核兵器を保有する米英仏3か国も賛同し、核廃絶を追求する明確なメッセージを被爆地から発出した意味は重い。
先進7か国(G7)は広島市で外相会合を開き、核軍縮・不拡散を推進する共同文書「広島宣言」を採択した。
原爆で広島と長崎が「極めて甚大な壊滅と非人間的な苦難」を経験したと指摘した。「核兵器のない世界」に向けて、政治指導者らの被爆地訪問を呼び掛けた。核兵器保有国と非保有国の対話や核の透明性向上も求めている。
昨年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議は関係国の対立で、決裂した。唯一の被爆国として、核軍縮を主導するのは、日本の使命だ。広島宣言を土台に、国際協調体制の再構築を図るべきだ。
ケリー米国務長官は、現職閣僚として初めて平和記念公園を訪れ、原爆死没者慰霊碑に献花した。平和記念資料館の見学について、「決して忘れることのできないものとなった」と感想を述べた。
原爆投下を正当化する米国世論はなお根強い。ケリー氏の訪問を、核兵器に関する日米間の認識のズレを埋める一歩としたい。
外相会合は、南シナ海情勢の緊迫化を踏まえて、海洋安全保障に関する声明も採択した。
中国の名指しを避けながらも、「埋め立て、拠点構築と軍事目的での利用」の自制を求めた。
中国は、人工島を造成し、軍事拠点化を進めるなど、「力による現状変更」を加速している。
事態の深刻さについて、日米だけでなく、G7全体で共通認識を持ったことは重要だ。G7は、東南アジア各国とも連携し、中国に独善的な行動を慎むよう、粘り強く促さねばならない。
声明は、仲裁を含む法的な紛争解決の重要性も強調した。ハーグの常設仲裁裁判所によるフィリピンとの領有権問題の解決を拒む中国を牽制する効果があろう。
過激派組織「イスラム国」への対応策では、G7が国際連携を主導することで合意した。
テロの防止には、テロリストに関する情報の共有や出入国管理の厳格化、テロ資金対策などを多角的に進める必要がある。
来月下旬の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)では、より具体的な対策を打ち出すべきだ。
G7外相は、北朝鮮の核実験と弾道ミサイル発射を強く非難した。3月の国連安全保障理事会の制裁決議を国際社会が厳格に履行し、北朝鮮への圧力を高めることが大切である。
この記事へのコメントはありません。