日米韓首脳会談 対中結束の姿勢示せたか

読売新聞 2016年04月03日

米中首脳会談 南シナ海緊張の責任を問う

南シナ海の人工島の軍事拠点化を加速させ、地域の緊張を高める。その行動を正当化しようと強弁する中国の独善的な姿勢が際立っている。

オバマ米大統領は中国の習近平国家主席と会談し、「航行の自由」と領有権紛争の平和的解決の重要性を強調した。習氏が昨年9月の首脳会談で人工島の「軍事化を進める意図はない」と約束したことを守るよう求めたものだ。

習氏は「『航行の自由』を口実に中国の主権と安全保障上の利益を損なう、いかなる行為も受け入れられない」と主張し、議論は平行線をたどった。

容認できないのは、習氏が、国際社会共通の利益である「航行の自由」を体現する米艦艇の巡視活動を非難したことである。

習政権は、パラセル(西沙)諸島で実効支配するウッディ島に戦闘機やミサイルを配備した。スプラトリー(南沙)諸島で造成した人工島では、飛行場やレーダー施設の整備を進めている。

フィリピンに近いスカボロー礁でも、新たな埋め立ての兆候があるとされる。周辺国の懸念を顧みず、南シナ海のほぼ全域を力で囲い込もうとするたくらみだろう。

自衛措置は軍事化に当たらないとの詭弁きべんは通用しない。

二枚舌を使って自国の「核心的利益」を拡大し、米主導のアジア秩序に挑戦し続けていては、国際社会の信頼は得られまい。地域の安定に相応の責任を果たさずに、自らが望む大国の地位が認められるはずもなかろう。

核ミサイル開発を進める北朝鮮を巡って、オバマ氏は、米中両国が「朝鮮半島の非核化と国連制裁の完全な履行に取り組んでいる」との認識を示した。

習氏は「我々は意思疎通し、連携している」と応じる一方、米最新鋭ミサイル防衛システムの韓国配備には反対した。

北朝鮮のミサイル攻撃を抑止するための米韓の措置を、中国に対する牽制けんせいと位置づけるのは筋違いである。北朝鮮包囲網を強化するには、習氏は言葉通り、制裁を厳格に履行し、日米韓と協調せねばならない。

米中両国は、今回の首脳会談に合わせて、気候変動問題や核の安全対策に関する共同声明を発表した。いずれも重要なテーマだ。着実に履行してもらいたい。

だが、中国の海洋進出や人権問題など懸案の解決で進展がないまま、協調の演出にばかり腐心してはいないか。これでは、健全な2国間関係とは言えまい。

産経新聞 2016年04月02日

日米韓首脳会談 対中結束の姿勢示せたか

米ワシントンでの核安全保障サミットに合わせて日米韓3カ国首脳が会談し、核・ミサイルで挑発を重ねる北朝鮮の脅威に結束して対応することを確認した。

その意義は大きいが、より重要といえるのは、南シナ海などで一方的な海洋進出を進める中国の現状についても、3首脳が意見を交わしたことである。

米国と、それぞれ同盟関係にある日韓両国が地域の安全保障を考える場合、対中国で協調することは死活的に重要だ。

だが、昨年9月の北京での軍事パレードに韓国の朴槿恵大統領が出席したことなどから、日米韓の軸が揺らいでいた。

2年ぶりとなるこの3カ国首脳会談を契機に、本来あるべき強固な連携を取り戻してほしい。

中国問題を取り上げたことに対し、当事者も敏感に反応した。中国外務省の高官が現地で「当事国でない国は関与を避けるべきだ」と反発した。

南シナ海の海上交通路(シーレーン)の安全は、日米韓を含む国際社会全体の利益である。これを脅かす行為は看過できない。

「軍事化の意図はない」とした習近平国家主席の昨年9月の訪米時の発言は、まったく信用できない。その後、スプラトリー(中国名・南沙)諸島の人工島に滑走路やレーダー施設が建設され、パラセル(西沙)諸島には戦闘機が展開している。

読売新聞 2016年04月02日

日米韓首脳会談 対「北」で協力の実効性高めよ

日韓関係の改善を契機に、日米韓3か国の協力を拡充し、北朝鮮包囲網の実効性を高めることが肝要である。

訪米中の安倍首相がオバマ米大統領、韓国の朴槿恵大統領と会談し、北朝鮮の軍事挑発に結束して対応するため、日米韓の安全保障協力を強化する協議を始めることで一致した。

首相は「北朝鮮の挑発行動に歯止めをかけるため、安保協力が喫緊の課題であり、首脳がリーダーシップを発揮したい」と語った。オバマ氏は、国連安全保障理事会の北朝鮮制裁決議について「強力に実施したい」と強調した。

北朝鮮は核実験、長距離弾道ミサイル発射に続き、短距離ミサイル発射などを繰り返す。核兵器の小型化、ミサイルの大気圏再突入技術の獲得も喧伝けんでんしている。

恫喝どうかつ外交」は北朝鮮の常套じょうとう手段である。過剰反応は不要だが、常に警戒を怠らず、抑止力を維持しておくことは欠かせない。

昨年末の慰安婦問題の合意で、3か国の間で最も疎遠だった日韓関係が修復され、緊密な連携が可能になった意味は大きい。

安保理決議の厳格な履行を通じて、北朝鮮への圧力を高めるには、日米韓が主導的な役割を果たし、中国など関係国への働きかけを強めることが大切である。

日米韓の協調は、一時は中国との連携に傾斜した韓国を日米の側に引き戻し、中国に独善的な海洋進出の自制や国際ルールの順守を迫るうえでも重要だ。

安保協力では、日韓双方にとってメリットの大きい軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の締結を急ぎたい。

GSOMIAは、2012年6月の調印直前、韓国が国内世論の反発を理由に、一方的に締結を延期したままとなっている。14年末に北朝鮮の核・ミサイル情報に限って米国経由の交換が一応、可能になったが、極めて非効率だ。

日韓首脳会談で安倍首相は、慰安婦合意について「両国内で様々な問題を抱えているが、リーダーシップを持って合意を実施したい」と語った。朴氏は「誠実に履行していきたい」と応じた。

合意について、韓国の元慰安婦支援団体は反発しているが、肯定的な元慰安婦も少なくない。

今月13日に総選挙を控える中、政治問題化を避けつつ、韓国政府による元慰安婦を支援する財団設立の準備を着実に進めるべきだ。朴氏は、自ら決断した合意を順守するため、関係者の理解を広げる努力を主導してもらいたい。

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