三菱自燃費不正 法令軽視体質が繰り返すウソ

朝日新聞 2016年04月22日

三菱自動車 教訓はどこへ行った

不祥事のたびに企業体質の抜本的な改善を誓ってきたのは、いったい何だったのか。

三菱自動車で、主力である軽自動車の燃費を実際よりよく見せようと、試験データを改ざんする不正が何年にもわたって行われていた。

2000年と04年には大規模なリコール隠しが発覚し、経営危機に陥って三菱グループの支援を仰いだ。にもかかわらず、それ以降もさまざまなほころびが生じている。過去の教訓が生かされず、法令順守の意識を欠いているというしかない。

同社は有識者委員会を設けて調査を進める。経営責任は免れないが、まずは不正の実態と原因の徹底解明である。

改ざんは、新車の性能を確かめる実験部門で行われた。目標とする数値が達成できなければ、開発・設計部門で対策を考えるのが当然の対応だろう。

なぜデータをごまかす方向へと走り、それを見抜けなかったのか。一部門の独断だったのか、経営陣からの圧力はなかったのか。

提携先の日産自動車からの指摘で不正の端緒を得たのは昨年11月だった。それを確認するのに5カ月を要したことにも不信が募る。立ち入り検査に踏み切った国土交通省は1週間で詳細に報告するよう求めたが、三菱自の経営陣はスピード感を忘れずに対応してほしい。

日産への供給分を含めた62万5千台のユーザーには謝罪と補償をするというが、問題は顧客への対応にとどまらない。

データ改ざんが行われた4車種はエコカー減税の対象だった。実際の燃費は公表値より5~10%低いと見られ、車種によっては減税の区分が変わる可能性もある。本来なら国や自治体に納められるはずの税収が得られなかったとすれば、国民全体への背信行為にも等しい。

4車種はすでに生産や登録を中止したが、軽自動車以外の試験でも国内で定められた方法とは異なるやり方をとっていたことが判明している。不正の対象が広がれば、部品メーカーや販売会社にも深刻な打撃となりかねない。

自動車業界では、エアバッグ大手、タカタの欠陥製品への対応の鈍さが問題になり、独フォルクスワーゲンは排ガス規制を逃れる偽装を施していた。

安全面や、燃費を含む環境対策は、いまや自動車業界の競争の主戦場だ。そこで不正が相次ぐようでは、業界全体への信頼が失われかねない。三菱自以外の各社にも、改めて経営のチェックを求めたい。

読売新聞 2016年04月22日

三菱自燃費不正 法令軽視体質が繰り返すウソ

三菱自動車が、軽自動車の燃費を実際より良く見せるため、データを不正に操作していたことが発覚した。

燃費の良しあしは、消費者が車を選ぶ際の重要な判断材料だ。これを偽るのは、極めて悪質な行為である。

走行時にタイヤなどにかかる抵抗の強さを意図的に低く見積もる方法で、燃費を5~10%良く見せかけていた。

対象は、2013年から販売している「eKワゴン」と、日産自動車向けに生産する「デイズ」など4車種で、計62万5000台に上る。三菱自と日産は4車種の生産、販売を中止した。

三菱自は00~04年にも、大規模なリコール(回収・無償修理)隠しなどの問題が発覚し、元社長らが有罪判決を受けている。

その後、三菱グループの支援で経営危機を乗り切ったが、法令順守を軽視する企業体質は、変わらなかったと言わざるを得ない。

今回のデータ不正について三菱自は、当時の担当部長が主導し、昨年秋に提携先の日産から指摘されるまで分からなかったと説明する。社内のチェック体制が全く機能していなかったことになる。

これほど重大な不祥事なのに、4月13日まで経営トップの相川哲郎社長には報告すらなかったという。ガバナンス(企業統治)の欠如は明らかだ。

自動車の性能に関する国土交通省の型式指定制度は、メーカーから正確なデータが提出されることを前提にして、手続きの簡素化が進められてきた。こうした規制緩和の流れを利用し、不正を働いたことは看過できない。

対象車種の販売には、「エコカー減税」が適用された例もあるが、一部は対象外だった可能性が指摘される。税の軽減措置の悪用は、国民全体への背信行為だ。

三菱自の不正の背景には、「低燃費競争」の激化がある。軽自動車の国内販売シェア(占有率)は、30%を超えるスズキ、ダイハツの2強に対し、三菱自は3%と大きく水をあけられている。

経営陣から厳しい燃費目標の達成を迫られた開発部門の焦りが、不正を招いた面もあろう。

国交省は、道路運送車両法に基づいて、三菱自の開発拠点を立ち入り検査した。三菱自も、第三者委員会を設けて調査する。

不正は会社ぐるみではなかったのか。データ偽装が幅広く行われていたのではないか。こうした疑問にも真摯しんしに向き合わない限り、信頼回復はあり得ない。

産経新聞 2016年04月22日

三菱自の燃費偽装 嘘つき企業に未来あるか

三菱自動車が軽自動車の燃費データを偽装していたことが発覚した。

同社は過去に大規模なクレーム隠し事件を引き起こすなどで経営不振に陥り、三菱グループの支援を受けての再建途上だった。残念ながら事件の反省は、全く生かされなかったことになる。

今回のデータ偽装は、提携先の日産自動車による指摘でみつかった。それがなければ、偽装は隠蔽(いんぺい)されたままだった可能性が高い。三菱自は一連のクレーム隠しを受けて社内の法令順守体制を強化したというが、自浄作用がどれだけ働いたのか。経営に深刻な打撃を与えることは避けられず、嘘をつく企業が生き残ることはできまい。

燃費性能はエコカー減税の適否を決定する重要な指標だが、メーカーの自主データをもとに検査されている。検査のあり方も見直さざるを得ないだろう。

燃費データの偽装がみつかったのは三菱自が生産する軽4車種の62万5千台で、5~10%ほど燃費性能を水増ししていたという。日産向けを含め該当車種の生産・販売を中止したのは当然である。

社内調査に対し、担当部署の元部長は「不正を指示した」と話しているという。会社ぐるみの意図的偽装が強く疑われる。

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