熊本地震1か月 復興に向けた道筋を描きたい

朝日新聞 2016年05月14日

震災1カ月 住まいの確保に全力を

熊本地震から1カ月。おさまらぬ余震に不安をかき立てられながら、熊本県内では、いまだに1万人を超す人たちが避難所暮らしを続けている。

避難所ではこの間、段ボールで間仕切りを設けたり、看護師を24時間態勢で配置したりと、生活環境の改善に向けた努力が重ねられてきた。

だが、それはあくまでも応急の対策だ。住民の健康を守り、復旧・復興という次のステップに踏み出すためにも、県や地元自治体は被災者の住まいを確保し、避難所暮らしを解消させることが急務だ。

その際に大切なことは「被災といえばプレハブ仮設の建設」という先入観を捨てることだ。

内閣府は、東日本大震災を経てまとめたマニュアルで、民間の賃貸アパートなどを行政が借りて被災者に提供する「みなし仮設」の活用をうたっている。

被災地の親しい住民同士のつながりをどう維持するかといった課題はあるが、すぐに入居でき、コストも低く抑えられる利点がある。

熊本県でもみなし仮設の相談窓口は開かれているが、申し込みは数十件にとどまる。

最大の理由は、入居に必要な罹災(りさい)証明書の発行の遅れだ。自宅が全壊か大規模半壊かに判定される必要があるが、自治体の人手不足で間に合わない。

緊急時である以上、すでに行っている被災宅地危険度判定士の調査を援用するなど、臨機応変な対応ができないものか。

会計検査院は12年、みなし仮設の家賃を現金支給することも提言した。賃貸契約に絡む行政事務が減り、入居待ちの時間も短縮できる。その適用を国は検討すべきだ。

熊本県では震度7が2度も起きたこともあり、震災2週間後にようやく仮設住宅の建設が始まった。これまでに約1千戸分に着手したが、その分でさえ、入居できるのは早くても6月中旬だという。そもそも、全体でどれだけの仮設建設が必要なのかも、はっきりしていない。

全体の見通しを示すことは、被災者の生活再建に欠かせない。東日本大震災では、さみだれで仮設住宅が提供された結果、応募が殺到し、一つの団地にさまざまな地区の住人が入り交じった地域もあった。コミュニティーづくりが難しくなり、復興の歩みがにぶる。

熊本は梅雨入りを間近に控えている。全国の自治体職員がすでに応援に入っているが、必要ならばさらに支援を仰ぎ、国も関与しながら用地確保や住民ニーズの把握を急いでほしい。

読売新聞 2016年05月14日

熊本地震1か月 復興に向けた道筋を描きたい

熊本地震の前震が発生してから、14日で1か月となった。

政府は、被災地支援を柱とする2016年度補正予算案を閣議決定し、国会に提出した。速やかに成立させ、復旧・復興への取り組みを加速させたい。

地震後に寸断された交通網は元に戻りつつある。九州新幹線は全線で運行を再開し、高速道路の不通区間は解消された。

道路や橋の復旧事業の一部を国が代行する大規模災害復興法の適用も決まるなど、政府による支援も具体化してきた。

熊本県内の小中学校と高校では、全校で授業が再開された。校舎に児童・生徒の笑顔が戻ったことは、朗報である。

一方で、余震は続いている。住み慣れた家を失った被災者の生活再建は、思うように進まない。避難者は、なお約1万人に上る。

当面の課題は、仮設住宅の建設だ。今のところ、着工したのは約1000戸にとどまり、入居開始は早くても6月中旬になる。

熊本県は、住宅の全半壊を8000棟程度と見込み、みなし仮設を含めて計4200戸の仮設住宅の整備を打ち出した。

ところが、実際の全半壊は4万棟を超えており、足りなくなる可能性が高い。政府と県、市町村が連携し、建設用地の確保などに取り組むことが大切だ。

熊本県の有識者会議は今週、復興への緊急提言を公表した。インフラの早期復旧や災害拠点の強化が盛り込まれている。優先度の高い事業を効率的に進めたい。

活断層が複雑に連なる一帯で発生した熊本地震は、情報発信に大きな課題を残した。

14日の前震と16日の本震は、ともに最大震度7を記録した。観測史上、例のないパターンだ。

気象庁は、マグニチュード(M)6・5の前震を本震と判断し、余震への注意を呼びかけた。政府の地震調査委員会のマニュアルに、内陸型は「M6・4以上ならば本震」と記載されているためだ。

この発表により、さらに大きな地震は発生しないと判断した人が多かったのではないか。実際、前震が収まった後に避難先から帰宅し、M7・3の本震による住宅倒壊で死亡した人もいる。

前震の規模に応じた救助・救援体制を組んだ政府や自治体にとっても、想定外の展開となり、人員の増強などに追われた。

地震調査委は、情報発信の在り方を検討する。リスクを的確に伝える手法が求められる。

産経新聞 2016年05月17日

熊本地震と避難所 総力結集して生活支援を

熊本地震の発生から1カ月が経過した。

避難所ではなお約1万人が不自由な生活を強いられている。

今も余震が続き、睡眠も十分にとれず、プライバシーの確保もままならない。仮設住宅の建設が急務だが、入居開始までには、さらに1カ月を要するという。

災害対策基本法では、市町村長に緊急時の避難所をあらかじめ指定することを義務づけている。しかし、指定された体育館の照明器具が落下するケースなどもあり、安全性への不安やプライバシー確保の観点から、車中泊やテント暮らしを選んだ住民も多い。

車中泊の人たちを含めて避難者の生活環境を改善し、心身の疲労を和らげなければならない。高温多湿となる梅雨の時期を控え、衛生管理や熱中症対策には特に、万全を期してもらいたい。

避難所運営について、大西一史熊本市長は震災1カ月の本紙の取材に「地域コミュニティーと市職員が普段からもっと連携ができていたら」と反省を述べた。

避難生活が長引くにつれて、必要とされる支援は多様化する。医療や福祉、子供たちの心のケアや学習支援など、きめ細かな対応が求められる。住民と行政の連携が必要なのはもちろんだが、地元の自治体職員だけで対応するには、経験や人員などの面で限界があるだろう。

大切となるのは、経験豊かなボランティアの活用だ。

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