経済発展路線を円滑に継承できるか。新体制の舵取りが問われよう。
ミャンマーで、国民民主連盟(NLD)のティン・チョー大統領率いる新政権が発足した。
NLDが昨年11月の総選挙で、軍政の流れをくむ連邦団結発展党(USDP)を破って圧勝したことに伴う政権交代である。民主的な選挙を経た文民大統領の誕生は約半世紀ぶりとなる。
NLDのアウン・サン・スー・チー党首は、外相や大統領府相など4閣僚を兼務する。「大統領の上に立つ」と公言していたように、側近のティン・チョー氏を通じて政権を主導するのだろう。
憲法は外国籍の親族がいる者の大統領就任を禁じており、英国籍の子息をもつスー・チー氏に、その資格はない。関連条項の一時凍結という裏技による大統領就任を目論んだが、軍の反発に配慮して見送ったとされる。
ティン・チョー氏は国会での就任演説で、「民主的な基準に沿った憲法にする責任がある」と強調した。憲法改正に事実上の拒否権を持つ軍に対し、改正を粘り強く働きかけるとみられる。
スー・チー氏が就いた外相は、大統領や軍首脳らと並んで、非常時に強大な権限を有する「国防治安評議会」のメンバーでもある。入閣により、軍の影響力を牽制する思惑があるのではないか。
NLDは人材に乏しく、スー・チー氏の政治手腕も疑問視されている。民間の専門家やUSDP出身者を閣僚に起用したのも、苦肉の策だろう。軍やUSDPとの協調が欠かせない。
国民の生活水準の向上など、新政権の課題は山積している。
テイン・セイン前政権は、中国一辺倒の外交政策を転換し、米欧との関係改善を図った。経済改革を進めて、投資環境を整備することで外資を呼び込み、高成長を実現してきた。
懸念されるのは、新政権の具体的な経済政策や外交方針がなおも明確でないことだ。
スー・チー氏の行き過ぎた情報統制も指摘される。新政権の政策決定過程の透明性が十分に保たれないようなら、外国企業の投資拡大への不安は拭えまい。引き続き規制緩和や法制度整備などに努める必要があろう。
東南アジアと南アジアを結ぶ要衝にあるミャンマーが民主国家として安定した発展を遂げることは、日本にとっても重要だ。日本は従来通り官民を挙げて、ミャンマーの国造りを後押ししたい。
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