軽自動車の燃費偽装で経営の悪化した三菱自動車が、日産自動車から34%の出資を受ける資本業務提携を結び、再建を目指すことになった。
燃費を実際より良く見せる悪質な不正を受け、三菱自の販売台数は急減した。事実上の救済劇は、信用を失い、消費者に見放された企業が単独で生き残れないことを、端的に示している。
日産の傘下に入ることで当面の危機を乗り切ったとしても、法令や消費者を軽視する企業体質が温存されれば、本格的な再生はおぼつかない。三菱自は不正を繰り返した原因を徹底して洗い出し、その根を断たねばならない。
三菱自は国土交通省に対し、社内調査に関する2回目の報告を行った。不正が判明していた軽自動車4車種だけでなく、別の車種でも燃費を実測せずに机上計算したり、違法な測定方法を用いたりしていたことが分かった。
だが、4車種以外でも燃費の水増しが行われていたかどうかという肝心な点は、依然として定かでない。誰が不正を指示したのかも明らかにされなかった。
内容が不十分として、国交省が三菱自に、18日を期限に再調査を命じたのは当然だ。
焦点は、会社ぐるみの不正だったかどうかである。
三菱自は、測定を委託していた子会社の担当者が不適切なデータ処理をしていたとして、経営陣の関与を否定している。
経営陣主導で軽自動車の燃費目標が5回も引き上げられたことと、不正は関連があるのか。もっと明確な説明が必要だろう。
三菱自は、購入者に対する補償を検討している。カタログより悪い燃費によって余計に負担したガソリン代や、問題発覚で中古車価格が下がった分などが対象だ。誠実な対応が求められる。
日産のカルロス・ゴーン最高経営責任者(CEO)は記者会見で、「日産は三菱自に経営と企業統治の知見を提供できる」と述べ、意識改革を進める考えを示した。
大規模なリコール(回収・無償修理)隠しなど過去の教訓を生かせなかった背景には、意思疎通を欠いた縦割りの企業風土がある。三菱グループの支援を受けられるとの甘えを指摘する声も多い。改革は一筋縄では行かない。
新たに筆頭株主となる日産の責任も重い。役員派遣などを通じて三菱自に外部の風を吹き込み、信頼できる企業への再生をリードしなければ、巨額出資に見合う成果は得られまい。
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