「18歳選挙権」が始まる今夏の参院選に向けたアドバルーンで終わらせてはならない。
大学生らを対象にした、返済の要らない「給付型奨学金」の仕組みをつくろうという動きが与野党で相次いでいる。
共産、民進党などが打ち出し、自民、公明党も安倍首相に提言を渡した。政府も、5月にまとめる「1億総活躍プラン」に支援策を盛り込む方向だ。
ぜひ実現へ向けて知恵を絞ってほしい。
奨学金はいまや2人に1人の学生が借りている。授業料が増え、親も収入が減ったせいだ。
奨学金は出身による格差を改善し、教育の機会均等を実現するためにある。返す必要のない給付型はあって当然のものだ。
だが日本の場合、国の奨学金制度は貸与型しかない。先進国の中では異例だ。
特に、借りた額に利子を払うものが人数枠の6割を超える。これでは奨学金とは名ばかりの「学生ローン」にすぎない。
返済を延滞する人は2014年度末で約33万人に上る。年功賃金と終身雇用の日本型システムが崩れ、非正規労働が広がっていることが背景にある。
未来を広げるはずの奨学金が逆に追い詰める結果になっている。これでは家庭が豊かではない子どもが「返す自信がない」と進学をあきらめかねない。
無利子の枠を増やすとともに給付型の検討を急ぐべきだ。
給付型実現への壁になるのは財源だ。対象となる学生の範囲や給付内容だけでなく、財源の確保についても、各党は具体案を明らかにしてほしい。
検討すべきは、給付型だけではない。卒業後の収入に応じて毎月返す額を決める「所得連動返還型」の奨学金制度もだ。文科省の有識者会議が先月、一次まとめを公表している。
決まった額を返さねばならない仕組みは、低所得の人にとって厳しい。それだけに、新しい制度が期待されていた。
だが今回は、収入がゼロでも、猶予期間から外れると月2千円払わねばならないなど課題を抱えている。よりよい仕組みにするために議論が必要だ。
学びを支える制度は何も大学の奨学金に限らない。
現在でも「幼児教育の段階的な無償化」や、経済的に苦しい家庭の小中学生が対象の「就学援助」、高校生向けの「奨学給付金」などの政策がある。
貧しさが世代間で連鎖し、格差が広がる事態は避けねばならない。幼児から大学生まで切れ目ない支援の仕組みをどう設計するか。検討を進めたい。
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