三菱自燃費不正 信用の失墜が招いた再編劇

朝日新聞 2016年05月13日

三菱自と日産 「外部の目」で解明を

燃費不正問題に揺れる三菱自動車が、軽自動車分野で提携する日産自動車の傘下に入り、再出発を図ることになった。

日産は2300億円余を投じて三菱自の筆頭株主となり、取締役会長を含む複数の役員を送り込む。三菱自のブランドや販売網は維持しつつ、資材の購入や生産拠点の共用化、電気自動車を含む次世代車の技術開発、海外市場の共同開拓など、幅広い提携に踏み込む。

環境対策や自動運転を巡る競争を勝ち抜くには巨額の投資が必要で、経営規模がモノをいう。ルノー・日産グループに三菱自が加われば、トヨタ自動車グループなどと並ぶ世界トップ級の生産台数になる。三菱自から供給を受けている軽自動車は、日産の国内販売台数の4分の1を占めるだけに、中断している生産と販売を早く再開させたい……。

日産としては、2度にわたるリコール隠しの反省を生かせなかった三菱自について、手をさしのべる損得をてんびんにかけた末の判断だろう。三菱自の従業員や販売店、下請け部品メーカーに加え、先行きを案じていた購入者にとっても、ひと息つける話かもしれない。

ただ、言うまでもなく、提携の成否は三菱自がウミを出し切り、法令を守る会社に生まれ変われるかどうかにかかる。

データ偽装や違法な試験を続けていた問題は、三菱自から国土交通省への2度の報告を経ても全容がわからない。軽自動車以外でも、乗用車の人気車種で公式に届けていた燃費と実際に大きな隔たりがあることがわかったが、原因は不明のままだ。

軽自動車4車種のデータ偽装では、試験を委託した子会社の管理職社員が関与を認めたという。しかし、具体的な不正の経緯は明らかでない。社内の指示系統や責任の所在があいまいだから調査にも手間取っているのでは、との疑問すらわく。

日産は「不正の解明は三菱自の責任」との姿勢だが、積極的にかかわるべきではないか。今回の三菱自とは状況が異なるが、90年代に経営危機に陥った日産に乗り込んだカルロス・ゴーン氏は、社内の組織や慣行にとらわれず病巣をあぶり出し、対策を練り上げた実績がある。

三菱商事の出身で、00年代半ばから三菱自の再建を指揮してきた益子修会長は、企業体質が変わらなかった理由について「外部からの目や人材が入りにくい閉鎖的な社会で仕事が行われてきた」と語った。

今、「外部の目」を務めるべきなのは日産だ。

読売新聞 2016年05月13日

三菱自燃費不正 信用の失墜が招いた再編劇

軽自動車の燃費偽装で経営の悪化した三菱自動車が、日産自動車から34%の出資を受ける資本業務提携を結び、再建を目指すことになった。

燃費を実際より良く見せる悪質な不正を受け、三菱自の販売台数は急減した。事実上の救済劇は、信用を失い、消費者に見放された企業が単独で生き残れないことを、端的に示している。

日産の傘下に入ることで当面の危機を乗り切ったとしても、法令や消費者を軽視する企業体質が温存されれば、本格的な再生はおぼつかない。三菱自は不正を繰り返した原因を徹底して洗い出し、その根を断たねばならない。

三菱自は国土交通省に対し、社内調査に関する2回目の報告を行った。不正が判明していた軽自動車4車種だけでなく、別の車種でも燃費を実測せずに机上計算したり、違法な測定方法を用いたりしていたことが分かった。

だが、4車種以外でも燃費の水増しが行われていたかどうかという肝心な点は、依然として定かでない。誰が不正を指示したのかも明らかにされなかった。

内容が不十分として、国交省が三菱自に、18日を期限に再調査を命じたのは当然だ。

焦点は、会社ぐるみの不正だったかどうかである。

三菱自は、測定を委託していた子会社の担当者が不適切なデータ処理をしていたとして、経営陣の関与を否定している。

経営陣主導で軽自動車の燃費目標が5回も引き上げられたことと、不正は関連があるのか。もっと明確な説明が必要だろう。

三菱自は、購入者に対する補償を検討している。カタログより悪い燃費によって余計に負担したガソリン代や、問題発覚で中古車価格が下がった分などが対象だ。誠実な対応が求められる。

日産のカルロス・ゴーン最高経営責任者(CEO)は記者会見で、「日産は三菱自に経営と企業統治の知見を提供できる」と述べ、意識改革を進める考えを示した。

大規模なリコール(回収・無償修理)隠しなど過去の教訓を生かせなかった背景には、意思疎通を欠いた縦割りの企業風土がある。三菱グループの支援を受けられるとの甘えを指摘する声も多い。改革は一筋縄では行かない。

新たに筆頭株主となる日産の責任も重い。役員派遣などを通じて三菱自に外部の風を吹き込み、信頼できる企業への再生をリードしなければ、巨額出資に見合う成果は得られまい。

産経新聞 2016年05月13日

日産の三菱自支援 疑惑残した再生あり得ぬ

燃費データ不正問題に揺れる三菱自動車が日産自動車の傘下に入り、経営再建を目指すことになった。

三菱自は軽自動車の生産・販売を停止するなど、会社の存続自体が危ぶまれていた。日産の支援で生き残りを図る窮余の判断なのだろう。

ただし、経営再建の前提は偽装の全容解明と公表、顧客への補償などである。三菱自は「調査中」を繰り返し、実態究明からはほど遠い。いまだ明確な説明を受けていない購入者の不安をどう考えているのか。

三菱自は、2度にわたるリコール隠しで厳しい社会的な批判を浴び、再生を誓ったが、その間も社内で偽装が行われていた。この企業体質を抜本的に改革し、顧客の信頼を取り戻さなければ、再生への道など開きようがない。

日産と三菱自の資本・業務提携により、日産は34%を出資して筆頭株主となる。「三菱」ブランドは維持するという。両社はこれまでも軽自動車で提携しており、今後は、アジアなど海外市場の開拓でも連携を図る。

だが、三菱自に対する不信感が収まるどころか拡大している点を日産側も深刻に受け止めるべきである。

国土交通省への報告では、偽装が判明した軽4車種に加え、スポーツ用多目的車など9車種でも不正の疑いがあったという。定められた方法で試験すると排ガス性能が低下する車両もあり、早急な対策が急務である。

産経新聞 2016年05月13日

日産の三菱自支援…疑惑残した再生あり得ぬ

燃費データ不正問題に揺れる三菱自動車が日産自動車の傘下に入り、経営再建を目指すことになった。

三菱自は軽自動車の生産・販売を停止するなど、会社の存続自体が危ぶまれていた。日産の支援で生き残りを図る窮余の判断なのだろう。

ただし、経営再建の前提は偽装の全容解明と公表、顧客への補償などである。三菱自は「調査中」を繰り返し、実態究明からはほど遠い。いまだ明確な説明を受けていない購入者の不安をどう考えているのか。

三菱自は、2度にわたるリコール隠しで厳しい社会的な批判を浴び、再生を誓ったが、その間も社内で偽装が行われていた。この企業体質を抜本的に改革し、顧客の信頼を取り戻さなければ、再生への道など開きようがない。

日産と三菱自の資本・業務提携により、日産は34%を出資して筆頭株主となる。「三菱」ブランドは維持するという。両社はこれまでも軽自動車で提携しており、今後は、アジアなど海外市場の開拓でも連携を図る。

だが、三菱自に対する不信感が収まるどころか拡大している点を日産側も深刻に受け止めるべきである。

国土交通省への報告では、偽装が判明した軽4車種に加え、スポーツ用多目的車など9車種でも不正の疑いがあったという。定められた方法で試験すると排ガス性能が低下する車両もあり、早急な対策が急務である。

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