慰安婦問題を巡る昨年末の日韓合意の履行に向けて、一歩前進したと言えよう。朴槿恵政権の取り組みを見守りたい。
元慰安婦を合意に基づいて支援する財団の設立準備委員会が韓国で発足した。
韓国政府が設立する財団に、日本政府が10億円を拠出する。「元慰安婦の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やし」が事業目的とされる。その合意の趣旨を体現した財団となることが求められる。
準備委は、女性問題専門家の金兌玄・誠信女子大名誉教授が委員長を務め、柳明桓元外相、日本研究者ら計11人で構成される。元慰安婦支援の計画をまとめ、今月中にも財団が設立される運びだ。
金委員長は記者会見で、「被害者(元慰安婦)の痛みに心から共感し、応えたい」と述べた。元慰安婦の意向を尊重して活動を進める方針を強調している。
準備委発足までに5か月以上かかった。4月の総選挙で慰安婦問題が争点となり、野党から攻撃されるのを避けたいとの判断が、朴政権にあったためだろう。
総選挙で与党が大敗したことから、朴大統領の政権運営への圧力が高まっている。
第1党となった左派野党「共に民主党」は日韓合意について、日本の法的責任の認定がない点などを批判し、再交渉を主張する。元慰安婦の支援団体も、準備委発足に強く反発している。
気がかりなのは、国民の理解が十分に得られていない状況だ。読売新聞と韓国日報の共同世論調査では、合意を「評価しない」とする人が韓国で73%に上った。
合意は日韓双方が歩み寄った成果であり、停滞していた日韓関係を改善する契機となったのは間違いない。朴政権が元慰安婦との面談を進める中で、合意に肯定的な反応が増えているという。
存命している元慰安婦は合意時に46人だったが、その後、4人が亡くなった。支援事業のこれ以上の遅滞は許されまい。
朴政権は合意の意義について、粘り強く国民に理解を求め、財団が円滑に活動できるよう努めることが欠かせない。
日本側が撤去を求めるソウルの日本大使館前の少女像について、韓国側は「適切に解決されるよう努力する」と約束している。
大使館の安寧や威厳の維持に関わる重大な問題であるのを忘れてはならない。少女像を設置した団体などは撤去に反対するが、朴政権は合意履行の進展に伴い、撤去へ誘導していくことも大切だ。
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