北と核サミット 米は「テロ国家」再指定を

朝日新聞 2016年04月06日

核サミット テロ防ぐ不断の警戒を

テロが蔓延(まんえん)する時代、核の危うさが増している。世界に散在する核物質をテロ組織や過激派の手から、どう守るか。

その喫緊の問題を話しあう核保安サミットが先週、米ワシントンで開かれた。50カ国以上の首脳らが、核物質の管理強化などの共同宣言を採択した。

原発や研究機関など原子力技術を持つ国が施設や物質を厳格に管理することは、世界に対する義務だ。各国首脳がその認識を共有した意義は大きい。

首脳会合は今回を最後とし、今後は国際原子力機関(IAEA)などが引き継ぐ。核テロを防ぐ国際的な警戒体制をいっそう引き締めるよう心がけたい。

核保安サミットは、「核なき世界」を掲げたオバマ米大統領が提唱し、2010年から2年に1度開かれてきた。

この間、核軍縮や核不拡散の分野で、期待ほどの進展があったとはいえない。イランの核問題は合意ができたものの、米国とロシアの対立で軍縮は滞り、北朝鮮は核実験を繰り返した。オバマ氏が「多くの仕事をやり残した」と述べた通りだ。

一方、4回のサミットは一定の成果をあげた。各国がプルトニウムや高濃縮ウランなどの研究用核物質を米ロに引き渡し、盗難や強奪のリスクを下げた。核物質がどこで作られたか探る技術開発や人材育成も進んだ。

こうした地道な努力は重要さを増している。過激派組織「イスラム国」(IS)など国家ではない組織が伸長するなか、原発や医療用の放射性物質の普及で、核の悪用を防ぐ国際行動は火急の課題になっている。

実際、先月のベルギー連続テロでも、自爆した容疑者が原子力技術者の動向を監視していたことがわかり、原発などを狙っていた疑いがでている。

最後のサミットにロシアは欠席したが、核テロの脅威に国境はない現実を直視すべきだ。今後も軍縮とテロ対策の両輪で、「核なき世界」を追い求める努力を各国首脳に求めたい。

原発大国である日本は、初回サミットの時は海外の専門家が眉をひそめる問題国だった。福島第一原発では、米国からのテロ対策情報が生かされていなかったこともわかっている。

米研究機関の採点では、事故後に日本のテロ対策は改善したとされるが、原発の防護や作業員の管理強化などは途上だ。

非核保有国としては特別に大量のプルトニウムを持ちながら、その削減計画がないという現状は、0点と評されている。日本の原子力の保安そのものが問われていると考えるべきだ。

読売新聞 2016年04月05日

サミットとテロ 官民一体で脅威を封じ込めよ

国際テロの脅威が高まる中、凶行の抑止に万全を期さねばならない。

5月26、27日の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)まで、2か月を切った。今月10日から広島市で開かれる外相会合を手始めに、関係閣僚会合も順次、各地で予定されている。

サミットでは、テロ対策が主要な議題の一つとなる見通しだ。テロリストが、その場を格好の標的と捉えても不思議はない。日本でのサミットは6回目だが、これまで以上にテロの危険性が現実化する状況での開催と言えよう。

まず重要なのは、テロリストを入国させないことである。

政府は昨年12月、首相官邸が主導して「国際テロ情報収集ユニット」を発足させた。海外の過激派組織の動向を把握し、不審者の侵入を水際で防ぐため、海外機関との連携強化が欠かせない。

サイバー攻撃への備えも大切だ。特に、電力や交通などの重要インフラについては、厳重なシステム管理が求められる。

「ホームグロウン・テロ」(自国育ちのテロ)に対する警戒は怠れない。インターネット上で「イスラム国」への支持を表明する若者らは、日本にも少なくない。書き込みの内容をチェックし、犯行の芽を摘む必要がある。

テロリストが紛れ込んだ場合を想定し、会場警備の練度向上が必要なのは言うまでもない。

サミット会場の賢島に陸路で渡る手段が2本の橋に限られるのは警備上の利点と言える。一方で、真珠の養殖いかだや島内の茂みなど、テロリストが身を隠せる場所が多いのは懸念材料である。

2005年の英グレンイーグルズサミットでは、約600キロ離れたロンドンが同時テロの舞台になった。今回も、東京などでの発生を不安視する声は強い。

劇場や競技場など、不特定多数の人が集まる「ソフトターゲット」を狙ったテロが世界で相次ぐ。国内のそうした施設を、警察だけで守るのは不可能だろう。

来場者が異常に気付いた場合には、速やかに通報することが大事だ。施設側も手荷物検査の徹底などでテロ防止に協力したい。

サミット後も、20年の東京五輪など大規模イベントが控える。中長期的な視点で、対策を強化せねばならない。火山の噴火のように、テロの警戒レベルを公表するシステムの導入は検討に値しよう。

通信傍受の要件緩和や共謀罪創設などの是非についても、議論を深めるべきだ。

産経新聞 2016年04月03日

北と核サミット 米は「テロ国家」再指定を

核安全保障サミットを主催したオバマ米大統領は閉幕の記者会見で、核開発を続ける北朝鮮について「最も差し迫った懸念だ」と述べた。

この危機意識を、核によるテロを阻止するために集まった50以上の各国首脳らが共有し、経済制裁の厳格履行などを通じて対北圧力を強めることが重要である。

それには、オバマ政権の行動が欠かせない。具体的な方法の一つとして、北朝鮮に対して解除したままになっている「テロ支援国家」の再指定を求めたい。

「国際テロ行為への支援を繰り返す国」と断定するものだが、同時に再指定によって、ならずもの国家の振る舞いを許さない米国の意志を示すことにつながる。

その強い決意を、日本を含む国際社会が共有することで、対北包囲網の構築を急ぐ必要がある。

北朝鮮は度重なる安保理決議やそれに基づく制裁を受けながら、核実験やミサイル発射を繰り返し、大気圏再突入の模擬実験に成功したなどと、核・ミサイル技術の「進歩」を喧伝(けんでん)している。

核サミットの主眼は、テロ組織など「非国家」による核テロを防ぐことだが、北朝鮮は国家ぐるみの最悪のテロ組織と位置付けられよう。オバマ氏が言及したように、その脅威は切迫しており、暴走を放置できない。

読売新聞 2016年04月03日

核安全サミット 厳格管理でテロへの悪用防げ

原子力発電所の警備や核物質の管理を徹底し、核テロを防ぐことは、国際社会の今日的かつ重大な使命である。

ワシントンで核安全サミットが開かれ、50か国以上の首脳らが参加した。

核物質を用いたテロに関する情報共有の促進を柱とする共同声明を採択した。国際原子力機関(IAEA)などを財政・技術面で支援する行動計画も策定された。

議長のオバマ米大統領は、「世界の核物質がテロリストの手に渡ることがないよう保護する取り組みにおいて、重要で意味のある進展があった」と強調した。

関係国とIAEAなど国際機関が連携し、核物質の輸送訓練の強化など実効性のある措置を取ることが肝要だ。「イスラム国」など過激派組織から核関連施設を防護せねばならない。

深刻なのは、核テロが現実の脅威となりつつあることである。

ブリュッセルで3月下旬に起きた同時テロに関連し、犯行グループが、ベルギーの原子力施設幹部の自宅をビデオ撮影していたと報じられた。幹部を拉致し、放射性物質を入手する目的で、動向を監視していたとみられる。

同時テロで犯行声明を出した「イスラム国」が核テロを企てる可能性に備えねばなるまい。

放射性物質は、繁華街などで爆発、拡散させることで容易に、「ダーティー・ボム(汚い爆弾)」となり得る。医療機関や研究施設で保管される場合が多く、軍事施設と比べて警備は脆弱ぜいじゃくだ。

日本は5月に主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)、2020年に東京五輪を開く。事前の保安対策の拡充が急務だろう。

核物質について、安倍首相は「日本は他国に比類のないレベルの透明性を確保し、適正な管理を徹底している」と指摘した。

日米両国は、核安全サミットに合わせて、核物質の保管や輸送などに関する機密情報の共有を進めることで合意した。研究用の高濃縮ウランを新たに米国に移送することでも一致した。

日米の主導により、関係国の核テロ対策を加速させたい。

核安全サミットは、「核兵器のない世界」を目標に掲げるオバマ氏の提唱で2010年に始まった。来年の大統領退任に伴い、4回目の今回が最後となった。

この6年間で、日本を含む30か国の50施設以上から、計約3・8トンの高濃縮ウランとプルトニウムが撤去された。国際社会の継続的な取り組みが求められよう。

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