保育園の「騒音」 子の声にほほえむ社会を

朝日新聞 2016年04月18日

保育園と住民 合意作りを丁寧に

千葉県市川市で今年度に開園予定だった保育園が、近隣住民の反対で取りやめになった。住民との調整が難航して開園が遅れる例はこれまでもあったが、計画が中止になるのは異例だ。

ほかに神奈川県茅ケ崎市や東京都調布市でも、同様に建設が取りやめになった。保育園の整備は急務だけに住民側が批判的に見られがちだが、経緯を見ると住民の声をしっかり聞かないまま計画が進み、対話が不十分だという問題点が浮かぶ。

市川市の場合、事業者が市に認可保育園整備の申請をしたのは昨年3月。近所の住民への説明が本格化したのは、着工直前の9月になってからだった。

建設予定地は住宅街で道幅も狭く、車が通る際は人が路肩に身を寄せる。地元から「危ないのでは」との声が上がったが、事業者は「市の許可はもらっている」との姿勢だったという。

地域からの要望を受けてようやく10月に説明会が開かれたが、すでに住民との対立は深まっていた。結局、話し合いは3回。「このままでは自分たちの声が届かないまま施設が作られると思い、反対した」。住民からはそんな声も聞かれる。

待機児童問題を受け各自治体は急ピッチで施設整備を進めている。適地が限られるなか、以前なら候補にならなかったような場所での計画が増えているとの指摘もある。より慎重な対応と十分な話し合いが求められるが、開園を急ぎすぎたきらいはなかったか。

1年近く話し合いを重ねて、地域と保育園が良好な関係を築いた例もある。市川市も今後、保育園整備の申請前に近隣住民に周知し、説明するよう手続きを改めるという。早い段階から住民と対話を重ね、計画に反映させれば、トラブルを減らすことができるのではないか。

自治体の役割も忘れてはなるまい。保育園整備は自治体が地域の保育ニーズを踏まえて進めており、補助金も出している。市町村にも自ら住民に説明を尽くし、理解を求める責任があるはずだ。事業者と住民に任せきりにせず、積極的に調整役を果たすことが必要ではないか。

トラブルになったケースや話し合いで解決できた事例などの情報を自治体間で共有すれば、今後の整備にも役立つだろう。

保育園は建ったら終わりではない。地域との良好な関係は、健やかな育ちの環境を子どもたちに用意するという観点からも欠かせない。

丁寧な説明と真摯(しんし)な話し合いで、地域に根ざした保育園の整備を進めてほしい。

産経新聞 2016年04月14日

保育園の「騒音」 子の声にほほえむ社会を

保育施設の子供の声が「騒がしい」などとして各地でトラブルが起きている。千葉県市川市では私立保育園が近隣住民の強い反対で開園中止に追い込まれた。

子供の声を「騒音」と感じ、排除する社会にはしたくない。そのために知恵を出し合いたい。

市川市のケースは、社会福祉法人が住宅街に0~5歳児を対象とした定員約100人の保育園開設を予定していた。

反対理由には、周辺の静かな住環境が乱されるといった声のほか、予定地前の道路が狭く車も通るため、送り迎えの際の危険性を指摘したものがあった。

市などが住民説明会を開き、園側が防音や送り迎え時の対策を取ることを説明していた。周辺住民には賛否があったが、結局、理解は得られなかった。千葉県内では今月開園予定だった別の保育園も近隣住民の反対で開園中止になったという。

子供の声がときに、騒がしいと感じることもあるだろう。できればよそにつくってほしいと思う気持ちも分からなくはない。

だが、保育園は「迷惑施設」なのだろうか。

各自治体が待機児童の対策で保育園の新増設に取り組むなか、トラブルは増加している。東京都が市区町村に聞いた調査では、平成20年度以降、住民から苦情を受けたことがある自治体は約7割にのぼった。

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