日露首脳会談 「新アプローチ」で打開可能か

朝日新聞 2016年05月08日

日ロ首脳会談 守るべき原則を大切に

ロシア南部のソチを訪ねた安倍首相がプーチン大統領と会談し、北方領土問題や平和条約の締結問題について「新たな発想に基づくアプローチで交渉を進める」ことで一致した。

会談後、首相は「2人で未来志向の日ロ関係を構築していく中で解決していこうという考えで一致した」と語った。9月に首相がウラジオストクを訪問するなど、年内に首脳会談を重ねていく方針も確認した。

戦後70年を過ぎてなお、平和条約が結べないのが日ロの現実である。領土問題を解決し、平和条約を結ぶ糸口をつかもうとする首相の姿勢は理解できる。

中国の軍拡や北朝鮮の核・ミサイルによる挑発に向き合い、北東アジアに安定した秩序をつくるためにも、日ロの首脳同士が対話を重ね、関係改善を図ることには意味がある。

ただ、守るべき原則を忘れてはならない。領土問題などでの「力による現状変更」を許すことはできない。この普遍的な理念をともにする米欧などと緊密に連携してこそ、ロシアとの対話も成果をあげられる。

その意味で首相がプーチン氏に対し、ウクライナ問題に関して、ウクライナ政府と親ロシア派との停戦を決めた「ミンスク合意」の完全履行を求めたのは当然のことだ。

一方で、首相はエネルギー開発や極東地方の振興策など8項目の協力プランを提案した。

ロシアはウクライナ問題で国際的な地位が低下し、国内経済は低迷が続く。アジア2位の経済力をもつ日本をひきつけることで、国際社会の足並みを乱す思惑もうかがえる。

米欧や日本がロシアに経済制裁を科し、国際秩序への復帰を迫るなか、日本の協力プランが何をめざし、守るべき外交の原則とどう整合するのか。日本が議長国を務める今月下旬のG7首脳会議(伊勢志摩サミット)などを通じ、首相は国際社会に説明する必要がある。

何より首相に説明を求めたいのは「新たなアプローチ」が何を意味するのかだ。

日本政府は、これが具体的に何を指すかについて明らかにしていない。政府高官は、四島の帰属問題を解決して平和条約を締結するという従来の外交方針は「まったく変わっていない」としているが、ならばいったい何が新しいのか。

領土問題の解決には妥協も必要だろうが、国民の理解と支持がなければ禍根を残しかねない。基本的な考え方について、できる限り国民に説明し、理解を広げる努力をすべきだ。

読売新聞 2016年05月08日

日露首脳会談 「新アプローチ」で打開可能か

長年、膠着こうちゃく状態が続く領土問題を打開する一歩となるのだろうか。

安倍首相がロシア南部のソチで、プーチン大統領と会談した。北方領土問題について、「新たな発想に基づくアプローチ」で交渉を精力的に進めることで合意した。

首相は会談後、「停滞を打破し、突破口を開く手応えを得ることができた」と記者団に語った。

新たなアプローチの詳細は不明だが、「2国間だけでなく、グローバルな視点を考慮し、未来志向で交渉する」考え方とされる。

国家主権に関わる領土問題は本来、日露双方とも簡単に譲歩できない。より大きな視野を持ち、安全保障、経済など様々な分野で協力を深める中で、歩み寄りを模索することは、理解できる。

会談では、首相が9月にウラジオストクを訪問し、プーチン氏と再会談することで一致した。その後のプーチン氏の来日時期に関しては、さらに検討するという。

首相がロシアを何度も連続して訪れるのは異例である。領土問題に対する強い熱意がにじむ。

最高権力者のプーチン氏に政治決断を迫らなくては、問題は解決しない、と考えているのだろう。国際会議の機会を含め、会談を重ねること自体は重要である。

安倍首相は今回、エネルギー開発、ロシア極東のインフラ整備など8項目の協力計画を示した。

原油・ルーブル安などでロシア経済は低迷が続く。プーチン氏は日本の投資や技術協力、極東開発を優先課題に掲げている。首相には、領土問題を動かす呼び水にしたい、との思惑があろう。

無論、経済協力だけで、直ちに領土問題が進展することはない。むしろ、ロシアが中国との対抗上、日本との関係強化に本腰を入れる状況を作り出せるかどうかが、一つのカギではないか。

中国が極東に多数の企業を進出させ、軍事面でも存在感を高めていることに、プーチン氏は警戒感を強めているとされる。

プーチン氏は会談で、日露安保協力に期待を示した。日本も、中国や北朝鮮を牽制けんせいするため、協力を進める意義は小さくない。

ウクライナ、シリア情勢を巡って、首相がプーチン氏に対し、両国内の停戦維持に影響力を行使し、建設的な役割を果たすよう求めたのは適切である。

首相は26、27日の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で、先進7か国(G7)の足並みを乱さずに、日露関係を前進させる方針を丁寧に説明することが大切だ。

産経新聞 2016年05月08日

北方領土交渉 「新発想」でも原則堅持を

安倍晋三首相はロシアのプーチン大統領と会談し、北方領土問題の解決に向けて、従来のアプローチとは違う「新たな発想」に基づいて交渉することで一致した。

一方で日本政府は、北方四島の帰属を確認する立場に変わりはないと強調している。

当然だ。北方領土は先の大戦の終結前後に、ソ連が当時有効だった日ソ中立条約を破り、武力で不法占拠したものだ。4島返還を求める姿勢を崩すことは、主権の放棄にほかならない。

両首脳は3年前、「双方が受け入れ可能な解決策」を探ることで合意したが、領土問題でそうした解決策が見いだせるか。4島返還の基本方針を踏み外す「新発想」は論外である。

安倍首相はまた、会談で「相手の国民感情を傷つける行動や発言は控えるべきだ」と注文した。昨年8月にメドベージェフ首相が北方領土の択捉島に上陸したことなどを指すものだ。今後のロシア側の対応を慎重に注視すべきだ。

プーチン氏は日露関係の深化には「経済が最も重要だ」と述べ、日本側は極東地域の産業振興やエネルギー開発など8項目の経済協力案を示した。しかし、ロシアが領土交渉の進展をちらつかせる際には、必ず経済的実利を狙ってきた歴史を忘れてはならない。

現在のロシアは、ウクライナ南部クリミア半島を一方的に併合して日本や欧米から制裁を受け、投資や最先端技術を欲している。クリミアの併合は「力による現状変更」であり、北方領土と同根の暴挙である。対露の経済協力には慎重であるべきだ。

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