日中外相会談 関係停滞の主因は習政権では

朝日新聞 2016年05月01日

日中外相会談 対話を軌道にのせよう

改善に向かうのかどうか、なかなか方向感が定まらない。それが今の日中関係である。

岸田外相がきのう、北京で中国の王毅(ワンイー)外相と会談した。国際会議を除けば、日本の外相の訪中は実に4年半ぶりだった。

隣国の政府間の往来と対話がこんな乏しさでは、堅牢な互恵関係がいつ実現するのか、両国民も期待するのは難しい。

今年は9月に杭州で主要20カ国・地域(G20)首脳会議があり、安倍首相が訪中する。日中韓による首脳会談の年内の日本開催も予定されている。

日中両政府は地域と世界での責任を自覚し、対話を軌道にのせ、しっかり安定したものにしてもらいたい。

両国間には、以前と変わらぬ懸案がある。歴史認識問題と、東シナ海の尖閣諸島と資源開発をめぐる摩擦だ。解決の難しい両問題の表面化を最近は抑えてきたが、新たに前面に出てきたのが南シナ海問題である。

中国の一方的な岩礁埋め立てを批判する米国やフィリピンなどと、日本は自衛隊の活動を含めた連携を強めている。

広島で4月にあった主要7カ国(G7)外相会合では、日本は海洋安保に関する声明をまとめ、大規模な埋め立てや軍事利用の自制を求めた。

これに対し中国側は、日米ともに南シナ海問題の当事者ではない、と反発している。王外相は、とくに日本に対し「関係を改善したいという一方で、様々な場面で中国に難癖をつけている」と非難を強めてきた。

だが外交はしばしば、協力と対立が同居するものだ。問われるのは、対立点よりも一致点の価値を高め、互いに利益を広げようとする知恵と工夫である。

今の両政府間にはその十分な努力の跡がみられない。逆に、少ない対立点が関係全般に悪影響を及ぼしている。今年1月の北朝鮮の核実験後、外相間の電話会談を2カ月以上、中国側が拒んだのは子供じみている。

南シナ海は世界屈指の海上交通路であり、日本と周辺国が関心をもつのは当然だ。相手の行動に不満があるからといって対話を滞らせるようでは、責任ある大国の態度とは言えない。

日中両政府はもう一度、一昨年の首脳会談で確認した「戦略的互恵関係の進展」の目標に立ち返ることが求められる。

ハイレベル経済対話の開催と、防衛当局間の海空連絡メカニズムの実現を急ぐべきだ。安保上の対立を防ぐ交渉を進めつつ、経済、環境といった喫緊の課題で協力の成果を積みあげてゆく工夫を紡いでほしい。

読売新聞 2016年05月01日

日中外相会談 関係停滞の主因は習政権では

日中関係を改善する一歩となるのだろうか。

岸田外相が中国を訪問し、王毅外相と会談した。両国が「協力のパートナー」であることを確認し、両国関係の前進に向けて双方が努力することで一致した。

国際会議出席以外で、日本の外相が訪中したのは4年半ぶりだ。会談は、昼食会も含め、計約4時間20分にも及んだ。長く途絶えていた本格的な政治対話を再開し、様々な議題について率直に意見交換したこと自体は評価できる。

岸田氏は李克強首相とも会談した。李氏は、日中関係について「もう一度、正常な軌道に戻れるように、共に取り組むことを望んでいる」と語った。

日本は今年後半、日中韓3か国の首脳・外相会談を主催したい考えだ。慰安婦問題の合意で日韓関係は改善したが、中国の習近平政権は開催に消極的とされる。

昨年11月に早期開催で合意した閣僚級の日中ハイレベル経済対話とともに、両国で日程調整を着実に進める必要がある。

疑問なのは、王氏が日中関係に関して「絶えずギクシャクし、たびたび谷間に陥ったが、原因は日本側が一番よく分かっているのではないか」と述べたことだ。関係停滞の責任が一方的に日本側にあるかのような主張である。

日米など先進7か国(G7)が4月の外相会合で、名指しは避けつつ、中国の南シナ海での軍事拠点作りに反対する声明を発表したことも念頭にあるようだ。

しかし、国際法を無視した人工島造成を強行し、関係国との緊張を作り出しているのは、中国の方だ。王氏の発言は筋が違う。

王氏は「『中国脅威論』と『中国経済衰退論』をまき散らすべきではない」とも語った。非生産的な中傷と言うほかない。

岸田氏は、東・南シナ海での中国の行動に懸念を伝えた。日本は今後も、中国に対し、独善的な海洋進出の自制や国際法の順守を粘り強く求めることが重要だ。

日中両国は、世界の平和と繁栄を牽引けんいんすべき立場にある。意見対立があっても、「戦略的互恵」の大局に立ち、建設的な関係を構築せねばならない。

弾道ミサイル発射など軍事挑発を続ける北朝鮮について、両外相は「深刻な懸念」を表明した。国連安全保障理事会の制裁決議を厳格に履行する方針も確認した。

北朝鮮への圧力を強めるには、中国の対応がカギを握る。日本は米韓両国と緊密に連携し、中国に前向きな対応を促すべきだ。

産経新聞 2016年05月01日

日中関係 改善妨げるのはどちらだ

2国間訪問としての日本の外相の訪中は、4年半ぶりだという。この機会に4時間余をかけ、両国外相が率直に協議した意義は小さくない。

だが、日本や国際社会が中国に抱いている懸念の解消に、どれだけの効果があっただろう。

印象付けられたのは、外相会談の冒頭、王毅外相が関係停滞の原因を一方的に日本に押しつけた場面だ。

中国は軍事力を背景に一方的な海洋進出を続け、関係国に脅威を与えている。それにほおかむりしたまま「歴史を直視し」などと日本に注文をつける。説教強盗のような態度は、真の関係改善の道を広げるものにはなりえない。

中国が南シナ海の軍事拠点化を進めていることに対し、日本は米国や東南アジアの周辺国などと連携し、反対の声を上げている。南シナ海は世界の重要な海上交通路(シーレーン)であり、軍事拠点化は国際社会全体にとっての脅威でもあるからだ。

それについて、中国は「邪魔立てするな」と再三、不満を表明していた。日本の余計な口出しが関係悪化を招いている、とでも言いたいのだろうか。

停滞の真の原因は、南シナ海問題にとどまらない。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/2491/