熊本地震の前震が発生してから、14日で1か月となった。
政府は、被災地支援を柱とする2016年度補正予算案を閣議決定し、国会に提出した。速やかに成立させ、復旧・復興への取り組みを加速させたい。
地震後に寸断された交通網は元に戻りつつある。九州新幹線は全線で運行を再開し、高速道路の不通区間は解消された。
道路や橋の復旧事業の一部を国が代行する大規模災害復興法の適用も決まるなど、政府による支援も具体化してきた。
熊本県内の小中学校と高校では、全校で授業が再開された。校舎に児童・生徒の笑顔が戻ったことは、朗報である。
一方で、余震は続いている。住み慣れた家を失った被災者の生活再建は、思うように進まない。避難者は、なお約1万人に上る。
当面の課題は、仮設住宅の建設だ。今のところ、着工したのは約1000戸にとどまり、入居開始は早くても6月中旬になる。
熊本県は、住宅の全半壊を8000棟程度と見込み、みなし仮設を含めて計4200戸の仮設住宅の整備を打ち出した。
ところが、実際の全半壊は4万棟を超えており、足りなくなる可能性が高い。政府と県、市町村が連携し、建設用地の確保などに取り組むことが大切だ。
熊本県の有識者会議は今週、復興への緊急提言を公表した。インフラの早期復旧や災害拠点の強化が盛り込まれている。優先度の高い事業を効率的に進めたい。
活断層が複雑に連なる一帯で発生した熊本地震は、情報発信に大きな課題を残した。
14日の前震と16日の本震は、ともに最大震度7を記録した。観測史上、例のないパターンだ。
気象庁は、マグニチュード(M)6・5の前震を本震と判断し、余震への注意を呼びかけた。政府の地震調査委員会のマニュアルに、内陸型は「M6・4以上ならば本震」と記載されているためだ。
この発表により、さらに大きな地震は発生しないと判断した人が多かったのではないか。実際、前震が収まった後に避難先から帰宅し、M7・3の本震による住宅倒壊で死亡した人もいる。
前震の規模に応じた救助・救援体制を組んだ政府や自治体にとっても、想定外の展開となり、人員の増強などに追われた。
地震調査委は、情報発信の在り方を検討する。リスクを的確に伝える手法が求められる。
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