「豪潜水艦」落選 豪政府、中国配慮で「日本外し」と受け止められるようでは困る

読売新聞 2016年04月28日

豪潜水艦に落選 装備輸出の司令塔作りを急げ

失敗の原因をきちんと検証し、防衛装備品を輸出する政府の態勢を立て直すことが肝要だ。

豪州が、日独仏3か国が参画を目指した次期潜水艦計画で、フランス企業との共同開発を選択した。

日本は、防衛装備移転3原則に基づき、三菱重工業などが建造する海上自衛隊の最新鋭潜水艦「そうりゅう型」を官民合同で提案したが、受注を逃した。

そうりゅう型の技術は世界最高水準とされる。航続性能や、敵に気づかれずに潜行する静粛性、水中音波探知機能などに優れる。

12隻で総事業費約500億豪ドル(4兆3000億円)の大型案件で、実現すれば、日本初の本格的な装備品輸出となった。安倍首相は「残念な結果だ」と語った。

中谷防衛相が、豪州に選定理由の説明を求め、今後の教訓とする考えを示したのは当然である。

ターンブル豪首相は、「フランスの提案が、豪州特有の要求に最も合致した」と述べた。

豪州で景気の減速により雇用不安が広がる中、フランスは全面的な技術移転や、豪州企業の育成、積極的な雇用を訴えていた。

ターンブル氏は近く議会を解散する意向で、選挙をにらんだ経済重視の判断もあったのだろう。

だが、本来、潜水艦建造は軍事の観点が重要だ。政局を優先したのなら、うなずけない。

日本も、自らの技術の高さを過信し、現地生産の割合を低く抑えたまま、豪州のニーズや仏独の動きを的確に把握せず、柔軟に対策を講じなかったのは否めない。三菱重工業などに装備品輸出交渉の経験が乏しかったためだろう。

内閣官房の国家安全保障局などに、安全保障に加え、ビジネスや各国の内政事情などを総合的に分析・判断する枠組みと、その司令塔を構築することが急務だ。

経済産業省などの経済官庁や、民間企業からも人材を集める必要がある。成長戦略の視点を持つことも欠かせない。

無論、第三国への技術流出防止策は徹底すべきだ。今回、海自などに豪州への技術供与に慎重論があったことは理解できる。

気がかりなのは、中国が今回、日本案の不採用を豪州に働きかけていたとされることだ。豪州が中国に過剰に配慮し、日本案を退けたのであれば、見過ごせない。

アボット前首相は、日米豪の安保協力の重要性を認識していた。ターンブル政権は、アジア・太平洋地域の安定にどんな役割を果たすのか、説明せねばならない。

産経新聞 2016年04月28日

「豪潜水艦」落選 豪政府、中国配慮で「日本外し」と受け止められるようでは困る

オーストラリアが2030年代初めから運用する次世代潜水艦の共同開発相手がフランス政府系企業となり、日本の官民連合は受注を逃した。

潜水艦12隻の建造費が4兆3千億円に及ぶ巨額事業だ。通常動力型潜水艦では世界最高水準とされる「そうりゅう型」を売り込んだ日本の落選は残念である。

これにより、アジア・太平洋地域における日豪、日米豪の安全保障協力が後退する印象を持たれぬよう、安倍晋三政権は関係の維持、強化に努めるべきだ。

両国関係がぎくしゃくしかねない時期だからこそ、南シナ海などでの安保協力を前へ進めることが肝心である。

もともと安倍政権は、豪政府が日本の最新鋭潜水艦の船体を採用し、米国の兵器システムを積むことにより、日豪、日米豪の連携を強固にしたい考えだった。

現代海軍の主力艦ともいえる潜水艦の共同開発は、参加国の戦略的関係の強化に大きく貢献するからだ。

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