五輪招致に疑惑 潔白の証明にはほど遠い

朝日新聞 2016年05月20日

五輪招致疑惑 厳正に実態の解明を

世界最大のスポーツの祭典を呼び寄せた成功の陰で金銭にまつわる不正があったのか否か。

2020年東京五輪・パラリンピックの招致活動に、疑惑が投げかけられている。

日本オリンピック委員会(JOC)は、第三者の弁護士を含む調査チームを発足させることを決めた。

五輪の開催国として、不正の疑惑に対し厳正に向き合う責任がある。招致を推進してきた政府も積極的に協力して、解明を進めるべきだ。

疑惑は、フランスの検察当局が捜査を始めたと公表して表面化した。日本の招致委がシンガポールの顧問会社へ支払った約2億3千万円が焦点である。

その会社は、ロシアの禁止薬物使用の隠蔽(いんぺい)に関わった疑いがもたれている国際陸連前会長の息子と関係が深いとされる。東京五輪が決まった翌年、会社は消滅した。

招致関係者は、正当なコンサルタント業務の対価だったとして、疑惑を否定している。

だが、具体的にどんな業務だったのか、その内容が見えない。契約上、相手方との守秘義務があり、明かせないというが、2億円超を払った妥当性は吟味されねばなるまい。さらに、その大金を会社が実際に何に使ったのか、調べる努力が必要だろう。

国会では、この会社の選定が客観的なものだったのかどうかについても疑問が出た。

会社の人物から売り込みがあったとされるが、契約する際、招致委はJOCのマーケティングなどを請け負っている広告会社の電通に相談した。電通は、契約に値する人物である旨を返答したという。

電通にも疑惑の解明に協力してもらいたい。契約に値する人物と判断できた根拠は何だったのか。業績などが明確になるだけでも参考になる。

五輪に限らず、国際スポーツ界では多額の金銭が動き、多くの権限をもつ国際組織などにしばしば不正のうわさが立つ。コンサルタントの関与が疑われることもあるが、その活動の実態はベールに包まれている。

国際サッカー連盟の汚職や、ロシアの薬物問題でも金銭にまつわる問題が露呈し、近年のスポーツ界は不祥事続きだ。

来週の主要7カ国首脳会議(伊勢志摩サミット)では、スポーツにおける腐敗の問題も議題に含まれる。

議長国として、スポーツ大会や組織運営の浄化と信頼回復に向け、率先して取り組んでいく姿勢を示さなくてはならない。

読売新聞 2016年05月18日

東京五輪招致 不正送金疑惑は晴れるのか

2020年東京五輪の招致に絡む不正送金疑惑が浮上した。4年後に迫る大会への期待に水を差す残念な事態である。

東京五輪の招致委員会から、国際陸上競技連盟(IAAF)のラミン・ディアク前会長の息子が関与するとされるコンサルタント会社の口座に計2億3000万円もが送金されていた。

フランスの検察当局が贈収賄容疑などで捜査している。コンサルタント会社を介し、招致委からディアク氏側に賄賂が流れたという筋を書いているとみられる。

ディアク氏は、ロシア陸連の組織的なドーピング違反の隠蔽に関わったと言われる。陸上界に長らく君臨し、疑惑の多いディアク氏側に高額の資金が渡った可能性があれば、捜査当局が関心を示すのは、無理からぬことだろう。

ディアク氏は、五輪開催地を決めるための投票権を持つ国際オリンピック委員会(IOC)の委員も務めていた。送金は、東京開催が決まった13年9月を挟む7月と10月の2度にわたっていた。

こうした事実も、送金の違法性を疑わせる要因だと言えよう。

問題の送金の原資は、民間からの寄付やスポンサーからの協賛金だ。招致委の理事長だった日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長は国会で、送金の名目はコンサルタント会社のロビー活動費などと説明した。

「契約や支払いは、監査法人の監査を受け、IOCの承認も得ている」と正当性も強調した。

確かに、五輪の招致活動では、IOC委員の支持を取り付けるためのロビー活動が欠かせない。

02年ソルトレークシティー五輪の招致で、IOC委員の買収疑惑が発覚し、委員が立候補都市を訪問することが禁じられた。

招致活動の制約が厳しくなった結果、情報収集などを請け負うコンサルタント会社の有用性が増した。今回も、問題のコンサルタント会社から売り込みがあった。

招致委は、広告大手「電通」を通じ、この会社の実績を確認したというが、ペーパーカンパニーだとの指摘もある。調査が甘かったと批判されても仕方がない。

2億円余の料金は適正だったか。それに見合うどんな活動をしたのか。検証が必要だ。

竹田氏は「守秘義務」などを理由に、十分な説明をしていない。これでは疑念は晴れまい。

やましい送金でないのなら、情報を可能な限り開示し、仏当局の捜査にも積極的に協力して、潔白を証明するしかない。

産経新聞 2016年05月15日

五輪招致に疑惑 潔白の証明にはほど遠い

2020年東京五輪・パラリンピックの成功を強く願っている。だが、これだけ不始末が続けば気持ちもしぼむ。国民の支持も失いかねない。

五輪招致をめぐり、多額の資金が国際陸連前会長側に送金されていたことが明らかになった。

フランスの司法当局が公表し、当時の招致委員会理事長で日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長が送金の事実を認めた。

竹田氏は「正規の海外コンサルタント料であり、招致活動はフェアに行ってきた」と述べたが、説明は不十分である。仏司法当局は汚職や資金洗浄の容疑で捜査しており、不正の疑いを持たれた以上、まず、自らの手で調査を尽くして公表すべきだろう。

2013年7月と10月、「東京五輪招致」の名目で、前会長の息子に関係するシンガポールの会社の口座に約2億2300万円が振り込まれた。東京五輪の開催は同年9月に決定した。

竹田氏らはこの会社について「大変実績のある代理店であり、実績に期待し契約を行った。アジア中東の情報分析のエキスパートであり、その分野におけるサービスを受け取った」と説明した。

だが、同じ口座はロシア選手のドーピング隠蔽(いんぺい)をめぐっても使用されており、欧州のメディアはペーパーカンパニーだと指摘している。その実態については、竹田氏も「細かく承知していない。事務局が必要だと判断した」と述べるにとどまった。

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