露外相発言 北方四島の帰属交渉「拒否しない」は日本引き込む詐術だ

朝日新聞 2016年04月19日

対ロシア外交 焦らず、広い視野で

ロシアとの対話は粘り強く重ねていく必要がある。それとともに、国際情勢をふまえた広い視野に立ち、対ロ外交に取り組むことも忘れてはならない。

安倍首相が5月の大型連休中にロシア南部のソチを訪問し、プーチン大統領と非公式首脳会談に臨むことになった。

その準備のために訪日したラブロフ外相と岸田外相が先週会談した。会談では、5月の首脳会談の後、早期に外務当局による平和条約締結交渉を行うことで合意したが、北方領土問題をめぐるラブロフ氏の強硬姿勢は変わらなかった。

北方領土問題を打開し、日ロ関係を長期的に安定させていくには対話が欠かせない。

大国化した中国や、核・ミサイルによる挑発を重ねる北朝鮮に向き合い、北東アジアの安定をはかるためにも、日ロの首脳がたびたび会い、信頼関係を築くことは重要だ。

一方で、日本には守るべき原則がある。ウクライナ危機でロシアが踏み込んだ「力による現状変更」は決して容認できない、ということだ。

安倍首相は、5月下旬のG7首脳会議(伊勢志摩サミット)で議長を務める。ウクライナ危機を契機にG8サミットから排除されたプーチン大統領としては、G7サミットに向けて、米欧と日本の足並みを乱そうとの思惑もうかがえる。

2月の日米電話首脳協議で、オバマ大統領は「時期を考えてほしい」と安倍氏の大型連休中のロシア訪問に注文をつけた。米欧がロシアの振る舞いに制裁を科し、国際秩序への復帰を迫るなか、日本がロシアに融和的な姿勢をとることに憂慮を示したものだ。

安倍首相は、在任中の北方領土問題の解決に強い意欲を示している。日本の政治指導者として、戦後70年を超えて動いていない懸案を打開したいと考えること自体は理解できる。

とはいえ、日本が北方領土問題でのロシアの歩み寄りを期待して、ロシアに必要以上に妥協的だと国際社会に受け取られることは得策とは言えない。

北方領土問題は重要だが、二国間の政治的な成果を焦ってはならない。

対ロ外交で肝要なのは、サミットを含むあらゆる場を通じて、ロシアに国際法の順守と国際秩序への復帰を促し続けること。そして、この普遍的な理念をともにする国際社会と協調していく姿勢を鮮明に示すこと。こうした努力こそ、北方領土に関する日本の主張にも説得力を持たせるはずだ。

読売新聞 2016年04月17日

日露外相会談 首脳往来の環境を整備したい

北方領土問題の進展には、ロシアと高いレベルの対話を粘り強く続けることが欠かせない。

岸田外相が、来日したロシアのラブロフ外相と会談し、5月上旬にロシア南部ソチで日露首脳会談を行う方向で準備を進めることで一致した。

岸田氏は共同記者会見で、北方領土問題について「双方に受け入れ可能な解決策を作成すべく、交渉に弾みを与える前向きな議論が行えた」と強調した。

ラブロフ氏は「対話を継続する用意がある」と応じた。昨年9月の外相会談後、領土問題を議題としたことさえ一方的に否定した硬直的な態度と比べれば、柔軟姿勢を示したと言えよう。

昨年秋以降は、議員交流や高官協議が続いており、日露外交の雰囲気自体は悪くない。

プーチン大統領も、「米国を中心とする圧力にもかかわらず、日本は(対露)関係を維持しようとしている」と記者団に述べ、安倍首相のソチ訪問を歓迎した。領土問題についても、「いつか妥協できる」と語っている。

無論、ロシアが領土問題で軟化していると見るのは早計だ。

ラブロフ氏は来日前、一部メディアに対し、1956年の日ソ共同宣言について「平和条約交渉で領土問題を検討するとは書かれていない」などと主張した。

4島の帰属問題の解決が条約締結の前提とした2001年のイルクーツク声明など、過去の合意に反しており、容認できない発言だ。声明はプーチン氏自身が署名したことも踏まえるべきである。

領土問題の解決には、両首脳の強い意志と決断が求められる。

2人の任期はいずれも18年までだ。安倍首相の訪露後、プーチン氏の来日を実現し、相互往来を重ねる中で、合意の糸口を探ることが重要である。その環境整備を着実かつ戦略的に進めたい。

留意すべきは先進7か国(G7)の足並みを乱さないことだ。

ウクライナ情勢を巡ってロシアと対立するオバマ米大統領は、2月の首相との電話会談で、首相の訪露に懸念を伝え、延期を求めた。首相は「ロシアとの平和条約も大事だ。ロシアとの対話を続けねばならない」と反論した。

首相は今月上旬、ウクライナのポロシェンコ大統領と会談し、経済支援の継続を約束した。

5月に主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)を控え、ウクライナ情勢の改善と日露関係の進展の両立を目指す日本の立場を説明し、米欧の理解を得る必要がある。

産経新聞 2016年04月18日

日露外相会談 これが「前向き」な議論か

訪日したロシアのラブロフ外相は岸田文雄外相と会談し、日本が「第二次大戦の結果」を確認しなければ北方領土問題は前進しないとの立場を改めて表明した。

先の大戦の結果、北方領土はロシア領になったとの暴論であり、断じて容認できない。

ソ連が大戦終結前後の混乱に乗じて中立条約を破り、日本固有の領土である北方四島を武力で不法占拠した。それが、歴史上の事実だ。

ラブロフ氏は会談後の記者会見で、北方領土問題について「中身を深く議論することはなかった」と言い放ち、一方、岸田氏は「今後の交渉に弾みを与える前向きな議論ができた」と述べた。

立場がこれほど異なるのに、なぜ前向きだったといえるのか。驚きを禁じえない。

両外相は、5月上旬の安倍晋三首相訪露とプーチン大統領との首脳会談の準備を進めることで一致したが、岸田氏の発言がそれへの配慮だとしたら、本末転倒だ。

ロシア側からは、歴史を歪曲(わいきょく)し領土問題を否定する発言や動きが相次いでいる。とくにラブロフ氏は北方領土と平和条約締結は別問題だと繰り返し主張してきた。

産経新聞 2016年04月18日

断じて容認できぬラブロフ露外相の暴論 岸田外相はなぜ「前向きな議論」と言えるのか?

訪日したロシアのラブロフ外相は岸田文雄外相と会談し、日本が「第二次大戦の結果」を確認しなければ北方領土問題は前進しないとの立場を改めて表明した。

先の大戦の結果、北方領土はロシア領になったとの暴論であり、断じて容認できない。

ソ連が大戦終結前後の混乱に乗じて中立条約を破り、日本固有の領土である北方四島を武力で不法占拠した。それが、歴史上の事実だ。

ラブロフ氏は会談後の記者会見で、北方領土問題について「中身を深く議論することはなかった」と言い放ち、一方、岸田氏は「今後の交渉に弾みを与える前向きな議論ができた」と述べた。

立場がこれほど異なるのに、なぜ前向きだったといえるのか。驚きを禁じえない。

産経新聞 2016年04月14日

露外相発言 北方四島の帰属交渉「拒否しない」は日本引き込む詐術だ

北方領土について問題の存在さえ否定する発言を繰り返してきたロシアのラブロフ外相が、一部の海外メディアに対し、北方四島の帰属をめぐる交渉を「拒否しない」と語った。

これだけでロシアが、領土交渉に前向きな姿勢に転じたと受け取るとしたら、あまりにも軽率かつ危険といえる。

外相は平和条約の締結交渉と領土問題の切り離しを繰り返し主張した。むしろ、北方領土を返すつもりがないことが改めて分かったと、冷徹に分析すべきだ。

会見は、15日の訪日を前に行った。内容を吟味すれば、およそ楽観などできないことが分かる。

ラブロフ氏を筆頭に、ロシア政府高官は、領土問題の存在を否定する言動を重ねてきた。今回の会見でも、領土交渉に入る必要性など認めていない。

四島をめぐる話し合いに応じるといっても、平和条約を結ぶ前に、実質的な領土交渉を行う気などないというのだから、とても信用はできない。

あきれるのは、日本に対し、北方領土は第二次世界大戦の結果、ソ連・ロシア領になったと認めるよう、改めて迫っている点だ。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/2481/