G7と世界経済 足並みそろえ低迷打開を

読売新聞 2016年05月07日

首相欧州歴訪 経済政策の協調をどう進める

世界経済を牽引けんいんするには、先進7か国(G7)が政策協調を強める必要がある。議長国の日本の調整力が試されよう。

安倍首相が欧州5か国を歴訪した。26、27両日の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に向けた意見交換が目的である。

安倍首相は各首脳との会談で、「構造改革の加速化に合わせて機動的な財政出動が求められる」と強調した。G7が、積極的な財政政策を含む「力強いメッセージ」を発信する必要性も指摘した。

オランド仏大統領、レンツィ伊首相とはおおむね認識を共有した。

メルケル独首相は、自国の財政出動について慎重姿勢を示し、協議を続けることになった。キャメロン英首相も、各国の事情を考慮すべきだと主張した。

財政規律を重視する独英との溝が埋められたとは言い難い。

世界経済は、新興国の減速や原油安などで、不透明感を増している。利害が複雑に絡み合う主要20か国・地域(G20)が実効性ある合意をまとめにくい中、価値観を共有するG7の役割は重要だ。

サミットで経済政策の明確な方向性を打ち出せるよう、日本は各国との調整を急ぐべきだろう。

大切なのは、日本が経済政策アベノミクスを強化することだ。

民間主導の経済成長の実現へ、医療や農業分野などの規制改革や市場開放を着実に進めてこそ、日本の主張が説得力を持とう。

安倍首相は記者団に対し、サミットの議論などを踏まえて、2017年4月に予定通り消費税率を10%に引き上げるかどうかを判断する考えを示した。

増税延期の是非については、経済動向に加え、財政再建への影響や代替財源の確保などを多角的かつ慎重に考慮する必要がある。

一連の首脳会談では、サミットでテロ対策の具体的な行動計画を策定する方針を確認した。

昨年11月のパリ、今年3月のベルギーの同時テロは、欧州で育ち、過激思想に染まったテロリストの凶行とされる。未然防止には、各国の緊密な連携が欠かせない。

犯罪者関連情報の共有や出入国管理の厳格化などについて、効果的な対策を打ち出すべきだ。

安倍首相は、各国首脳に対し、中国による東・南シナ海での「一方的な現状変更」への深刻な懸念を伝え、一定の理解を得た。

「航行の自由」を守り、海上交通路の安全を確保することは、国際社会共通の利益だ。中国に自制を粘り強く促すため、G7の連帯を一段と深めたい。

産経新聞 2016年05月07日

G7と世界経済 足並みそろえ低迷打開を

主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の議長を務める安倍晋三首相が欧州歴訪で、世界経済を下支えする政策協調を各国首脳に働きかけた。

中国などの新興国で顕著な景気減速が生じ、世界にとってのリスクとなっている。先進7カ国(G7)の連携は欠かせない状況にある。

協調行動を訴える安倍首相の認識は妥当なものだが、問題は各国が重視している政策が異なることにある。一連の首脳会談でも、財政政策などで歩調を合わせる難しさが鮮明になった。

サミット本番でG7の足並みが乱れれば、経済の混迷は深まりかねない。今回の歴訪を糧に、首相はさらなる指導力の発揮に努めてほしい。

国際通貨基金(IMF)が世界の成長率予測を下方修正するなど景気低迷が長引く懸念が高まっている。20カ国・地域(G20)は金融、財政政策や構造改革を総動員することを再確認した。

G7は本来、この履行に向けて結束を強めるべきだが、現状ではむしろ、不協和音ばかり目立つのが気がかりである。

典型的なのが財政政策だ。首相は機動的な財政出動の重要性を訴え、フランスやイタリアとは認識を共有できたという。しかし、財政規律を重視するメルケル独首相は慎重姿勢を崩さず、サミットに議論を持ち越した。

ほかならぬ日本が、財政政策を具体的にどう強化したいのか明確でないこともわかりにくい。

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