子供の預け先が見つからず、親が退職に追い込まれる。そんな事態をなくすため、官民で取り組みを加速させたい。
政府が、保育所に入所できずにいる待機児童の解消に向けた緊急対策を公表した。
小規模保育所の定員上限19人を22人に引き上げるなど、既存の施設や制度の規制緩和が柱である。昨年4月に待機児童が50人以上いた114市区町村を中心に、積極的な実施を促していく。
小規模保育所は、待機児童の多い0~2歳児を預かる。マンションの一室や空き店舗でも開設できるため、用地取得が難しい都市部での有力な受け皿と言える。
認可保育所については、国の基準より手厚く保育士を配置している自治体などに定員枠の拡大を求める。子供の「一時預かり」事業での定期利用も可能にする。
認可保育所の増設には時間がかかる。新年度の直前になっても預け先が見つからない保護者向けの緊急対策として、規制緩和で受け皿を確保するのは理解できる。抜本対策ではないが、自治体は、前向きに対応してもらいたい。
待機児童は昨年4月時点で2万3167人と、前年より1796人増えた。保育所定員は着実に伸びているが、共働き世帯の増加に伴う需要拡大に追いつかない。
深刻なのは、やむなく認可外保育所に入ったり、保護者が育児休業を延長したりして、待機児童に含まれない「隠れ待機児童」が6万人にも上っていることだ。
2015年度に始まった「子ども・子育て支援新制度」は、潜在ニーズも踏まえた保育サービス整備を自治体の責務と位置付けた。だが、財政難などを理由に、自治体の対策は後手に回っている。
緊急対策について、子供の「詰め込み」になるとして、保育の質の低下を懸念する声も強い。
規制緩和は、政府が定める最低基準の範囲内にとどまり、質の確保に一定の配慮をしているが、保育士の負担が増える恐れがある。時限措置とするのも一案だ。
無論、抜本対策として認可保育所の増設は欠かせない。最大の課題は、保育士の確保である。
安倍首相は、5月に策定する「ニッポン1億総活躍プラン」に、保育士の待遇改善を含む中長期的対策を盛り込む考えを示した。
民間保育士の月給は全産業平均を10万円以上も下回る。着実に賃金を上昇させる具体策を打ち出すことが求められる。研修の充実などで専門性を高め、職場への定着を促す取り組みも重要である。
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