南シナ海の軍事拠点化を加速させ、人権問題や貿易でも独善的な言動を繰り広げる。
アジアの平和と世界経済の安定を保つには、そんな中国に、国際ルールを順守し、大国の責任を果たすよう米国が促し続けることが欠かせない。
第8回米中戦略・経済対話が北京で行われ、閣僚級が2日間、幅広い課題を巡って協議した。
南シナ海問題について、ケリー米国務長官は「一方的な行動ではなく、法の支配や外交を通じて解決すべきだ」と述べ、国際法に基づく海洋秩序の維持を訴えた。
中国の楊潔●国務委員は、「国家の主権と領土を断固守る」と語った。習近平国家主席も「すぐに解決できない対立もある」と強調し、議論は平行線をたどった。(●は竹かんむりの下にがんだれと虎)
習政権は、既に造成した人工島に加え、フィリピンに近いスカボロー礁でも埋め立てを検討しているとみられる。滑走路やレーダー網を整備し、防空識別圏の設定につなげる思惑があるのだろう。
フィリピンが中国の領有権主張を国際法違反と提訴したオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は、月内にも判断を下す見通しだ。
楊氏は、仲裁裁の結果を受け入れない考えを改めて示した。国際社会で孤立することも辞さないと言うのか。「法の支配」に背を向ける姿は、「中国異質論」に拍車をかけるだけである。
ケリー氏は中国の人権状況を問題視する意向を伝えた。習政権は4月に、国内で活動する外国の非政府組織(NGO)を公安当局の管理下に置く法律を制定している。中国が「国情」を盾に人権を抑圧する事態は看過できない。
経済分野で懸念されるのは、鉄鋼などの過剰生産に象徴される中国の構造改革の遅れだ。ルー米財務長官は「世界市場を歪め、悪影響を及ぼす」と語り、鉄鋼やアルミニウムの減産を要請した。
不当廉売を招く鉄鋼の過剰生産は、先の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)でも、世界経済の不安材料とされた。習政権には、国有企業の整理などを着実に進め、混乱の芽を摘む責務がある。
今回はオバマ政権下で最後の戦略対話となった。米側は、一連の対話を通じ、気候変動対策やイランの核問題などで協力が深まり、成果が出たと説明する。軍当局間の交流により、不測の衝突を防ぐ一定の効果はあっただろう。
中国は「核心的利益」と位置づける問題で一切譲歩しなかった。対立の解消より、協調を演出する側面が目立ったのではないか。
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