三菱自動車が、軽自動車の燃費を実際より良く見せるため、データを不正に操作していたことが発覚した。
燃費の良しあしは、消費者が車を選ぶ際の重要な判断材料だ。これを偽るのは、極めて悪質な行為である。
走行時にタイヤなどにかかる抵抗の強さを意図的に低く見積もる方法で、燃費を5~10%良く見せかけていた。
対象は、2013年から販売している「eKワゴン」と、日産自動車向けに生産する「デイズ」など4車種で、計62万5000台に上る。三菱自と日産は4車種の生産、販売を中止した。
三菱自は00~04年にも、大規模なリコール(回収・無償修理)隠しなどの問題が発覚し、元社長らが有罪判決を受けている。
その後、三菱グループの支援で経営危機を乗り切ったが、法令順守を軽視する企業体質は、変わらなかったと言わざるを得ない。
今回のデータ不正について三菱自は、当時の担当部長が主導し、昨年秋に提携先の日産から指摘されるまで分からなかったと説明する。社内のチェック体制が全く機能していなかったことになる。
これほど重大な不祥事なのに、4月13日まで経営トップの相川哲郎社長には報告すらなかったという。ガバナンス(企業統治)の欠如は明らかだ。
自動車の性能に関する国土交通省の型式指定制度は、メーカーから正確なデータが提出されることを前提にして、手続きの簡素化が進められてきた。こうした規制緩和の流れを利用し、不正を働いたことは看過できない。
対象車種の販売には、「エコカー減税」が適用された例もあるが、一部は対象外だった可能性が指摘される。税の軽減措置の悪用は、国民全体への背信行為だ。
三菱自の不正の背景には、「低燃費競争」の激化がある。軽自動車の国内販売シェア(占有率)は、30%を超えるスズキ、ダイハツの2強に対し、三菱自は3%と大きく水をあけられている。
経営陣から厳しい燃費目標の達成を迫られた開発部門の焦りが、不正を招いた面もあろう。
国交省は、道路運送車両法に基づいて、三菱自の開発拠点を立ち入り検査した。三菱自も、第三者委員会を設けて調査する。
不正は会社ぐるみではなかったのか。データ偽装が幅広く行われていたのではないか。こうした疑問にも真摯に向き合わない限り、信頼回復はあり得ない。
この記事へのコメントはありません。