2020年東京五輪の招致に絡む不正送金疑惑が浮上した。4年後に迫る大会への期待に水を差す残念な事態である。
東京五輪の招致委員会から、国際陸上競技連盟(IAAF)のラミン・ディアク前会長の息子が関与するとされるコンサルタント会社の口座に計2億3000万円もが送金されていた。
フランスの検察当局が贈収賄容疑などで捜査している。コンサルタント会社を介し、招致委からディアク氏側に賄賂が流れたという筋を書いているとみられる。
ディアク氏は、ロシア陸連の組織的なドーピング違反の隠蔽に関わったと言われる。陸上界に長らく君臨し、疑惑の多いディアク氏側に高額の資金が渡った可能性があれば、捜査当局が関心を示すのは、無理からぬことだろう。
ディアク氏は、五輪開催地を決めるための投票権を持つ国際オリンピック委員会(IOC)の委員も務めていた。送金は、東京開催が決まった13年9月を挟む7月と10月の2度にわたっていた。
こうした事実も、送金の違法性を疑わせる要因だと言えよう。
問題の送金の原資は、民間からの寄付やスポンサーからの協賛金だ。招致委の理事長だった日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長は国会で、送金の名目はコンサルタント会社のロビー活動費などと説明した。
「契約や支払いは、監査法人の監査を受け、IOCの承認も得ている」と正当性も強調した。
確かに、五輪の招致活動では、IOC委員の支持を取り付けるためのロビー活動が欠かせない。
02年ソルトレークシティー五輪の招致で、IOC委員の買収疑惑が発覚し、委員が立候補都市を訪問することが禁じられた。
招致活動の制約が厳しくなった結果、情報収集などを請け負うコンサルタント会社の有用性が増した。今回も、問題のコンサルタント会社から売り込みがあった。
招致委は、広告大手「電通」を通じ、この会社の実績を確認したというが、ペーパーカンパニーだとの指摘もある。調査が甘かったと批判されても仕方がない。
2億円余の料金は適正だったか。それに見合うどんな活動をしたのか。検証が必要だ。
竹田氏は「守秘義務」などを理由に、十分な説明をしていない。これでは疑念は晴れまい。
やましい送金でないのなら、情報を可能な限り開示し、仏当局の捜査にも積極的に協力して、潔白を証明するしかない。
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