G20共同声明 税逃れ防ぐ枠組み広げよ

朝日新聞 2016年04月17日

G20の課題 構造問題への対応こそ

主要20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議が米ワシントンで開かれ、各国が金融政策や財政出動、構造改革などの政策を動員して成長をめざす方針を確認した。

金融市場の動揺がようやく静まり、最近は経済危機の再発懸念がずいぶん薄らいできた。とはいえ、世界経済が長期停滞に陥ったのではないかとの声も経済学者から増えている。

国際通貨基金(IMF)は最近、今年から来年にかけての各国の成長率見通しを軒並み下方修正した。これに対し、主要国はどこも新たな景気てこ入れ策の余力に乏しい。比較的堅調な米国経済ですら、世界経済を引っ張る成長エンジンの力強さは見られない。

こんなとき、どの国も自国の輸出産業を有利にできる通貨安を促したくなるものだ。だが通貨安競争はゼロサムゲームであり、自国が有利になる分だけ他国を不利にしてしまう。今のように世界中の経済がさえない時にそうした手法は控えるべきだ。G20がその点を再確認したのは当然である。

G20は目の前の対策よりも、長期的、構造的な課題へと取り組みの重点を移していくべきだろう。数年前まで急成長を誇ってきた新興国には最近、経常赤字や高インフレ、外貨準備不足などから資本流出が心配される国が少なくない。不測の事態に備える意味でも、G20の協調はますます重みを増している。

国家指導者らがタックスヘイブン(租税回避地)を利用した税金逃れや資産隠しに関与していたことを暴露した「パナマ文書」への対応も試金石となろう。文書には中国やロシア、英国などの首脳周辺、サウジアラビア国王やウクライナ大統領らの名前が登場している。

とりわけ新興国や途上国にはゆゆしきことだ。経済の抜本改革には政治の安定が不可欠だ。その責任を担うべき首脳が資産を海外に逃がし、黙認していたなら、みずから自国の将来を信じていないことになる。

多国籍企業や富裕層による税逃れへの対応は、各国で深刻な格差問題の面からも重要だ。それを防ぐことで再配分の新たな財源も生まれるだろう。

経済協力開発機構(OECD)とG20は、多国籍企業の税逃れ防止のため、銀行口座などの情報の自動交換制度を導入する。今回のG20会議は、この制度にすべての関係国が遅れずに加わるよう求めた。パナマなど合意していない国にも強く参加を働きかけ、協調体制を拡大してほしい。

読売新聞 2016年04月18日

G20と世界経済 政策協調の実効性が問われる

世界経済の安定へ各国に問われるのは、必要な政策の実行に向け、協調をより強める努力だ。

主要20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が、財政・金融政策や構造改革などの政策手段を総動員する決意を改めて示した。

共同声明は「成長は緩やかでばらつきがあり、下方リスクや不確実性が残っている」として、世界経済の行方に懸念を表明した。

金融市場は落ち着きを取り戻しつつあるが、G20が危機感を緩めず、協調の重要性を再確認したことは評価できる。

ただ、各国それぞれの事情があり、G20は一枚岩ではない。

米国が機動的な財政政策の有効性を指摘したのに対し、ドイツは慎重な姿勢を崩さなかった。

欧州経済は、デフレ懸念を強めている。景気テコ入れには、財政余力のある国が歳出拡大に踏み出すことも有力な手段となろう。

声明は、通貨の切り下げ競争を回避する意向も盛り込んだ。その上で、「為替相場の過度な変動や無秩序な動きは経済・金融に悪影響を与えうる」という、前回会合と同様の表現を明記した。

日本は、異次元の金融緩和の正当性が認められ、急激な円高に市場介入などで対応することにも理解が得られたと解釈している。

米国の追加利上げペースの鈍化をにらみ、今後、円高がさらに進む心配がある。G20後の記者会見で、麻生財務相は「為替の動きに必要な対応をとることは、G20の合意内容に沿う」と強調した。

だが、ルー米財務長官は、「最近は円高が進んでいるが、市場の秩序は保たれている」と、日本が円安誘導に動くことを牽制けんせいした。円安・ドル高が国内製造業の輸出不振や雇用悪化などを招くことを警戒しているためだ。

先進各国が、思惑の違いを乗り越えて協調を強めなければ、市場の安定はおぼつかない。

G20は、行き過ぎた節税への歯止め策を強化する方針も打ち出した。タックスヘイブン(租税回避地)を使った節税の実態を暴露した「パナマ文書」の流出が、国際問題化したことを踏まえた。

明確な違法行為でなくとも、巨額の資産を持つ企業や富裕層が、過少な税金しか納めない事態は放置できない。課税の抜け道を塞ぐ国際協力体制を構築しようとするG20の方向性は適切である。

新手の税逃れ方法に迅速に対処するためにも、緊密な情報交換と、より効果的なルール作りに努めていくことが期待されよう。

産経新聞 2016年04月17日

G20共同声明 税逃れ防ぐ枠組み広げよ

米ワシントンで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が、タックスヘイブン(租税回避地)などを使った課税逃れ対策の強化で合意した。

各国首脳らとタックスヘイブンの関係を暴露した「パナマ文書」が流出し、税の透明性や公平性が大きく揺らいでいる。こうした事態を踏まえ、租税回避を封じる国際的な枠組みの整備を確認したのは当然である。

問題はその実効性だ。共同声明は、G20だけでなく、あらゆる関係国が銀行口座などの情報を交換し合う仕組みに参加するよう求めた。非協力的な国には制裁も検討する。国際的な監視網からの抜け道を作ってはならない。

G20には、首脳の親族らの関与が指摘された英国や中国、ロシアも含まれる。不正を許さぬ強い意志で各国が連携することが課税逃れを防ぐ大前提である。

すでにG20は、各国間で銀行口座の情報を交換したり、大企業による過度の節税を抑止したりする枠組みでの協力を決めている。

ここには約100カ国・地域が参加を表明しているが、タックスヘイブンとされる国・地域には不参加のところもある。この状況が改善されないかぎり、国際包囲網の実もあがらないだろう。

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