「口利き」強制捜査 甘利氏は自ら説明尽くせ

朝日新聞 2016年04月10日

甘利氏の疑惑 説明責任はどうなった

甘利明・前経済再生相の現金授受問題で、東京地検特捜部が強制捜査に乗り出した。

政治家や秘書が口利きの見返りに対価を受け取れば、あっせん利得処罰法違反になる。

甘利氏や元秘書が千葉県の建設会社側から受け取った600万円は、どんな趣旨なのか。

甘利氏は見返りとは無関係の政治献金という認識を示しているが、建設会社の総務担当者は元秘書らによる都市再生機構(UR)との補償交渉への介入と、補償金の支払いが実現したことへの謝礼の意味だったと証言している。

双方の主張は大きく食い違うが、政治家側がカネを受け取り、依頼者の求めに応じて役所などに働きかける――そんな口利きがもしあったとしたら、言語道断である。東京地検は実態の全容解明に全力をあげてもらいたい。

同時に、忘れるわけにいかないのは、甘利氏自身が説明責任を果たしていないことだ。疑惑があれば、捜査当局の解明を待つまでもなく、自ら国民に説明する。それが国民の代表である国会議員の責任だ。

甘利氏自身、大臣辞任を表明した1月末の記者会見で「弁護士による調査を続け、しかるべきタイミングで公表する」と約束したはずである。

過去に政治とカネの疑惑に問われた他の政治家には「捜査当局に資料が押収され、事実関係が確認できない」などと弁明する例もあった。だが甘利氏の場合は、大臣辞任後2カ月半、調査期間があった。途中経過であっても公表できるはずだ。

一連の経緯については、まだ不明な点が多い。

その一つは、甘利氏自身のかかわりである。

甘利氏は元秘書がURと交渉していることは「今回初めて知った」と1月の会見で説明したが、URはその後、甘利氏も交渉について把握していると元秘書から伝えられたとしている。

真相究明のため、野党は衆院予算委員会への甘利氏の参考人招致を求めてきたが、自民党は応じようとしない。

甘利氏は体調がすぐれないことを理由に、国会を欠席している。だが、自ら説明できなくても、例えば弁護士らを通じての説明は可能なのではないか。

安倍首相の責任も大きい。

甘利氏を重要閣僚に起用してきた首相は、自らの「任命責任」を認めている。ならば甘利氏に説明するよう促すべきだし、党総裁として自民党にも何らかの形で説明責任を果たさせるよう指示すべきだ。

読売新聞 2016年04月12日

甘利氏資金疑惑 捜査で「口利き」の有無解明を

甘利明・前経済再生相を巡る現金授受問題で、東京地検特捜部が関係先を捜索した。

不透明な資金提供や口利きの疑惑がある以上、捜査を尽くすのは当然である。甘利氏も、きちんと説明責任を果たさねばならない。

捜索容疑は、あっせん利得処罰法違反だ。甘利氏側に資金を渡した千葉県の建設会社や、この会社と補償交渉をしていた都市再生機構(UR)が対象になった。

建設会社は2013年8月、URから2億2000万円の補償金を受け取る契約を結んだ。その後、甘利氏に計100万円、元公設秘書に500万円を提供した。元公設秘書らは今年1月まで、UR職員と面談を重ねていた。

甘利氏は「秘書らが交渉に介入したことはない」と語っている。だが、仮に補償交渉で建設会社が有利になるよう、UR側に働きかけていれば、提供資金は口利きの謝礼だった可能性が出てくる。

あっせん利得処罰法は、政治家や秘書が、その権限に基づく影響力を行使して口利きをした見返りに、報酬を得ることを禁じている。政治家が民間業者と金銭面で癒着し、政府や自治体に働きかけをするのを防ぐのが目的だ。

建設会社とURの間でどのような交渉が行われ、元秘書はどう関与したのか。提供資金には、どんな意図が込められていたのか。特捜部は、その全体像をしっかりと解明してもらいたい。

甘利氏は1月の辞任時の記者会見で、弁護士らによる事実関係の調査を継続したうえ、その結果について「しかるべきタイミングで公表する」と明言していた。

ところが、この会見以降、「睡眠障害」を理由に、公の場に姿を一切見せていない。国会には、5月まで療養が必要だとする診断書が提出されているという。

閣僚辞任だけで、疑惑に終止符を打つことは許されない。その点は、甘利氏も十分に自覚しているはずだ。第三者による調査の全容について、早急に明らかにすることが求められよう。

民進党など野党は、環太平洋経済連携協定(TPP)承認案の審議と絡めて、甘利氏の参考人招致や証人喚問を要求している。

閣僚らによる「政治とカネ」の不祥事が続いたことで、国民は不信を募らせている。

甘利氏は、体調がすぐれず、国会に出席できないのなら、弁護士による説明や書面回答など、別の方法で説明責任を果たすことを真剣に検討すべきだ。

産経新聞 2016年04月10日

「口利き」強制捜査 甘利氏は自ら説明尽くせ

道路新設工事をめぐる土地のトラブルで甘利明前経済再生担当相の関与が指摘された「口利き」問題は、東京地検特捜部があっせん利得処罰法違反容疑で関係先を強制捜査する事態となった。

甘利氏はこの問題で、依頼を受けた建設会社から提供された資金を元秘書が適切に処理していなかったことなどを理由に、1月に閣僚を辞任した。

だが疑惑の全体像はわからないままだ。立法府としても自浄機能を求められながら、果たせずにいた。捜査当局がさきに解明に動き、任意で元秘書の事情聴取も行った。これを重く受け止めなければならない。

国会招致要求を拒み、甘利氏をかばってきた自民党の責任は大きい。甘利氏は今からでも進んで説明責任を果たすべきだ。

この土地トラブルでは、千葉県内の建設会社と都市再生機構(UR)との補償交渉に甘利氏の事務所が関与し、少なくても計600万円が提供されていた。

甘利氏は元秘書による口利きを否定したが、建設会社側は口利きと認識していた。

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