沖縄県議選 翁長県政への信任だ

朝日新聞 2016年06月06日

沖縄県議選 翁長県政への信任だ

沖縄県民は、翁長雄志知事を支える共産、社民、沖縄社会大衆など県議会与党に引き続き過半数の議席を与えた。

当選から1年半、翁長知事は米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を「あらゆる手段で阻止する」と訴えてきた。県議選の結果は、こうした知事の行動に信任を示したと言える。

基地問題にとどまらず、子どもの貧困や産業振興など山積する課題に取り組まねばならない知事にとって、大きな意味を持つだろう。

移設問題は、埋め立て承認を取り消した知事を政府が訴えた代執行訴訟が3月に和解。現在工事を中断し、国地方係争処理委員会での審査が続いている。結論が出れば再び裁判となり、判決次第では政府が工事再開に踏み切る事態も予想される。

1月の宜野湾市長選では辺野古移設反対を訴えた候補が敗れたものの、一昨年、名護市長選、知事選、衆院選と続けて県民が示した移設反対の民意が改めて示されたと言えるだろう。

日米両政府はこの民意を重く受け止め、「辺野古が唯一の解決策」という思考停止から抜け出す契機とすべきだ。

前回4年前の県議選では、普天間の県内移設を容認した候補はいなかった。だがその後、政府・自民党本部の圧力で、当時の知事も県選出の自民党国会議員も辺野古移設容認に転換。自民系県議も、軒並み容認や推進に態度を変えた。

県議選では、野党・自民系候補の一部に辺野古移設問題にふれず、争点から隠そうとする動きも見られた。与党勝利の選挙結果は、そうした公約破りや争点隠しに対する県民の異議申し立てと見ることもできよう。

先月、米軍属による女性死体遺棄容疑事件が発生。反基地感情が高まるなかでの選挙でもあった。基地問題が身近な生活と密接にかかわる問題として改めてとらえられ、辺野古移設を拒む知事を支える県政与党を押し上げた面もあっただろう。

事件後、知事与党とともに自民党沖縄県連も日米地位協定の抜本改定を求める声を上げている。だが、日米両政府はこれまで通り、改定は避け、運用の一部改善で済ませる構えだ。

選挙戦を通じ、地位協定の改定や基地の整理・縮小など、知事への支持・不支持を超えて共有できるテーマも見えてきた。

選挙後の県議会には、まずは選挙戦で一致した課題から足並みをそろえ、日米両政府を動かす可能性を探ってほしい。それこそが、選挙で示された民意にこたえる道ではないか。

産経新聞 2016年06月07日

沖縄と基地…自民は安保の現実訴えよ

沖縄県議選で、米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する翁長雄志(おなが・たけし)知事の支持派が議席を伸ばし、過半数を維持した。知事らは、これが「直近の民意」だとして、移設阻止の構えを一層強めようとするだろう。

安倍晋三政権が県議選の結果にかかわらず、移設の方針を堅持するのは当然だ。尖閣諸島など南西の守りと普天間の危険性除去を両立させるには、それしかないからだ。

そうだとすれば、大きな疑問を呈さざるを得ない。米軍基地問題に対する自民党、とくに同党沖縄県連に、腰の定まらない姿勢がみられることである。

基地が集中する沖縄の現場で選挙を戦うのは、苦労が多かろう。だが、安全保障政策をまったく異にする政党、勢力と論戦をもって対峙(たいじ)できないようであるなら、自民党の看板は返上すべきだ。

県議選の直前に、女性遺棄事件で米海兵隊出身の軍属が逮捕された。決して許されない蛮行であり、選挙にも少なからぬ影響を与えた可能性がある。

翁長知事の支持派は地位協定の抜本改定を要求しているが、日米両政府は改定せず、運用改善に努める方針だ。曖昧だった軍属の範囲を狭め、日本側が司法手続きをとる範囲を広げる見通しだ。

勤務外で犯行に及んだ容疑者は日本の国内法で裁かれ、地位協定は直接関係がないからだ。

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