2020年東京五輪・パラリンピックの新たなエンブレムが、ようやく決まった。
大会組織委員会は新エンブレムを効果的に活用し、五輪・パラリンピックの機運を盛り上げてほしい。
「組市松紋」と名付けられた新エンブレムは、江戸古来の市松模様をベースにしている。伝統の藍色の四角形を巧みに組み合わせた。国や文化の違いを超えてつながり合うことを表現している。
最終候補に残った他の3案は、カラフルな作品だった。それに比べると、非常にシンプルだ。制作したデザイナーの野老朝雄さんは「夏の大会なので涼しげなものにした」と、狙いを語った。
粋なデザインが、海外でも受け入れられれば、日本のイメージアップにつながるだろう。
盗用疑惑が持ち上がり、白紙撤回された旧エンブレムを巡っては、密室での選考が批判された。組織委の審査担当者が得票数を操作していた不祥事も判明した。
大会のスポンサー企業が、テレビCMやポスターからエンブレムを外すなど、白紙撤回の影響は多岐に及んだ。一連の騒動が、五輪ムードに水を差し、大会計画全体に対する国民の信頼を損なったことは間違いない。
インターネットの普及により、類似のデザインを見つけることが、以前より容易になった。独自のデザインを選定する難しさは、格段に増している。
組織委は今回、選考方法を大きく変更した。実績のあるデザイナーを優遇したコンペ形式を改め、広く国民から公募した結果、1万4599点の応募があった。
透明性を確保しようと、一部の審査の模様はインターネットで公開した。最終候補4点は、商標のチェックを実施したうえで公表し、意見を募った。
旧エンブレムのような問題があれば、最終決定の前に表面化させて、トラブルの芽を摘もうとしたのだろう。大きな混乱もなく、新エンブレムが選出され、概して好意的に受け止められているのは、何よりである。
組織委にとって、エンブレムは大きな収入源だ。それだけに、管理や活用の面で重い責任を負っていることを忘れてはならない。
官民の寄り合い所帯の組織委は、危機管理能力を欠いているといった指摘がある。膨張が避けられないとされる五輪の運営費の圧縮など、難題は山積している。
気を引き締めて、五輪準備を進めてもらいたい。
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