尖閣に中国軍艦 危険な挑発行為をやめよ

朝日新聞 2016年06月11日

尖閣に中国艦 日中の信頼醸成を急げ

中国海軍のフリゲート艦1隻が9日未明に沖縄県の尖閣諸島の接続水域に入り、日本政府が中国に抗議した。この水域で中国軍艦の航行を確認したのは初めてだ。それに先立ち、ロシア海軍の駆逐艦など3隻も同じ水域に入っていた。

接続水域は領海の外側に設けられ、沿岸国に一定の管理が認められているが、主権は及ばない。国際法上、他国にも航行の自由が確保されている。政府は「ロシアは尖閣諸島の領有を主張していない。中国と区別して対応していく」として、ロシアには抗議しなかった。

中国は尖閣を自国の領土と主張し、海警局の公船が接続水域を越えて領海侵入を繰り返している。さらに軍艦が領海に侵入すれば緊迫度は格段に増す。

自衛隊の河野克俊統合幕僚長は記者会見で「エスカレートは避けたいが、万が一、領海に入った場合はそれ相応の対応をする」と述べた。自衛隊法に基づく海上警備行動などを念頭に置いた発言だが、仮に自衛隊が出動すれば、「軍対軍」で一触即発の事態になる危険が高まる。

中国海軍の動きは決して容認できるものではない。日本政府の抗議を、中国は真剣に受け止めなければならない。

背景には、中国軍の不透明さがある。今回の行動に習近平(シーチンピン)政権の意思がどこまで働いていたのか。軍の中枢と現場レベルの意思疎通はできているのか。軍艦の行動が意図的なものか、偶発的だったのかも不明だ。

事実関係がわからないまま不信が募れば、さらなる緊張を招きかねない。日中間に最低限の信頼を築くことが急務だ。

一昨年秋、日中が交わした4項目の合意文書は、対話によって相互の信頼関係を育てることの重要性を指摘している。

例えば、海と空での不測の事態を防ぐため、「危機管理メカニズムの構築」をうたっている。だが、この危機管理メカニズム構築に向けた日中の協議は今に至るも進んでいない。

肝要なのは、危機をあおるのではなく、目の前の危機をどう管理するかだ。海上保安庁や自衛隊が警戒を強めることは必要だが、それだけで不測の事態を回避することは難しい。

政治、外交、軍事、経済、文化など幅広い分野で、重層的な対話の回路を広げていく必要がある。留学生など市民レベルの交流も、もっと増やしたい。

対話のなかで、お互いの意図を理解し、誤解による危機の拡大を防ぐ。求められるのは、日中双方による地道な信頼醸成の取り組みである。

読売新聞 2016年06月10日

尖閣沖中国軍艦 危険増した挑発に警戒せよ

日中間の緊張をどこまでエスカレートさせるのか。中国の振る舞いは看過できない。

中国海軍のフリゲート艦1隻が9日未明、約2時間20分にわたって、沖縄県の尖閣諸島周辺の接続水域内を航行した。海上自衛隊の警告にも応じなかった。

中国はこれまで尖閣周辺の領海で海警局の公船の侵入を繰り返してきた。軍の艦艇が接続水域に入ったのは初めてだ。挑発行動が新たな段階に入ったと言えよう。

菅官房長官は「緊張を一方的に高める行為で、深刻に懸念している。尖閣諸島は歴史的にも国際法上も、日本固有の領土だ」と強調した。斎木昭隆外務次官が直ちに中国の程永華駐日大使を呼び、厳重に抗議したのは当然である。

中国軍艦艇と同時間帯にロシア軍の艦艇3隻も近くの接続水域を航行し、海自の護衛艦が追尾していた。中国側がこうした動きに乗じた可能性があるという。

国際法上、接続水域での外国艦艇の航行は認められている。ロシアには必要な注意喚起を行ったが、意図の分析が求められる。

日本政府は、尖閣沖の領海に中国軍艦艇が侵入した場合、自衛隊に海上警備行動を発令し、艦艇を派遣する方針を決めている。

米国など関係国と緊密に連携して、警戒・監視に万全を期すべきだ。武装漁船の接近など「グレーゾーン事態」を含む不測の事態に備えておくことも肝要である。

中国国防省が「自国の管轄海域を航行するのは合法で、他国があれこれ言う権利はない」と強弁したのは、筋が通らない。

2日前、中国軍戦闘機が、東シナ海の公海上を巡視活動中の米電子偵察機に異常接近した。

先の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)や北京での米中戦略・経済対話などで、日米は「航行の自由」を訴え、対中圧力を強めた。中国はこれに反発し、「警告」したつもりなのだろう。

5日の沖縄県議選で、米軍普天間飛行場の辺野古移設反対派が議席を増やしたことが、中国につけいる隙を与えた面も否めない。

習近平政権が軍艦艇を投入した背景には、西太平洋進出を視野に東シナ海の制海・制空権を確保しようとの国家意思があるのではないか。度を越した挑発は衝突につながる危険があり、国際社会の不信を一段と高めるだけだ。

日中間の偶発的な衝突を防ぐために、習政権は、「海上連絡メカニズム」創設について、日本との合意を急がねばならない。

産経新聞 2016年06月10日

尖閣に中国軍艦 危険な挑発行為をやめよ

人工島の軍事拠点化など南シナ海で無法ぶりを発揮している中国が、今度は東シナ海で、日本への露骨な挑発を仕掛けてきた。

わが国固有の領土である尖閣諸島(沖縄県)周辺の接続水域に、中国海軍の艦船1隻が初めて侵入した。

中国は政府公船による領海侵入などを常態化させてきたが、軍艦の侵入という直接、軍事力を用いる危険な挑発に出てきたことを許すことはできない。

政府が「緊張を一方的に高める行為で、深刻に懸念する」(中谷元(げん)防衛相)と中国に抗議したのは当然である。

未明に駐日中国大使を呼び軍艦の即時退去を求めるなど、政府は迅速な対応をとった。自衛隊が警戒監視を続け、米軍と密接に連絡を取り合った成果ともいえる。

同じ時間帯に、ロシア海軍の艦船3隻も尖閣周辺の接続水域を航行した。尖閣の領有権を主張していないロシアの軍艦の通過は例があるが、今回の行動に連携の意図があるなら容認できない。政府は米側とも協議し、中露の意図の分析、把握を急いでほしい。

接続水域は国際法上、認められており、領海のすぐ外側12カイリ(約22キロ)幅の海域だ。民間船舶に対しては国内法に基づく取り締まりができる。

入り込んできた外国軍艦、公船までは権限は及ばない。だが、安全保障上は看過できない事態となり得る。

ponko - 2016/06/11 10:27
朝日はまたもや1日遅れの後出しジャンケン。
市民レベルの交流や話し合いで解決せよだと笑わせる。
この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/2523/