なぜ四半世紀もの間、不正がまかり通ったのか。
燃費試験データの偽装が発覚した三菱自動車問題への疑念と怒りは、国土交通省への追加報告を経ても膨らむばかりだ。
まずは三菱自動車である。
端緒となった軽自動車では、データを実測していたのが一部にとどまり、残りは机上の計算による架空のデータを使っていたことが新たにわかった。
軽自動車以外でも、国が1991年に定めた試験方法とは異なる測定手法を当初から使っていたことが判明した。07年に社内で法定の方法を使うと決めたが、その後も改まらなかったという。
相川哲郎社長は「会社の存続に関わる事案だ」と認めた。法令順守という基本を欠けば企業経営は成り立たない。当然の発言だが、経営面でも厳しさを増している。
新車の販売店では三菱自動車離れが進む。購入者には、部分的な補償にとどまらず、車の買い戻しを求める声がくすぶる。
三菱自の提携相手で、データを巡る矛盾を最初に指摘した日産自動車は、三菱自からの軽自動車の供給が止まったことで補償請求を検討中だ。
軽自動車はエコカー減税の対象だ。関連する税金を所管する総務省は、燃費試験のやり直しで減税の適用区分が変わった場合、適正額との差額を三菱自に支払わせる検討を始めた。
しかし、まずは実態の徹底解明である。不正な試験方法を使った車種や台数の全体像について、三菱自は「調査中」としている。軽自動車を巡り、短期間に5度も燃費に関する開発目標を引き上げたことが不正に影響したのか。三菱自は、社外の弁護士に委嘱した特別調査委員会の指示に従って、調べを尽くさねばならない。
三菱自の不正を見抜けなかった国交省は、試験方法を抜本的に見直す必要がある。
試験は所管する外郭団体が担当しているが、基礎データはメーカーからの提供分をそのまま使う仕組みだ。「性善説」にたつ検査体制に構造的な欠陥があったと言わざるをえない。
メーカーのデータ測定時に国の検査員が立ち会うなど既に改善案が出ている。独フォルクスワーゲンの排ガス規制逃れでは、自動車のエンジニアらでつくるNPOと大学が独自の走行試験をしたことが発覚のきっかけとなった。第三者の目を生かすことも検討課題だろう。
官民ともに大きな課題に直面している。関係者はそのことを自覚してほしい。
この記事へのコメントはありません。