奨学金制度 格差是正へ改善急げ

朝日新聞 2016年04月15日

奨学金制度 格差是正へ改善急げ

「18歳選挙権」が始まる今夏の参院選に向けたアドバルーンで終わらせてはならない。

大学生らを対象にした、返済の要らない「給付型奨学金」の仕組みをつくろうという動きが与野党で相次いでいる。

共産、民進党などが打ち出し、自民、公明党も安倍首相に提言を渡した。政府も、5月にまとめる「1億総活躍プラン」に支援策を盛り込む方向だ。

ぜひ実現へ向けて知恵を絞ってほしい。

奨学金はいまや2人に1人の学生が借りている。授業料が増え、親も収入が減ったせいだ。

奨学金は出身による格差を改善し、教育の機会均等を実現するためにある。返す必要のない給付型はあって当然のものだ。

だが日本の場合、国の奨学金制度は貸与型しかない。先進国の中では異例だ。

特に、借りた額に利子を払うものが人数枠の6割を超える。これでは奨学金とは名ばかりの「学生ローン」にすぎない。

返済を延滞する人は2014年度末で約33万人に上る。年功賃金と終身雇用の日本型システムが崩れ、非正規労働が広がっていることが背景にある。

未来を広げるはずの奨学金が逆に追い詰める結果になっている。これでは家庭が豊かではない子どもが「返す自信がない」と進学をあきらめかねない。

無利子の枠を増やすとともに給付型の検討を急ぐべきだ。

給付型実現への壁になるのは財源だ。対象となる学生の範囲や給付内容だけでなく、財源の確保についても、各党は具体案を明らかにしてほしい。

検討すべきは、給付型だけではない。卒業後の収入に応じて毎月返す額を決める「所得連動返還型」の奨学金制度もだ。文科省の有識者会議が先月、一次まとめを公表している。

決まった額を返さねばならない仕組みは、低所得の人にとって厳しい。それだけに、新しい制度が期待されていた。

だが今回は、収入がゼロでも、猶予期間から外れると月2千円払わねばならないなど課題を抱えている。よりよい仕組みにするために議論が必要だ。

学びを支える制度は何も大学の奨学金に限らない。

現在でも「幼児教育の段階的な無償化」や、経済的に苦しい家庭の小中学生が対象の「就学援助」、高校生向けの「奨学給付金」などの政策がある。

貧しさが世代間で連鎖し、格差が広がる事態は避けねばならない。幼児から大学生まで切れ目ない支援の仕組みをどう設計するか。検討を進めたい。

産経新聞 2016年04月18日

給付型奨学金 ばらまき排し勉学支えよ

大学生向けの国の奨学金制度をめぐる議論が活発化している。学問に専念するための制度本来の意義を忘れず、検討してもらいたい。

現行は卒業後に返済する貸与型だ。これに加えて返済不要の「給付型」を導入すべきだという要望が与野党にある。

文部科学省は検討チームを立ち上げ、5月にまとめる政府の「ニッポン1億総活躍プラン」に制度改善策を盛り込む方針だ。給付型も課題としている。

経済的理由で進学を断念する者のないようにする施策なら、入学時の親の所得状況のほか、就職後の年収によっては返済を義務付けるなど、きめ細かな制度設計が求められる。肝心の財源を含めた慎重な検討が必要である。

給付型の創設論議は、選挙権年齢が18歳以上に引き下げられる夏の参院選をにらんだ動きだという指摘もあるが、そのためのばらまきに陥ることは許されない。

国の奨学金は、日本学生支援機構を通じ、大学生、短大生らの約4割が利用している。学生生活調査などによると、学部生の「財布」は年平均で親の仕送り120万円、奨学金40万円、アルバイト30万円などだ。仕送りが減り、奨学金に頼る傾向がある。

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