関空伊丹民営化 競争力の強化につなげたい

朝日新聞 2016年04月04日

関空と伊丹 民の力で安定軌道に

関西空港と大阪(伊丹)空港の運営が1日から、完全な民間会社に託された。仙台空港も7月から民営化され、高松や福岡、広島でも具体的な検討が進む。関空、伊丹が日本の空港民営化のモデルとなれるか。運営側の手腕が問われる。

新運営会社の中核はオリックスと仏バンシ・エアポートだ。今後44年間で2・2兆円の対価を国側に払う条件を受け入れ、2空港の活性化に乗り出した。思い切った経営判断だ。

ただ、国や地元の協力なくして成功はおぼつかない。幸い訪日外国人客の増加が続き、経営環境は上げ潮だ。今度こそ両空港を安定軌道に乗せ、関西全体の浮揚へつなげていきたい。

伊丹空港の騒音問題の解決を目指し、関空が開港したのは94年だった。2本の滑走路を備えた人工島の整備に投じられた金は2兆円を優に超す。

しかし20年余りを経ても、関空はその能力を発揮しきれていない。年23万回の発着容量があるのに、現状は7割程度。旅客数も年3千万人を超すという開港前の想定に届いていない。

伊丹空港も地元の強い要望で存続したが、国内線専用で新幹線との競争も激しく、旅客数はこのところ横ばいだ。

新会社は毎年200億円程度を投じ、両空港内の施設の魅力向上に取り組む方針だ。バンシは昨年までに4カ国の25空港を運営し、カンボジアでは旅客数を大きく伸ばした。そうした経験と大胆な発想で、関空、伊丹の潜在力を引き出してほしい。

旅客数の変動の波に耐えうる長期戦略も求められる。

近年は格安航空会社(LCC)の就航が相次ぎ、中国人観光客らも増加の一途だが、この勢いがずっと続く保証はない。一方、日本の人口は減少局面に入った。テロや伝染病、災害といったリスクも常にある。

新会社が打ち出す経営戦略を、国と地元は尊重し、側面から支援していくべきだ。

いま空港が直面している課題は、新会社だけで解決できないものが多い。例えば、関空では入国審査の混雑に外国人の不満が相次ぐ。国の審査態勢の強化が急務だ。関空と関西各地のアクセスを良くすることや、宿泊施設不足の改善も、地元の官民挙げた取り組みが欠かせない。

関空、伊丹に加え、神戸を含めた3空港の役割分担を改めて整理する必要も出てこよう。新会社は「当面は関空、伊丹で精いっぱい」とし、神戸市が望む3空港の一体運営には慎重だ。関西全体の利益を考えながら、じっくり議論していきたい。

読売新聞 2016年04月01日

関空伊丹民営化 競争力の強化につなげたい

民間の資金と手法を生かした空港経営により、国際競争力を強化させることが大切だ。

関西国際空港と大阪空港(伊丹空港)の運営が1日、オリックスと仏ヴァンシ・エアポートなどの企業連合が設立した「関西エアポート」に移行された。

国が全額出資する新関空会社が関西、伊丹両空港のターミナルビルや滑走路など、施設の所有権を保有したまま、その運営権を関西エアポートに売却した。政府が成長戦略の柱の一つとして推進する空港民営化の第1号である。

関空は昨年、1000万人を超える外国人が利用した関西圏の空の玄関口だ。民営化をテコに、基幹空港としての利便性を一層向上させてもらいたい。

新会社は、44年間という長期にわたって空港運営を担う。契約最終の2059年度には、両空港の旅客数と売上高を14年度の1・7倍に増やす目標を掲げる。

空港ビルの店舗配置を見直し、低価格のホテルも併設して、増益を図る。着陸料を引き下げて、新規の乗り入れを呼び込み、利用者増につなげる。ヴァンシ社は、こうしたノウハウを活用し、欧州を中心に33空港の運営に携わる。

その実績や航空会社とのパイプを基に、関空が苦戦している欧米路線を拡充できるかどうかが、民営化の成否のカギとなろう。

運営権の売却額は、総額2兆2000億円にも上った。関空建設に伴う1兆円超の負債を解消する狙いから、最低入札額が高く設定されたためだ。

関西エアポートは契約期間中、年490億円を新関空会社に支払い続ける必要がある。

空港の運営は、景気動向や感染症の流行、テロなどの影響を受けやすいとされる。利用者へのサービスを損なわずに、収益を維持していく経営力が問われる。

空港の民営化は今後、各地で続く。国が管理する仙台空港の運営は7月から、東京急行電鉄を中心にした新会社が担う。

新千歳や函館、高松、広島、福岡などの各空港でも、運営権売却が検討されている。

空港の活性化は、地域振興にもつながる。運営会社には、柔軟な戦略やスピード感といった民間の強みを生かし、観光やビジネスの需要を掘り起こしていくことが求められる。自治体や旅行会社などとの連携は欠かせない。

関西、伊丹両空港のケースは、民営化が定着するかどうかの試金石と言えよう。

産経新聞 2016年04月06日

関西エアポート 「民」の発想で活性化図れ

関西国際空港と大阪(伊丹)空港の運営が完全に民営化され、オリックスと仏バンシ・エアポートなどが出資する新会社「関西エアポート」に移行した。

訪日外国人が急増する追い風の中でのテークオフで、視界は良好である。今後の空港民営化の試金石ともなる。

民間ならではの柔軟な手法で利便性とサービスの向上に努め、経営を安定軌道に乗せてほしい。

滑走路やターミナルビルなど施設の所有権は、国が全額出資する新関西国際空港会社が保有する。運営権だけで2兆2千億円という巨額になったのは、海上空港建設に伴う1兆円を超える負債を解消するためだった。

こうした条件から難航が予想された売却がすんなりと決まったことには、格安航空会社(LCC)の登場も味方した。

発着枠に余裕があることからアジアの旅客をターゲットにLCCを積極的に誘致し、それによる旅客数急増で、昨年は前年比20%増の2321万人と過去最高を記録した。

関西エアポートは今後、年490億円を新関空会社に支払いながら、44年間という長期にわたり運営を行う。

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