消費増税の延期を踏まえた新しい財政運営の道筋を、早急に示さなければならない。
政府が「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)、「ニッポン1億総活躍プラン」など、アベノミクス推進の柱となる4計画を決めた。
少子化対策や働き方改革、産業競争力の強化などで力強い成長力を取り戻し、国内総生産(GDP)600兆円を目指す。
人口減少や少子高齢化など、構造的な課題の解決を図る政策の基本的な方向性は妥当だろう。
問題は、その裏付けとなる予算の基本戦略である骨太の方針の内容が希薄なことだ。
消費税率10%への引き上げが2019年10月まで2年半延期され、増税で見込まれる年間4・4兆円の税収増もその分だけ遅れる。しかも、骨太の方針は財源穴埋めの方策を示していない。
政府は、消費増税に伴い、低所得者の介護保険料軽減といった社会保障の充実策を予定していた。安倍首相は「(税率を)引き上げた場合と同じ事を全て行うことはできない」と明言した。
1億総活躍プランに盛り込まれた保育士や介護職員の待遇改善など、新たな重要政策の経費をどう賄うかも課題となる。
確保できる財源を精査し、政策の実現に厳しく優先順位をつけることが大事である。
骨太の方針は、政策を推進する財源として「アベノミクスの成果の活用」を打ち出した。
アベノミクスで増えた税収を活用し、さらなる景気浮揚と税収増の好循環を生み出すという。
近年の税収増を支えている法人税や所得税は、景気による浮き沈みが大きい。すべてを社会保障などの恒久的な施策の安定財源と捉えるのは無理があろう。
消費増税の延期を踏まえ、中長期的な財政健全化の道筋も改めて描くことが求められる。
骨太の方針は、20年度に基礎的財政収支を黒字化する財政再建目標を堅持すると明記した。
だが、昨年に掲げた、赤字額を18年度に5~6兆円まで約10兆円減らす「中間目標」には言及していない。これで黒字化目標を本当に達成することができるのか。
財政再建の工程表を、早期に練り直す必要がある。
次世代に過大な負担を先送りしないために、税収の安定した消費税で少子高齢化社会を支える「社会保障と税の一体改革」を進める。増税を先送りしても、その方針はしっかりと維持すべきだ。
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