防省が「自国の管轄海域を航行するのは合法で、他国があれこれ言う権利はない」と強弁したのは、筋が通らない。
2日前、中国軍戦闘機が、東シナ海の公海上を巡視活動中の米電子偵察機に異常接近した。
先の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)や北京での米中戦略・経済対話などで、日米は「航行の自由」を訴え、対中圧力を強めた。中国はこれに反発し、「警告」したつもりなのだろう。
5日の沖縄県議選で、米軍普天間飛行場の辺野古移設反対派が議席を増やしたことが、中国につけいる隙を与えた面も否めない。
習近平政権が軍艦艇を投入した背景には、西太平洋進出を視野に東シナ海の制海・制空権を確保しようとの国家意思があるのではないか。度を越した挑発は衝突につながる危険があり、国際社会の不信を一段と高めるだけだ。
日中間の偶発的な衝突を防ぐために、習政権は、「海上連絡メカニズム」創設について、日本との合意を急がねばならない。
市民レベルの交流や話し合いで解決せよだと笑わせる。