三菱自動車に続いて、自動車大手のスズキでも燃費データを巡る不正が明らかになった。
自動車メーカーの燃費表示に対する消費者の信頼を揺るがしかねない不祥事である。
問題になったのは、燃費計測の際に用いる「走行抵抗値」だ。
スズキは、法律で定められた方法による実測値ではなく、タイヤやブレーキなどの部品ごとに測った数値を「足し算」したものを、国の審査機関に提出していた。
対象は16車種で、他社に供給している同型車を含めると計27車種、210万台超に上る。
スズキは、「テストコースが海に近く、風の影響を受けやすいため、データのばらつきが大きかった」と理由を説明している。
カタログ記載の燃費と、正規の方法で測定されたデータとの乖離は小さいとし、対象車種の販売を継続する方針も示した。
燃費水増しの意図はなく、数値の食い違いは小さかったという。そうだとしても、不正な方法を採用していい理由にはならない。
テストコースに防風壁を設けたり、他社のコースを借りたりするなど、実測で適切なデータを得る手段はあったはずだ。
ライバル会社が正規の測定法を採用している中、異なる“物差し”で計測したデータを使うのは、明らかに公正性を欠く。
不正なデータ測定は誰が指示したのか。三菱自の問題を受けて調査を迫られるまで、なぜチェックできなかったのか。スズキは全容を解明し、実効性のある再発防止策を講じるべきだ。
会社の都合を優先した法令軽視の芽を、早期に摘む必要がある。さもないと、安全にかかわる不正を引き起こす恐れもあろう。
一方、三菱自は燃費不正に関する社内調査について、国土交通省に3回目の報告を行った。
本社の性能実験部が、走行データの改ざんを子会社に指示していたことが分かった。不正な測定は、軽自動車以外の9車種中8車種でも行われていた。
相川哲郎社長は6月末の株主総会で引責辞任する。ユーザーや取引先への甚大な影響を考えれば、当然の対応である。
三菱自は、「(経営陣の)高い燃費目標を期待する発言が、結果的に不正が生まれる環境を作った」とも認めている。
社内の風通しが良ければ、不正は防げたのではないか。企業統治体制を確立することが、三菱自の再生に欠かせない。
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