政治資金を私的に流用した疑惑を払拭できたとは、到底言えない。
東京都の舛添要一知事が記者会見で、自らの資金管理団体の政治資金収支報告書に不適切な記載や誤りがあったことを認め、謝罪した。報告書を訂正し、一部を返金する意向も表明した。
疑惑の発端は、2013年1月と14年1月に千葉県内のホテルに払った計約37万円の「会議費」が実際は家族旅行の宿泊費だった、などと週刊文春が報じたことだ。事実なら、政治資金規正法が禁じる虚偽記入の可能性がある。
舛添氏は、ホテルの部屋には家族と宿泊したが、事務所関係者との会議にも使用した、と語った。記載自体は虚偽ではないが、誤解を招いたことを踏まえ、襟を正す姿勢を演出したいのだろう。
だが、参加メンバーなど、会議の詳細は説明しなかった。本当に会議を開いたのか、疑問は残る。仮に会議が事実だとしても、家族旅行の性格が強い滞在だったことは否めまい。公私混同に関する苦肉の釈明との印象が拭えない。
13年1月当時、舛添氏は新党改革代表だった。資金管理団体の収入には政党交付金の一部が含まれているのではないか。
舛添氏は、報告書の別の支出に個人の飲食代が含まれていたことも認め、「会計責任者のチェックが十分でなかった」と述べた。
意図的な私的流用でないとしても、極めてずさんな会計処理だったのは間違いない。舛添氏は、反省し、公私を峻別すべきだ。政治資金を扱う体制を見直し、厳正な管理にも努めねばならない。
舛添氏は、昨年4月以降、ほぼ毎週末に神奈川県湯河原町の別荘に公用車で通っていたことでも物議を醸した。知事が首都を頻繁に離れる危機管理上の問題や、公用車の使用が批判された。
高額な海外出張費についても、航空機のファーストクラスや、高級ホテルのスイートルームの利用の是非が論議を呼んだ。
舛添氏は当初、「公用車は動く知事室」などと語り、正当性も主張していた。だが、結局、別荘に行く際の公用車使用の自粛や、出張費の節減を表明した。
どちらも直ちに違法性が問われるような問題ではないものの、厳しい世論に抗し切れず、態度を変えただけだろう。
前任の猪瀬直樹氏は、医療グループ徳洲会側からの5000万円受領事件で辞職している。2代続けて、都知事が政治とカネの問題で追及されるのは残念である。
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