民間の資金と手法を生かした空港経営により、国際競争力を強化させることが大切だ。
関西国際空港と大阪空港(伊丹空港)の運営が1日、オリックスと仏ヴァンシ・エアポートなどの企業連合が設立した「関西エアポート」に移行された。
国が全額出資する新関空会社が関西、伊丹両空港のターミナルビルや滑走路など、施設の所有権を保有したまま、その運営権を関西エアポートに売却した。政府が成長戦略の柱の一つとして推進する空港民営化の第1号である。
関空は昨年、1000万人を超える外国人が利用した関西圏の空の玄関口だ。民営化をテコに、基幹空港としての利便性を一層向上させてもらいたい。
新会社は、44年間という長期にわたって空港運営を担う。契約最終の2059年度には、両空港の旅客数と売上高を14年度の1・7倍に増やす目標を掲げる。
空港ビルの店舗配置を見直し、低価格のホテルも併設して、増益を図る。着陸料を引き下げて、新規の乗り入れを呼び込み、利用者増につなげる。ヴァンシ社は、こうしたノウハウを活用し、欧州を中心に33空港の運営に携わる。
その実績や航空会社とのパイプを基に、関空が苦戦している欧米路線を拡充できるかどうかが、民営化の成否のカギとなろう。
運営権の売却額は、総額2兆2000億円にも上った。関空建設に伴う1兆円超の負債を解消する狙いから、最低入札額が高く設定されたためだ。
関西エアポートは契約期間中、年490億円を新関空会社に支払い続ける必要がある。
空港の運営は、景気動向や感染症の流行、テロなどの影響を受けやすいとされる。利用者へのサービスを損なわずに、収益を維持していく経営力が問われる。
空港の民営化は今後、各地で続く。国が管理する仙台空港の運営は7月から、東京急行電鉄を中心にした新会社が担う。
新千歳や函館、高松、広島、福岡などの各空港でも、運営権売却が検討されている。
空港の活性化は、地域振興にもつながる。運営会社には、柔軟な戦略やスピード感といった民間の強みを生かし、観光やビジネスの需要を掘り起こしていくことが求められる。自治体や旅行会社などとの連携は欠かせない。
関西、伊丹両空港のケースは、民営化が定着するかどうかの試金石と言えよう。
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