都知事の資金問題 不信拭う説明が足りない

朝日新聞 2016年05月15日

舛添都知事 公私混同も甚だしい

高額な海外出張費や、公用車での別荘通い。そして今度は政治資金の私的流用だ。

次々と浮かぶ問題から露呈したのは、市民感覚からかけ離れた舛添要一・東京都知事の公私混同ぶりと、公金を使うことへの鈍感さだ。これが都政のトップの感覚なのかとあきれる。

おとといの会見で舛添氏は、私的な支出を旧資金管理団体の政治資金収支報告書に計上していたことを認め、謝罪した。

知事就任前の2013年と14年に千葉県のホテルで開いた会議費約37万円は、実際は家族4人の宿泊費だった。いずれも正月に訪れ、プールも利用した。

舛添氏の説明では、宿泊の間に衆院選や都知事選について事務所関係者と会議したので政治活動にあたるが、「誤解を招いた」ので返金するという。

見苦しい言い訳だ。本人分だけならまだしも、家族の宿泊費までも政治活動費と称するのは強弁がすぎる。家族との旅行先でビジネスマンが緊急の仕事を処理したとしても、丸抱えで出張費になるはずがない。常識の問題だ。

説明責任も果たし切れていない。ホテルでの会議は「事務所関係者」とおこなったというが、「政治の機微に触れる」と人数さえ明らかにしなかった。本当に会議は開かれたのか。疑いは晴れていない。

そもそも今回の調査は、週刊文春が報じた範囲の確認にとどまっている。

舛添氏の収支報告書をめくると、ギャラリーや古美術商から「現代史資料」「フランス史資料」などを買ったケースが数多く見つかる。以前、石版画や後藤新平の掛け軸を購入したことが発覚した際は「正当な政治活動の範囲」と釈明していた。

舛添氏は「政治活動で使う物とプライベートは分けている」と述べたが、趣味の収集に公金が使われていないのか。イタリア料理店や天ぷら屋などでの私的な飲食が、ずさんな会計処理で政治資金に紛れていたのだから、物品の購入などについても明確に説明するべきだ。

舛添氏は会見で、政治資金の使途について今後も調査すると述べた。早急に約束を果たしてもらいたい。

今回の一連の問題は、法律や都のルールに直ちに違反しているとまでは言えないかもしれない。しかし舛添氏が都知事に就いたのは、前任の猪瀬直樹氏が選挙資金疑惑で辞任したことを受けてだった。

「政治とカネ」に注がれた都民の厳しい目を、いま一度肝に銘じるべきだ。

読売新聞 2016年05月14日

舛添都知事謝罪 政治資金の流用を否定できず 

政治資金を私的に流用した疑惑を払拭できたとは、到底言えない。

東京都の舛添要一知事が記者会見で、自らの資金管理団体の政治資金収支報告書に不適切な記載や誤りがあったことを認め、謝罪した。報告書を訂正し、一部を返金する意向も表明した。

疑惑の発端は、2013年1月と14年1月に千葉県内のホテルに払った計約37万円の「会議費」が実際は家族旅行の宿泊費だった、などと週刊文春が報じたことだ。事実なら、政治資金規正法が禁じる虚偽記入の可能性がある。

舛添氏は、ホテルの部屋には家族と宿泊したが、事務所関係者との会議にも使用した、と語った。記載自体は虚偽ではないが、誤解を招いたことを踏まえ、襟を正す姿勢を演出したいのだろう。

だが、参加メンバーなど、会議の詳細は説明しなかった。本当に会議を開いたのか、疑問は残る。仮に会議が事実だとしても、家族旅行の性格が強い滞在だったことは否めまい。公私混同に関する苦肉の釈明との印象が拭えない。

13年1月当時、舛添氏は新党改革代表だった。資金管理団体の収入には政党交付金の一部が含まれているのではないか。

舛添氏は、報告書の別の支出に個人の飲食代が含まれていたことも認め、「会計責任者のチェックが十分でなかった」と述べた。

意図的な私的流用でないとしても、極めてずさんな会計処理だったのは間違いない。舛添氏は、反省し、公私を峻別しゅんべつすべきだ。政治資金を扱う体制を見直し、厳正な管理にも努めねばならない。

舛添氏は、昨年4月以降、ほぼ毎週末に神奈川県湯河原町の別荘に公用車で通っていたことでも物議を醸した。知事が首都を頻繁に離れる危機管理上の問題や、公用車の使用が批判された。

高額な海外出張費についても、航空機のファーストクラスや、高級ホテルのスイートルームの利用の是非が論議を呼んだ。

舛添氏は当初、「公用車は動く知事室」などと語り、正当性も主張していた。だが、結局、別荘に行く際の公用車使用の自粛や、出張費の節減を表明した。

どちらも直ちに違法性が問われるような問題ではないものの、厳しい世論に抗し切れず、態度を変えただけだろう。

前任の猪瀬直樹氏は、医療グループ徳洲会側からの5000万円受領事件で辞職している。2代続けて、都知事が政治とカネの問題で追及されるのは残念である。

産経新聞 2016年05月14日

都知事の資金問題 不信拭う説明が足りない

舛添要一東京都知事が相次いで指摘された政治資金の不適切な支出について会見で説明し、陳謝した。

家族との旅行費や私的な飲食費が支出に含まれていることが問題視されていた。

舛添氏は疑念を招いたとして政治資金収支報告書を訂正し、一部を返金することも表明した。

だが、説明は多くの疑問を残すもので、説得力に欠けていた。

知事職にとどまるというが、都民が抱いた不信は拭えていないことを自覚すべきである。

舛添氏は家族旅行を「会議費」名目にした理由として、千葉県内の宿泊先に事務所関係者らが来て、国政選挙や都知事選の対応を協議したことを挙げた。

あきれた説明だ。公私混同の疑いを持たれかねないと自身も認めたが、家族旅行の費用を政治資金で賄うため、わざわざ宿泊先を会合場所に選んだとも受け取られかねない。

しかも、会合の出席者や人数、どれくらいの時間協議したかは説明で判然としなかった。

この問題に先立ち、舛添氏は高額の海外出張や公用車で他県の別荘に定期的に通っていたことの是非についても指摘されていた。

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