電力自由化を、料金引き下げと利便性向上につなげることが大切だ。
4月1日から電力小売りが全面自由化された。これまで各地方の大手電力会社からしか電気を買えなかった一般家庭も、自由に電力会社を選べるようになった。
ガスや通信など新規参入業者は200社を超える。携帯電話など他のサービスとセットで契約すると、従来の電気料金より、年1万円程度安くなるケースもある。
自由化によって、消費者の選択肢が広がる意義は小さくない。
ただ、電気の使用量が少ない家庭が乗り換えると、料金負担が増えることもある。契約内容を吟味して、判断する必要があろう。
3月25日までに契約の切り替えを申し込んだのは38万件で、全体の0・6%にとどまる。新規参入が多く、競争が激しい東京電力管内でも1%にすぎない。
料金プランが増えて複雑になり、どの契約が一番得なのか、決めあぐねている人も多い。
来春の都市ガス小売りの全面自由化では、逆に大手電力などが新規参入する。さらに増える料金プランを見極めて判断したいという消費者も少なくないのだろう。
携帯電話の「2年縛り」のように、途中解約に違約金を課す料金プランも少なくない。行き過ぎた顧客の囲い込みは、利用者の利益を損なう。各社は、消費者にとって魅力的なサービスの提供に、知恵を絞ってもらいたい。
全面自由化を目前に、新電力5位の日本ロジテック協同組合が、経営不振に陥ったのは、拡大路線が裏目に出たためである。
発電設備を持つ自治体などから購入した電気を、企業などに大手電力より安く販売していたため、利幅が薄く、資金繰りが悪化した。契約先に送るための電気を十分に確保できず、供給責任さえも果たせなくなった。
電気事業者にとって、電気の安定供給は最大の責務である。
新電力が破綻した際は、大手電力が代わりに電気を供給する責任を負うことになっている。
停電などのトラブルを回避するため、全国的な電力需給の調整を担う電力広域的運営推進機関が、円滑な電力融通に関する役割をきちんと果たさねばならない。
気がかりなのは、原子力発電所の再稼働が遅れ、大手電力の供給力も十分ではないことだ。自由化による競争促進は、電力の安定供給が前提である。安全が確認された原発の再稼働を進め、供給余力を確保することが欠かせない。
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