日米など12か国が参加する環太平洋経済連携協定(TPP)の承認案と関連法案について、国会での審議が始まった。
関連法案には、著作権の保護期間の延長や、畜産業者への経営支援の拡充などが盛り込まれている。
安倍首相は衆院本会議で、「TPPを我が国の成長戦略の切り札にしていく」と述べ、加盟の意義を強調した。
世界経済の先行き懸念が強まる中、透明性の高い新たな自由貿易圏を構築し、アジア太平洋地域を活性化する重要性は一段と増している。与野党は、今国会での着実な承認を図るべきだ。
民進党の山尾政調会長は、TPP合意が、コメや麦など「重要5項目」の関税維持を求めた国会決議に違反すると主張した。「国益が守られたと強弁するには無理がある」などとも批判した。
だが、日本の農林水産品の関税撤廃率は81%で、軒並み90%を超える他国を大きく下回る。
首相が、「決議の趣旨に沿うものと評価してもらえる」と反論したのは理解できる。
野党からは、交渉経緯や合意内容に関する政府の情報提供が不十分で、食の安全などへの不安が強まっているとの指摘も出た。政府は丁寧に説明し、国民の懸念や誤解を払拭する必要がある。
与野党は、交渉経緯をまとめた文書を政府が提出したことなどを受け、TPP特別委員会の審議に入ることで合意した。
夏に参院選を控えて国会会期の延長は難しく、審議日程は窮屈だ。与野党がいたずらに対立し、時間を浪費してはならない。
巨大な自由貿易圏をどのように活用して、力強い成長につなげるか。そうした建設的な議論を深めることが大事だ。
政府が昨年11月にまとめたTPP政策大綱は、農家の保護策が手厚い一方で、農産品の輸出促進といった「攻め」の施策は全体として手薄だった。
TPPの負の影響を和らげる配慮は大切だが、過度な保護行政は、かえって日本農業の弱体化に拍車をかけかねない。国会では、国際競争力を高める具体策について、話し合ってもらいたい。
気がかりなのは、11月に大統領選を控える米国で、民主、共和両党の有力候補がそろってTPP反対を表明していることである。
TPP発効には、日米両国の承認が不可欠だ。米議会に早期承認を促すためにも、日本の国会での迅速な審議が求められる。
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