普天間検討委 国益損なわぬ打開策示せ

毎日新聞 2010年03月09日

「普天間」移設 疑問多いシュワブ陸上案

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題で、社民党と国民新党が政府・与党の沖縄基地問題検討委員会(委員長・平野博文官房長官)にそれぞれ移設先案を提示した。

社民党が「グアムなど国外」「グアムを拠点に移し訓練の国内暫定受け入れ」「県外の国内施設への暫定移設」の3種類、国民新党は期限付きで「米軍キャンプ・シュワブ(沖縄県名護市など)陸上部」「嘉手納米空軍基地(同県嘉手納町など)への統合」の2案である。社民党が国外中心、国民新党は県内移設だ。

鳩山由紀夫首相が明言する「5月末までの決着」に、残された時間は少ない。一方で、米政府と、国内移設なら移設先自治体との調整が欠かせないが、両者が合意する案を選定するのは容易でない。

そんな中で、政府内で急浮上したのが、国民新党案の一つ「キャンプ・シュワブ陸上部」である。首相官邸や外務、防衛両省には「県外・国外」移設は困難との考えが強い。シュワブ陸上案は、県内移設であっても基地内の飛行場建設であるため反対派の活動に影響されにくい、という読みがあるのだろう。しかし、同案には疑問がある。

そもそも鳩山首相は、昨年の衆院選で「国外、少なくとも県外移設」を目指すと明言した。その後、政府は「ゼロベースの検討」を表明し、現在に至る。ところが、首相、平野氏や民主党が県外移設を真剣に検討してきた跡は見あたらない。

その間、沖縄の情勢は大きく変わった。受け入れの是非をめぐり13年間にわたって翻弄(ほんろう)されてきた名護市の市長選で、受け入れ反対の候補が勝利したばかりである。市長は8日、初の施政方針演説で改めて移設拒否を表明し、市議会も一致して陸上案反対の意見書を採択した。沖縄県議会も先月、県内移設反対の意見書を全会一致で採択している。

普天間問題の過去の経緯は、移設先地元の合意なしに基地を建設することの難しさを教えている。「県外」の本格的検討もなく、外交・安全保障は国の権限であるという原則論でシュワブ陸上案を押し切るとすれば、沖縄県民には不誠実な対応と映るのは間違いない。

また、陸上案では、現在の普天間の周辺住民への危険性と騒音被害をそのまま名護市辺野古地区に移すことになり、日米合意のキャンプ・シュワブ沿岸部移設よりも住民の生活環境は悪くなる、との意見がある。キャンプ・シュワブ内に飛行場を造るには山の掘削が必要となり、環境改変や海域の赤土汚染も指摘されている。かつて陸上案が否定された有力な根拠である。

疑問にどう答えるのか。沖縄の同意が得られるのか。筋道が見えない。

産経新聞 2010年03月09日

普天間検討委 国益損なわぬ打開策示せ

鳩山由紀夫首相は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題の打開策を一日も早くとりまとめ、日本の国益を損なわぬよう決断を下すべきときである。

8日に開かれた政府・与党の検討委員会では、社民党と国民新党からそれぞれの独自案が提示された。しかし政府は、国民新党案にもある米軍キャンプ・シュワブ(名護市)陸上案にしぼって検討を進めるのか、日米合意に基づくキャンプ・シュワブ沿岸部移設案の余地を残しておくかなど、根幹にかかわる方針を明示していない。

これらの複数案を抱えたまま、米側との交渉が進展するとは思えないが、もはや、あいまいな方針で臨むような状況ではなくなっている。中国の軍事力強大化などを踏まえ、日米同盟関係が大きく揺らぐことは国民の平和と安全を守れない事態に陥りかねない。こうした状況を回避するため、与野党は党派を超えた協力を行わなければならない。

与党内でも調整は困難さを増している。国民新党が示した米軍キャンプ・シュワブ陸上案と米軍嘉手納基地への統合案は、いずれも自民党政権時代に検証し、除外された経緯がある。日米合意に基づいて、キャンプ・シュワブ沿岸部に移設する現行計画を最良としている米政府が、これらを受け入れるかどうかは不透明だ。

社民党案は米領グアムなど国外への全面移設を求めるものだ。海兵隊の地上部隊とヘリ部隊が離れて有事の際の即応性が失われることが指摘されている。訓練移転先を沖縄県外の国内に求める案も調整は難航必至だ。

首相は移設問題を5月末までに決着させることに対し「覚悟を持って臨む」と語った。この覚悟で政府・与党だけでなく沖縄県を説得することが求められている。

この問題で、自民党は「解決できなければ当然、退陣に値する」(大島理森幹事長)と、首相の責任を追及する構えをとっている。しかし、安全保障政策を政争の具にすることは、長年、政権を担当した政党のとるべき態度ではないだろう。

2月の沖縄県議会では、普天間飛行場の県外・国外移設を求める意見書が全会一致で可決された。自民党会派も賛成に回ったということだが、これでは同盟維持のために責任ある安全保障政策を貫いているとは言い難い。

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