G7と政策協調 立場の違い越え結束示せ

朝日新聞 2016年05月29日

首相と消費税 世界経済は危機前夜か

世界経済はいま、多くの国がマイナス成長に転落したリーマン・ショックのような危機に陥りかねない状況なのか。

主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)で議長を務めた安倍晋三首相はそのリスクを強調し、G7による「危機対応」を強く求めた。だがその認識は誤りと言うしかない。サミットでの経済議論を大きくゆがめてしまったのではないか。

首相は、来年4月に予定される10%への消費増税の再延期を決断したいようだ。ただ単に表明するのでは野党から「アベノミクスの失敗」と攻撃される。そこで世界経済は危機前夜であり、海外要因でやむなく延期するのだという理由付けがしたかったのだろう。

首相がサミットで首脳らに配った資料はその道具だった。たとえば最近の原油や穀物などの商品価格がリーマン危機時と同じ55%下落したことを強調するグラフがある。世界の需要が一気に消失したリーマン時と、米シェール革命など原油の劇的な供給増加が背景にある最近の動きは、構造が決定的に違う。

足もとでは原油価格は上昇に転じている。リーマン危機の震源となった米国経済はいまは堅調で、米当局は金融引き締めを進めている。危機前夜と言うのはまったく説得力に欠ける。

だから会議でメルケル独首相から「危機とまで言うのはいかがなものか」と反論があったのは当然だ。他の首脳からも危機を強調する意見はなかった。

にもかかわらず、安倍首相はサミット後の会見で「リーマン・ショック以来の落ち込み」との説明を連発した。そして「世界経済が通常の景気循環を超えて危機に陥る大きなリスクに直面している」ことでG7が認識を共有したと述べた。これは、「世界経済の回復は継続しているが、成長は緩やかでばらつきがある」との基本認識を示した首脳宣言を逸脱している。

首相は会見で消費増税について「是非も含めて検討」とし、近く再延期を表明することを示唆した。サミットをそれに利用したと受け止めざるを得ない。

財政出動や消費増税先送りは一時的に景気を支える効果はある。ただ先進国が直面する「長期停滞」はそれだけで解決できる問題ではない。地道に経済の体力を蓄えることが必要で、むしろ低成長下でも社会保障を維持できる財政の安定が重要だ。

消費増税の再延期は経済政策の方向を誤ることになりかねない。しかも、それにサミットを利用したことで、日本がG7内での信認を失うことを恐れる。

読売新聞 2016年05月29日

G7首脳宣言 世界経済のリスクを回避せよ 

◆海洋秩序維持へ連携強化したい◆

世界が直面する様々な危機を克服するため、国際社会の先頭に立つ。先進7か国(G7)がその覚悟と解決への道筋を宣言したと評価できる。着実な履行が求められよう。

三重県で開かれていた主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)は、不透明感を増す世界経済やテロの脅威などへの対応を盛り込んだ首脳宣言を採択し、閉幕した。

世界経済の見通しについて「下方リスクが高まってきている」との認識を示した。危機を回避するため、G7が「適時に全ての政策対応を行う」と明記した。

◆需要不足補う財政戦略

2008年のリーマン・ショック後の世界経済を支えた新興国の成長が大きく減速している。

安倍首相は閉幕後の記者会見で「今こそG7が責任を果たさなければならない」と強調した。成長の牽引けんいん役を引き受ける決意を示したと言えよう。

宣言は、金融緩和、財政出動、構造改革をG7版の「3本の矢」とし、必要に応じて各国が政策を実行する方針を掲げた。

「弱い需要と構造的な問題」が成長の重しだと指摘し、需要不足を補うため、機動的な財政戦略での協力を盛り込んだ。

財政出動に積極的な日米と、慎重な独英との間で、一定の認識共有が図られた意義は小さくない。リスク回避に万全を期したい。

首相は会議で、08年7月の北海道洞爺湖サミット直後にリーマン・ショックが起きたことに触れ、「政策対応を誤ると危機に陥るリスクがある」と述べた。早めに手を打つ必要性を訴えた。

◆課税逃れ対策の促進も

首相は17年4月の消費増税を延期する意向だ。世界経済のリスクを回避する上でも財政出動が必要だと強調するとともに、「アベノミクスの失敗」という野党の批判をかわす狙いがあるのだろう。

首脳宣言は「パナマ文書」で注目された課税逃れ問題に関し、国際的な対策の促進を盛り込んだ。中国の鉄鋼の過剰生産を念頭に、市場経済をゆがめる政府補助金への懸念も表明した。

経済のグローバル化が進み、国際ルールにのっとった税制や貿易体制を整える重要性は増している。G7は議論を主導すべきだ。

安倍首相は政治討議で、中国による強引な海洋進出の問題を取り上げた。地理的に遠い欧州各国の首脳も認識を共有し、名指しを避けながらも、東・南シナ海の状況への「懸念」を首脳宣言に明記できたことは成果である。

宣言は、紛争の平和的解決に向けて「仲裁を含む法的手続き」の重要性に言及した。フィリピンは、南シナ海での中国の領有権主張を巡ってオランダ・ハーグの仲裁裁判所に提訴している。

裁判所の判断受け入れを拒む中国への牽制効果が期待できる。

安倍首相は、アジア、アフリカなど7か国の首脳を交えた拡大会合で「世界経済の発展には、シーレーン(海上交通路)の安全確保が死活的に重要だ」と訴えた。

あらゆる機会を通じて、国際法に基づいて海洋秩序を維持する必要性について、国際社会の理解を広げることが欠かせない。

ウクライナ情勢に関して首脳宣言は、昨年2月の停戦合意を履行するよう全当事者に改めて求めた。

ロシアは一昨年、ウクライナ南部クリミアを一方的に併合した。力による現状変更は容認できない。

◆ロシアとも協調模索を

ウクライナ東部の親露派武装集団に合意を守らせるには、ロシアの前向きな関与が不可欠だ。

G7は足並みをそろえ、ロシアに建設的な役割を果たすよう促すことが大切である。

過激派組織「イスラム国」などのテロに対処する「行動計画」を策定したことも意義深い。

航空便の乗客予約記録などを共有し、国際連携を強化する。テロ組織は、インターネットを悪用して過激思想を広めている。巧妙な手口に対処するには、ネット関連企業などとの連携が必要だ。

首脳宣言は、北朝鮮の核実験と弾道ミサイル発射を非難し、挑発を繰り返さないよう要求した。

国連安全保障理事会の制裁決議の厳格な履行に向け、G7は主体的に取り組まねばならない。

新興国を含む主要20か国・地域(G20)の枠組みは各国の主張の隔たりが大きく、有効な合意を得にくい。中国の王毅外相は、G20こそが「時代の潮流に合致している」と語ったが、牽強付会だ。

法の支配、自由など価値観を共有するG7は、国際秩序維持により強い指導力を発揮したい。

産経新聞 2016年05月30日

英国とEU 離脱の不利益考え選択を

英国の欧州連合(EU)離脱は、世界経済の大きなリスク要因だ。伊勢志摩サミットで示された先進7カ国(G7)の共通認識である。

離脱か残留かを問う国民投票は6月23日に実施される。仮に離脱が決まれば、金融市場の混乱は避けられまい。何よりも英国自らが被る痛手は大きいはずだ。英国民には、選択がもたらす結果を見つめ、賢明な判断を下すことを望みたい。

首脳宣言には、英国のEU離脱は「成長に向けたさらなる深刻なリスク」と盛り込まれた。国際貿易や投資にも影響し、「雇用を反転させる」とも指摘した。

EU残留を主張するキャメロン英首相を、後押しするものだ。会議では、安倍晋三首相らG7首脳からも、残留を支持する発言が相次いだ。

英財務省によると、EU離脱後の英国は景気後退に陥り、2年後の経済成長率は残留の場合を3・6~6・0ポイント下回るという。

域内2位の経済大国を失うEUにも深刻な打撃で、欧州市場の拠点として英国に進出した日本企業にも影響は大きい。

EU離脱論が、英国だけのものではないことも事実だ。来年大統領選を控えたフランスの極右、国民戦線(FN)のルペン党首は、離脱の是非を問う国民投票の実施を公約としている。

財政負担や移民問題に伴うEUへの不満は、いくつかの国に共通している。離脱の「連鎖」も懸念される。

英国内では、スコットランド独立の機運が再び高まるだろう。独立派は、EU残留を求めている。国内に分離・独立運動がくすぶる欧州各国への波及も心配だ。

欧州統合の試みは2度の大戦の反省から始まった。平和と繁栄のため民族、文化の違いを超えて合意点を見いだしてきた。その努力を無駄にしてはなるまい。

中東では暴力的過激主義がはびこり、中国、ロシアは力による現状変更を進めている。G7は、テロ対策、難民問題の解決が喫緊の課題であることを確認した。

いまこそ、欧州の強い結束を国際社会は求めている。EUが団結し、諸問題の解決に重要な役割を果たすためにも、英国は欧州のリーダーとして、EUにとどまるべきだ。キャメロン首相には、丁寧な説明で国民を残留支持へ導いてもらいたい。

朝日新聞 2016年05月27日

サミット開幕 世界の混迷に方向性を

主要7カ国首脳会議(G7、伊勢志摩サミット)が、三重県志摩市で開幕した。

経済的にも、政治的にも、G7の役割が再び注目されるなかで、日本が議長国を務める。

8年前の北海道洞爺湖サミットの直後、リーマン・ショックが発生。世界的な経済危機に先進国だけで対処できない状況があらわになり、世界経済をめぐる議論の主舞台は中国など新興国を含むG20に移った。

だがいま、その新興国が停滞にあえぎ、世界経済の牽引(けんいん)役としてG7が期待されている。

G20は主に経済を語る場であり、政治や安全保障の分野で共通項を見いだしにくい側面もある。国連安保理も、中国、ロシアを含む大国の拒否権で機能不全が言われて久しい。

G7も近年、形骸化が指摘されてきた。経済の相互依存は深まり、G7だけでテロや核問題、環境など地球規模の課題に対応できないのも確かだ。

それでも、法の支配、自由と民主主義、人権といった普遍の価値観を共有するG7首脳が一堂に会し、世界の課題を話し合う意味は大きい。

難民排斥など共通の価値に反する動きはG7にも広がる。だが、力に限界はあっても、混迷する世界に方向性を示しうる枠組みは他に見当たらない。

今回のサミットでその意義が問われる課題の一つが、「パナマ文書」で明らかになった、国境をまたぐ税逃れへの対応だ。

その責任の多くは先進国にあると言わざるを得ない。租税回避地は欧米が作った蓄財システムであり、それが新興国や途上国の汚職や腐敗の浸透にも加担してきたからだ。

こんな実態を野放しにしたまま、「法の支配」を唱えてもむなしい。G7は率先して対策への道筋を描くべきだ。

米国の力が相対的に低下するなか、国際秩序を安定させる軸としてもG7の役割は大きい。

2年前のウクライナ危機でロシアがG8から追放され、サミットはG7に戻った。中国は南シナ海で岩礁埋め立てや軍事拠点化の動きを止めない。

力や威圧で国境を変えようとするこうした動きを、既成事実化させてはならない。

日本も、G7と歩調をあわせて政策を構想していくのが望ましい。その基本は分断と排除ではなく、世界に共通利益の価値を広げていく粘り強い対話と協調であるべきだ。

G7をそれに向けた知恵を絞る場とするために、議長国として合意形成の努力を尽くしてもらいたい。

読売新聞 2016年05月27日

サミット開幕 安定成長促す協調が問われる

世界経済の成長を持続させるには、先進7か国(G7)が協調して牽引けんいんすることが重要だ。

主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)が開幕した。最大の焦点だった世界経済の討議では、新興国経済の減速などを背景に、大きなリスクに直面しているとの認識で一致した。

議長の安倍首相は、新興国の投資や国内総生産が低迷している具体的なデータを基に、2008年のリーマン・ショック前の状況に似ているとの見解を示した。

「政策対応を誤ると、通常の景気循環を超え、危機に陥るリスクがある」とも指摘した。

他の首脳からは「危機とまで言うのはどうか」という意見も出たが、各国の状況に応じて「機動的な財政戦略と構造政策を果断に進める」ことを確認した。

首相がリーマン・ショックにまで言及したのは、17年4月の消費税率引き上げを先送りするための布石なのではないか。

首相は、金融政策と財政出動、構造改革の三つの政策手段をG7版「3本の矢」と位置づけて政策の総動員を求め、了承された。

G7が危機発生に先手を打つ形で、臨機応変に政策対応をとる方針で合意したのは成果だ。

先進各国では、景気の長期停滞への懸念から、個人や企業が消費や投資を控える需要不足が共通の課題となっている。

規制緩和などで潜在成長力を上げ、民間の投資を促すことが肝心だ。ただ、民需が自律的に高まるには一定の時間がかかる。政府が機動的に財政出動し、需要の創出に努めることは意義がある。

各国首脳からは、成長の低迷や格差拡大が、政治的なポピュリズム(大衆迎合)の台頭を招く一因だとする指摘も相次いだ。

会議では、中間層が将来に期待を持てる社会にするには、「質の高いインフラ(社会基盤)」や教育、科学技術分野などへの投資が重要だとの認識で一致した。着実な政策の遂行が求められる。

自由貿易の推進については、日米加を含む12か国が参加する環太平洋経済連携協定(TPP)の早期発効や、日本と欧州連合(EU)による経済連携協定の交渉を着実に進めることを再確認した。

米国では秋に大統領選を控え、国内産業を守ることを優先する保護主義的な主張が勢いを増している。自由貿易を脅かしかねず、軽視できない動きである。

G7の各首脳は、TPPの議会承認など、国内手続きの進展にも指導力を発揮してもらいたい。

産経新聞 2016年05月29日

G7サミット 厳しい対中認識共有した 安全保障や経済でも連携を

伊勢志摩サミットの最大の成果は、先進7カ国(G7)が中国の海洋進出に対する厳しい現状認識を共有したことにある。

政治・外交分野の討議では、中国が尖閣諸島周辺で挑発行為を繰り返す東シナ海、軍事拠点化を進める南シナ海の問題に多くの時間が割かれた。

安倍晋三首相の問題提起に、各国首脳からも「力による現状変更や規範の無視は認められない」と同調する発言が相次いだ。

中国の海洋進出は、自由と民主主義や法の支配など、G7各国がよって立つ普遍的な価値観そのものを踏みにじる行動である。

≪欧州各国の理解深まる≫

欧州側が中国の脅威に対して一斉に声を上げたのは、日米の働きかけが大きい。

安倍首相はサミットに先立つ訪欧で、各国首脳と個別に会談して状況を説明した。オバマ米大統領は中国の膨張主義に直面するベトナムを訪問し、国際世論の関心を南シナ海に振り向けた。国際社会の懸念を無視する中国の姿勢も、各国に不信と警戒感を募らせた。

米国防総省の年次報告では中国のスプラトリー(南沙)諸島の岩礁埋め立て面積は、1年間で6倍の約13平方キロに拡大し、3つの人工島で3000メートル級の滑走路などが整備されている。

日米や周辺国、G7各国はさまざまな枠組みで中国に制止を求めるとともに、膨張主義を阻止する具体的な行動が必要となる。

米国は人工島周辺に艦船を派遣する「航行の自由作戦」を実施するなど、日米の周辺海洋国家との対中連携は強化された。外交・軍事両面で圧力をかけ、粘り強く中国を抑止すべきだ。

首脳宣言には、安倍首相が2014年5月、シンガポールでの演説で掲げた3原則に基づき、「法に基づく主張」「力や威圧を用いない」「仲裁手続きを含む司法手続きによる平和的紛争解決」が盛り込まれた。

「仲裁手続き」への言及は、フィリピンが申し立てた領有権をめぐる常設仲裁裁判所の判断が近く出されることが念頭にある。中国はこれに従わない姿勢を示しており、判断が無視された場合、G7は何らかの具体的対応をとるべきだろう。

中国外務省報道官はサミット首脳宣言が南シナ海問題に言及したことに対し、「日本とG7のやり方に強烈な不満を表明する」と批判した。これは、対中結束に対する焦りの裏返しといえる。

南シナ海の大半に主権が及ぶという中国の主張に根拠はない。軍事拠点化は力による現状変更である。これはG7のみならず、周辺の海洋国家を含む大多数の国の共通認識である。

中国への厳しい見方は海洋進出にとどまらない。首脳宣言は名指しを避けつつも、中国で過剰生産された鉄鋼製品の不当な安値輸出を念頭に置き、各国の鉄鋼産業や雇用に及ぼす「負の影響」を指摘した。世界貿易機関(WTO)ルールに基づく対抗措置も検討すると明記された。

中国の鉄鋼製品への反発は、欧州でも顕著である。政治と経済は別として対中経済関係の強化を最優先にしてきた欧州が、日米と歩調を合わせて中国に厳しく対応することは、従来とは様相の異なる動きとして注目したい。

≪拉致解決へ一層圧力を≫

8年ぶりの日本開催でアジア情勢に関する討議が重ねられ、北朝鮮への厳しい注文も盛り込まれた。首脳宣言は核実験強行と弾道ミサイル発射を非難し、北朝鮮に拉致問題を含む国際社会の懸念に対応するよう強く求めた。

北朝鮮の暴走を食い止め、拉致問題を解決するためにも、欧州各国の一層の関与が欠かせない。国連安全保障理事会の対北制裁をすべての国が厳格に履行するようG7が主導したい。

ロシアによるクリミア併合を重ねて非難し、併合は認められないと再確認した意味も大きい。「対話の重要性」が盛り込まれたのは北方領土交渉を念頭に置いた安倍首相の意向だろうが、「力による現状変更」を一部容認すると受け取られてはならない。

欧州の喫緊の課題は中東からの難民問題やテロ対策だ。暴力的過激主義への対処のため、異文化間の対話促進などを含むテロ対策の「行動計画」も議長国としてとりまとめた。日本はこれらを実効性のあるものとする責任も負う。

朝日新聞 2016年05月26日

持続する世界 G7の決意が問われる

主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)が、きょう始まる。話し合うべきテーマは、世界経済への対応など直近の問題だけにとどまらない。

世界にはびこる飢餓や貧困を克服し、国や地域を問わず人間が平穏に暮らせる地球をどう築き、将来世代に引き継ぐか。それが究極の問いだろう。

2030年までに貧困に終止符を打ち、持続可能な未来を求める――。国連がそんなゴールを掲げたのが「持続可能な開発目標(SDGs)」だ。昨秋、国連の会合で全加盟国の一致で採択され、今年が初年である。

目標を達成するには、経済成長や技術革新、社会基盤整備が前提になる。さらに、格差の是正、男女平等、健康と福祉、教育の拡充、気候変動問題への対応などが欠かせない。課題は17分野にわたり、具体的な目標は169項目に及ぶ。

対象が広く、理想が高いだけに、掛け声倒れの危うさもつきまとう。経済大国から途上国、最貧国までが結束して歩を進めて行けるかどうか、国際社会の意思と行動力が試されよう。

とりわけ大きな責任が問われるのは、これまで国際開発を主導し、経済力に優れたG7だ。市場主義が招いた格差や荒廃など地球のひずみの解消は、安定的な成長の実現に役立つ。

サミットでもこの開発目標を取り上げ、特に「保健」や「女性」について話し合う予定だ。議長国の日本は政府内に推進本部を設け、中東の安定や保健の充実への資金拠出を決めた。

具体的な計画のもとで、息長く取り組みを積み重ねることが重要だ。G7がしっかりと決意表明し、必要な資金をどう確保し、行動するかが問われる。

G7各国が政府の途上国援助(ODA)を着実に増やすことが望ましいが、どの国も財政難に悩む。株式などの金融取引に薄く広く課税する金融取引税の導入を独仏両国などが提唱して久しいが、景気の停滞もあって作業は進んでいない。

まずは国際的な大企業や富裕層の間に広がる課税逃れを封じ込めたい。それ自体が経済格差を縮める一歩となるうえ、開発目標に充てる財源の確保にもつながりうる。

その意味でも「パナマ文書」が提起した世界規模の脱税・節税問題に正面から向き合わねばならない。具体策の検討は経済協力開発機構(OECD)などに委ねるとしても、中国やロシア、インドなど新興国も巻き込みながら、税逃れへの監視網を世界全体に広げていく。G7がその旗振り役を果たすべきだ。

読売新聞 2016年05月27日

G7政治討議 テロ対策を戦略的に強化せよ

国際テロの脅威を低減し、より安全な社会を構築するため、先進7か国(G7)は、主導的な役割を果たすべきだ。

G7は主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の政治討議で、テロリストの入国阻止など、国際テロ対策を強化することで一致した。その具体策を盛り込んだ「行動計画」にも合意した。

過激派組織「イスラム国」の関連情報や航空便の乗客予約記録などを各国がより円滑に共有する仕組みを作る。テロ組織への資金流入を断つため、官民の連携を強める。これらが行動計画の柱だ。

パリやブリュッセルの同時テロの犯行グループは国境をまたいで活動し、各国の捜査当局の目をかいくぐったとされる。テロ対策の抜け穴をふさぐことが急務だ。

重要なのは、G7の計画を土台にして、より強固で広範な対テロ国際協調体制を築くことである。途上国の国境管理能力の向上などを支援することも欠かせない。

日本は、中東諸国の人材育成などを支援するため、3年間で総額60億ドルの拠出を表明している。若者の失業増や格差拡大は、地域を不安定にし、過激主義が広がる土壌を作りかねない。中長期的に民生を向上させる意味は大きい。

米軍などによる「イスラム国」掃討作戦も継続し、その支配地域を縮小させねばならない。

いかにテロの未然防止を図りつつ、どう組織を壊滅させるのか。G7は、国際機関とも連携し、戦略的に取り組む必要がある。

欧州各国は、内戦下のシリアなどから押し寄せる大量の難民に苦慮している。歯止めをかけるには、中継地のトルコなどとの持続的な協調が大切だ。難民・避難民への人道支援を含め、総合的な対策を推進すべきである。

G7首脳は、海洋安全保障について、国際法にのっとった秩序の維持や航行・上空飛行の自由の重要性を確認した。東・南シナ海の現状を懸念することでも一致した。

安倍首相は、力や威圧に訴えず、紛争を平和的に解決する原則を提唱し、賛同を得た。

中国は南シナ海で、人工島造成と軍事拠点化を加速させている。国際社会の共通の利益である海上交通路の安全を脅かす行動だ。軍事力を背景にした一方的な現状変更は、看過できない。

東・南シナ海の問題に関し、日米だけでなく、欧州各国の首脳が認識を共有した意義は大きい。

G7合意を基礎に、東南アジアとも連携し、強引な海洋進出の自制を中国に働きかけるべきだ。

産経新聞 2016年05月28日

サミットと経済 危機認識の隔たり直視を

先進7カ国(G7)首脳が世界経済の下ぶれリスクについて認識を共有し、協調して対処することには意義がある。

主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の首脳宣言は、機動的な財政戦略や構造政策を果断に進めることを盛り込んだ。

財政政策に前向きな日本と、これに慎重なドイツや英国では取るべき対応もおのずと異なろう。各国がそろって財政出動を約束するような強い合意ではないが、世界経済に果たすG7の役割は大きい。

新たな危機を回避するためにも各国は成長に資する政策を着実に行動に移さなければならない。

安倍晋三首相はサミット閉幕後の会見で、来年4月の消費税増税を再延期するかどうかの判断を参院選までに示すと語った。サミットでの議論がこれにどう影響するのか、丁寧な説明を求めたい。

首脳宣言は、世界経済の成長にばらつきがあり、下方リスクが高まっていると指摘した。英国が欧州連合(EU)から離脱する可能性も踏まえ、政策対応の強化を再確認したのは当然といえよう。

ただし、足元の景気認識に温度差があることも直視すべきである。年明け以降の金融市場の混乱は落ち着きつつあり、原油価格下落も反転傾向である。リスクはあっても、ひところほどの切迫感は見られない。

朝日新聞 2016年05月24日

G7と経済 「特効薬なし」の覚悟で

多くの国で成長ペースが鈍くなり、危機の火だねも残っている。近づく主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)では、世界経済をどう下支えしていくかが焦点となる。

その準備として仙台市で開かれたG7財務相・中央銀行総裁会議では、各国が金融政策、財政政策、構造改革をバランスよく用いていく方針を確認した。

それを「協調」と呼ぶのは大げさすぎるだろう。結局は停滞打開の妙案が見つからないまま、それぞれの国がそれぞれの事情で現状の努力を続けることを確認したにすぎないからだ。

安倍晋三首相はサミット議長国として財政出動での協調をめざしてきた。今月上旬の欧州歴訪でそう働きかけたが、財政規律を重んじるドイツや英国の理解は得られなかった。

08年のリーマン・ショック後に各国はかつてない規模で財政や金融の景気刺激策を打ったが、期待した成長にはつながらなかった。いまはマクロ政策には限界があるとの認識が広がっている。欧州では移民・難民問題で多額の財政負担も求められており、一時的な景気刺激に予算を使う余裕は乏しい。

そんな時、どの国も飛びつきたくなるのが通貨安政策だ。自国通貨を安くすれば輸出が増え、国内の雇用や投資が上向く。ただ、それは通貨高で困る国も生むゼロサムゲームだ。

G7財務相会合では通貨の競争的切り下げを回避することを改めて合意したが、そうした原則を確認し続けることには意義があろう。

もっとも、最近の為替相場を巡り日米間には温度差がある。日本は1ドル=105円台と1年半ぶりの円高になった際、為替介入を示唆した。麻生太郎財務相はG7後の会見でも「2日間で5円も円が振れるのは明らかに秩序だった動きではない」と指摘した。これに対し直後の会見で米国のルー財務長官は「無秩序と言うための条件のハードルは高い」とクギを刺した。

急激な為替変動は望ましくない。ただ、内外の物価の影響を除いた実質為替レートでは、円は1970年代以来の歴史的な円安水準にあり、米側の言い分にもそれなりに理はある。アベノミクスは円安と株高だのみだったが、それを期待し続けるのは難しいと覚悟すべきだ。

どの国にも共通するが、日本もいまは経済の基礎体力を強くする構造改革に地道に取り組むしかない。社会保障改革、財政再建、成長戦略。いずれも即効性に乏しいが、避けられない政策課題ばかりである。

読売新聞 2016年05月22日

G7財務相会議 サミットで協調さらに深めよ

不透明感を拭えない世界経済を安定成長に導くには、先進国が協調を強めることが重要だ。

仙台市で開かれた先進7か国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は、世界経済の持続的な成長を牽引けんいんしていくため、金融政策と財政出動、構造改革の三つの政策手段を総動員することを確認した。

G7各国は世界経済について、一時期より市場は安定したが、英国の欧州連合(EU)離脱問題などで先行きの不確実性は増しているとの認識を共有した。

中国など新興国経済の減速傾向も続いている。G7が成長の先導役として、責任を果たしていく決意を示したのは当然だ。

焦点だった機動的な財政出動を巡る議論では、積極的な日米と、財政規律を重んじる独英の溝は十分に埋まらなかった。多くの国から「財政出動はむしろ質が大事だ」といった声も相次いだという。

各国の事情に応じて、成長に資する「質の高い投資」をどう促進していくか。今週の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)では、議長の安倍首相の主導で、議論を深める必要があろう。

G7会議に合わせた日米財務相会談で、為替を巡る対立が解消しなかったのも気がかりだ。

麻生財務相は記者会見で「(円相場の)この数週間は秩序立った動きとは言えない」と述べ、円高阻止の市場介入も辞さない考えを改めて示した。

ルー米財務長官は「無秩序な動きと呼べる基準は極めて高い」として、介入を牽制した。

日米の不協和音が高まれば、投機筋につけ込まれて為替相場の乱高下を招く恐れもある。金融市場の安定を最優先に、日米が丁寧に意思疎通を図ることが大切だ。

G7会議は、タックスヘイブン(租税回避地)の実態の一端が明らかになった「パナマ文書」問題を受け、国際的な税逃れ対策の強化でも合意した。税務当局による口座情報の交換など、国際的な枠組みに多くの国の参加を促す。

租税回避はただちに違法ではなくても、税への信頼を損なう。サミットで公正な国際課税のあり方の検討を進めるべきだ。

テロ資金対策に関する行動計画もまとめた。G7間の情報交換の強化や、税関に申告せずに他国に持ち出せる現金の上限額引き下げなどが柱だ。

テロ組織を追い詰めるには、国境を超えた資金の流れを断たねばならない。G7以外にも協調行動を広めたい。

産経新聞 2016年05月25日

日米とサミット 国際秩序を守る決意示せ

伊勢志摩サミットは、自由と民主主義の価値観を軽視し、国際秩序を乱そうとする勢力に対し、先進7カ国(G7)がそれを許さない決意を示す場としたい。

大きなカギとなるのは、戦争の痛みを乗り越えて同盟を結びアジア太平洋の平和と繁栄の礎を築いてきた日米両国がどれだけ議論を主導できるかだ。

その意味で、安倍晋三首相とオバマ大統領が事前に行う首脳会談は極めて重要なものとなる。

アジア太平洋地域の秩序を脅かす最大要因は、中国の一方的な海洋進出である。南シナ海の軍事拠点化は、露骨な力による現状変更にほかならない。

日米両国は呼応して、中国の脅威に直面するフィリピン、ベトナムのほか、オーストラリアやインドとも安保協力を強化し、地域での対中連携を構築してきた。

オバマ氏はサミット前にベトナムも訪れた。チャン・ダイ・クアン国家主席との会談では武器輸出規制の解除で合意するなど、軍事分野での協力強化が図られた。

サミットでも、G7として中国に強い警告を発したい。中国による南シナ海の軍事拠点化は認めない日米両国の強い意思を、首脳宣言に反映させる必要がある。

北朝鮮の核・弾道ミサイル開発は核不拡散体制への挑戦であり、日米にとり直接の脅威だ。拉致を含めた対北問題の包括的解決に向けたG7の連携も確認したい。

来年1月に退任するオバマ氏にとって、現職大統領としての訪日は最後となるだろう。

産経新聞 2016年05月24日

サミットとテロ 根絶へ国際連携を強めよ

罪のない人々が毎日のように、世界の各地で国際テロリズムの犠牲になっている。

テロは、どんな理由があれ決して許されない卑劣な犯罪である。伊勢志摩サミットをその根絶に向けた実効性ある対策を進める機会としたい。

昨年11月にはフランスのパリで、今年3月にはベルギーのブリュッセルで、イスラム過激派による同時多発テロがあった。シリアでは23日、大規模な爆弾テロがあった。

人類共通の脅威に対し、G7が強い決意のもと、行動計画をまとめるのは当然だ。

カギを握るのは緊密な国際連携だ。フランスとベルギーの事件では、他国の治安当局がテロ容疑者として指名手配したり、監視対象にしていながら、当事国の警備に十分には反映されなかった。

行動計画では、テロに関する機密情報のやり取りの強化に加え、テロリストの入国を阻む水際対策やハイジャック防止のため、航空機の搭乗者情報の共有を進める。途上国を含め国際刑事警察機構(ICPO)のデータベースの活用も図る。

「イスラム国」(IS)など過激主義の蔓延(まんえん)を防ぐため、イスラム穏健派への教育支援など貧困対策を進める。金融機関と協力してテロ組織への資金流入も阻む。すべてを迅速に実行してほしい。

産経新聞 2016年05月22日

G7と政策協調 立場の違い越え結束示せ

世界経済の低迷打開へ政策強化が必要という認識は共有できた。ただ、そのための具体的な行動は国ごとに異なる。

仙台市で開かれた先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は、政策の足並みをそろえる難しさを再認識する場になったともいえよう。

議論は、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に引き継がれる。立場の違いを乗り越えてG7の結束を示せるよう、安倍晋三首相には議長としての強い指導力を発揮してもらいたい。

世界経済の牽引(けんいん)役としての期待は、中国などの新興国から先進国へと移っている。新興国を含む20カ国・地域(G20)ではなく、G7が果たすべき役割は大きく、強い発信力も求められよう。

そのわりには会議の成果は物足りない。各国は、国情に応じて金融、財政政策や構造改革を総動員することで一致した。過度の為替変動が経済に悪影響を与えることも確認した。

ただ、これらはG20合意を踏襲したもので、G7として新たな協調を打ち出せてはいない。

各国の政策の方向性には大きな隔たりがある。景気をてこ入れする財政出動に前向きな日本と、財政規律を重視して構造改革を優先するドイツや英国との溝は、先の首相の訪欧時と変わりはない。財政出動は各国の判断である。

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