原子力発電所の警備や核物質の管理を徹底し、核テロを防ぐことは、国際社会の今日的かつ重大な使命である。
ワシントンで核安全サミットが開かれ、50か国以上の首脳らが参加した。
核物質を用いたテロに関する情報共有の促進を柱とする共同声明を採択した。国際原子力機関(IAEA)などを財政・技術面で支援する行動計画も策定された。
議長のオバマ米大統領は、「世界の核物質がテロリストの手に渡ることがないよう保護する取り組みにおいて、重要で意味のある進展があった」と強調した。
関係国とIAEAなど国際機関が連携し、核物質の輸送訓練の強化など実効性のある措置を取ることが肝要だ。「イスラム国」など過激派組織から核関連施設を防護せねばならない。
深刻なのは、核テロが現実の脅威となりつつあることである。
ブリュッセルで3月下旬に起きた同時テロに関連し、犯行グループが、ベルギーの原子力施設幹部の自宅をビデオ撮影していたと報じられた。幹部を拉致し、放射性物質を入手する目的で、動向を監視していたとみられる。
同時テロで犯行声明を出した「イスラム国」が核テロを企てる可能性に備えねばなるまい。
放射性物質は、繁華街などで爆発、拡散させることで容易に、「ダーティー・ボム(汚い爆弾)」となり得る。医療機関や研究施設で保管される場合が多く、軍事施設と比べて警備は脆弱だ。
日本は5月に主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)、2020年に東京五輪を開く。事前の保安対策の拡充が急務だろう。
核物質について、安倍首相は「日本は他国に比類のないレベルの透明性を確保し、適正な管理を徹底している」と指摘した。
日米両国は、核安全サミットに合わせて、核物質の保管や輸送などに関する機密情報の共有を進めることで合意した。研究用の高濃縮ウランを新たに米国に移送することでも一致した。
日米の主導により、関係国の核テロ対策を加速させたい。
核安全サミットは、「核兵器のない世界」を目標に掲げるオバマ氏の提唱で2010年に始まった。来年の大統領退任に伴い、4回目の今回が最後となった。
この6年間で、日本を含む30か国の50施設以上から、計約3・8トンの高濃縮ウランとプルトニウムが撤去された。国際社会の継続的な取り組みが求められよう。
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