骨太と成長戦略 真の再生に資する分配を

読売新聞 2016年05月21日

成長戦略 経済底上げの具体策を示せ

高い数値目標を並べるだけでは足りない。肝心なのは、着実な達成への具体策である。

政府の産業競争力会議が、アベノミクスで4回目の成長戦略「日本再興戦略2016」をまとめた。

情報通信技術(ICT)や人工知能(AI)を活用して生産性を高める「第4次産業革命」の推進など、官民を挙げて取り組む重点10分野を明示している。

名目国内総生産(GDP)を500兆円から600兆円に引き上げる政府目標をにらみ、健康立国26兆円、環境投資28兆円など、具体的な市場創出額も掲げた。

安倍首相は、「新しいビジネスが生まれ、あらゆる産業が一変する可能性がある。スピード勝負で取り組む」と強調した。

人口減少などで日本の潜在成長率は0%台前半に低迷している。生産性向上や市場育成で、成長力を底上げする狙いは妥当だ。

GDPの足踏み状態が続くなど、日本経済の現状は厳しい。金融緩和、財政出動、成長戦略の「3本の矢」でスタートしたアベノミクスが、息切れしてきたとの指摘も出ている。

最大の要因は、3本目の矢の成長戦略が、十分な効果を上げていないことである。アベノミクスの立て直しには、成長戦略の深化と断固とした実行が欠かせない。

実効性を高めるカギは、安倍首相が成長戦略の「一丁目一番地」と位置付けてきた規制改革だ。だが、政府の規制改革会議の答申は、物足りなさが否めない。

農業分野では、バター不足の原因とされる生乳流通制度に関する改革が大きく後退した。

3月の原案は、農協団体を通じた取引にだけ補助金を交付する「指定団体制度」の廃止を打ち出したが、農林族議員や農業団体の反発を受け、「抜本的改革を検討」との表現にとどまった。

農協が農家に販売する資材や肥料が、民間の量販店より割高だとされる問題の改善策も、結論が今秋に先送りされた。今夏の参院選公約を意識したのだろうか。

雇用分野も踏み込み不足だ。

成長産業への人材移動を加速する労働市場改革が急務なのに、職場情報のデータベース整備、インターンシップ活用など、迫力に欠けるメニューが目立つ。

既に決まった施策の停滞も見過ごせない。成果に応じて賃金を決める「脱時間給」制度の関連法案は今国会成立が見送られた。

政府は、各施策の進捗しんちょく状況をしっかりと点検すべきだ。

産経新聞 2016年05月20日

骨太と成長戦略 真の再生に資する分配を

政府が、新たな骨太方針と成長戦略の素案をまとめた。

1億総活躍プランなどと合わせ安倍晋三政権が掲げる国内総生産(GDP)600兆円の経済実現を目指すという。

成長一辺倒だった昨年までと異なり「成長と分配の好循環」を掲げた。消費低迷の背景には将来の生活不安がある。分配政策でこれを解消し、潜在需要を掘り起こす。同時に生産性向上や市場創出を目指す狙いに異論はない。

ただそれも、確実かつ迅速に実行できてこその話である。政府には財源を含む具体論をもっと明確にしてもらいたい。ここが不十分なままでは、選挙を意識して聞こえのいい政策を並べただけと受け取られても仕方あるまい。

政府は、1億総活躍関連の施策を実施することで、平成32年度の雇用が約117万人増え、消費が13・7兆円増えると試算した。女性や高齢者の雇用促進で人口減時代の労働力不足が緩和されれば、0%台とされる潜在成長率を押し上げる効果も期待できよう。

これらとともに、最新技術を生かした第4次産業革命への対応やサービス産業の生産性向上、観光の基幹産業化などの成長戦略を加速していくとしている。

経済再生には、幅広い施策が必要となる。だが、今年は成長戦略に1億総活躍関連が加わり、項目の多さが全体像を分かりにくくしている。最重点施策をもっと絞り込む工夫をこらしてほしい。

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