五輪選手と賭博 なんとも救いようがない

朝日新聞 2016年04月09日

裏カジノ賭博 選手も社会の一員だ

スポーツ選手だから正しく振る舞うのではない。社会で暮らす人間はだれであれ、ルールを守らなければならない。

日本バドミントン界のエース桃田賢斗選手と、五輪代表にもなった田児賢一選手が、違法カジノで賭博をしていた。

4カ月後に迫ったリオデジャネイロ五輪の代表になれば、桃田選手はメダル候補と言われていた。じつに残念なことだ。

2人が所属するNTT東日本では、他の6人も違法な賭博に手を染めていた。同社と日本バドミントン協会は調査を尽くし、厳正に対処してほしい。

五輪へ選手を派遣する日本オリンピック委員会も、各団体と協力して、選手教育のあり方を見直す機会とすべきだろう。

最近、スポーツ界の不祥事が相次いでいる。プロ野球では現役選手による野球賭博や、元選手の覚醒剤事件があった。

五輪競技のトップ選手たちの環境は、プロ野球選手とそう変わらない。中学、高校から競技中心の生活に明け暮れる。

好成績に伴い賞金が増える選手もいる。高収入と人気を集めるにつれ、自分を特別な存在と勘違いしかねない土壌に足を踏み入れる。その危うさは、どんな選手にもおこりえることだ。

もちろん、一流選手になるまでの長い努力の過程は、称賛に値する。だから、そこに模範の人間像を見いだそうとすることもある。

だが現実には、競技での成功と人間の高潔性とは、必ずしも一致するものではない。政治や文化も含めて分野を問わず、成功者も、人間として等しく順法意識と道徳心を保つよう自らを律していくのは当然のことだ。

もし今のスポーツ界に、競技での成功が「特別な地位」をもたらすという錯覚があるとすれば、意識変革が必要だろう。

世界的にみてもテニス界の八百長疑惑や、陸上界の禁止薬物使用など問題が発覚するたび、「スポーツの高潔性」が語られる。スポーツの価値を再確認することは大切だが、その言葉には「スポーツにかかわる人間は普通の人たちとは違う」という響きも潜んでいないだろうか。

社会は、規範のなかで努力する人間の営みを礎としている。その原則から超越した「特別な存在」はありえない。

2人が通ったとされる裏カジノでは、暴力団関係者も逮捕された。反社会的勢力と立ち向かう社会の流れにも水を差した。

今回を機に、すべてのスポーツ界の関係者は改めて考えてほしい。優れた選手やコーチである前に良き社会人であれ、と。

読売新聞 2016年04月13日

バド選手賭博 身を律してこその五輪候補だ

愚かな行為により、選手としての実績をふいにした。残念な事態だ。

バドミントンのトップ選手が、違法カジノ店で賭博を行っていたことが明るみに出た。

世界ランキング2位の桃田賢斗選手は、リオデジャネイロ五輪でメダル獲得が期待されていた。田児賢一選手はロンドン五輪の日本代表だった。桃田選手は6回程度、田児選手は60回程度にわたり、賭博をしたことを認めている。

日本バドミントン協会は、桃田選手に無期限の出場停止処分を下した。これにより、リオ五輪出場の夢は絶たれた。田児選手については、さらに重い無期限の登録抹消処分となった。

当然の判断と言えるだろう。

違法カジノ店は暴力団の資金源となっているケースが多い。そうした場所に出入りし、違法行為に手を染めた選手を日本代表として五輪に派遣することに、一般社会の理解は得られまい。

五輪を狙えるような選手は、強化費や遠征費といった形で、国や所属企業などから援助を受けている。桃田選手らの行為は、周囲の期待に対する裏切りである。

「実績を残していれば、多少のことは許されるという甘えが透けて見える」との専門家の指摘は、もっともだ。

2人が所属していたNTT東日本は、桃田選手を出勤停止30日の懲戒処分にし、田児選手を解雇した。ほかにも、選手とOBの計6人が違法賭博に関与していた。

桃田選手らが闇スロット店に出入りしていたことも、社内調査で新たに判明している。社員でもある選手の行動を適切に管理できなかった責任は重い。

バドミントン協会は、日本代表の合宿でコンプライアンス(法令順守)研修を実施することを決めた。選手教育の在り方を、スポーツ界全体で再検討すべきだ。

人気女子選手の登場や、ロンドン五輪女子ダブルスでの銀メダル獲得などで、バドミントンへの関心が以前より高まっている。桃田選手らを目標に、練習に励むジュニア世代の選手たちのショックは大きいだろう。

賭博を巡る不祥事がスポーツ界で相次いでいる。プロ野球の読売巨人軍の選手4人が野球賭博に関与し、失格処分を受けた問題はファンを失望させた。

多くの人に感動をもたらすことができるスポーツ選手の行動は、常に注目されている。社会的な責任を強く自覚し、身を律することが求められる。

産経新聞 2016年04月08日

五輪選手と賭博 なんとも救いようがない

なんとも腹立たしい。情けなくもあり、救いようがない。

リオデジャネイロ五輪でメダルや優勝も期待されたバドミントン男子の世界ランク2位、桃田賢斗選手が違法な闇カジノ店に出入りしていたことが明らかになった。ロンドン五輪代表の田児賢一選手も、一緒に賭博をしていた。

日本バドミントン協会の幹部はすでに、桃田選手を「(五輪代表に)推薦できない」と明言している。あまりに軽率で無自覚な行動が、周囲をどれだけ失望させ、自らの夢も打ち砕くことになるのか。今は、その重大な結果をかみしめるしかあるまい。

桃田選手は福島県立富岡高時代に東京電力福島第1原発事故で避難し、同県猪苗代町で練習を再開して世界ジュニア選手権で優勝した経歴も持つ。五輪では、復興の象徴的存在としての活躍にも期待があったが、それもむなしい。

闇カジノ店は昨春、警視庁が摘発し、経営者や指定暴力団系幹部らを賭博開帳図利容疑で逮捕した。店の関係者らの話では、一昨年末ごろから2人の出入りが始まったという。

田児選手は五輪代表の重みを熟知していたはずであり、NTT東日本の後輩でもある桃田選手を導く立場にあった。それが2人そろっての賭場通いとは、あまりにもお粗末である。

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