民進党結党大会 国民の不信感を払拭できるか

朝日新聞 2016年03月28日

民進党発足 1強と対峙するには

新たな旗のもとに集った議員の熱気と、国民の冷めた空気。まずは、この差を埋める努力から始めるしかない。

民主党と維新の党などの議員が合流し、新しい民進党としてきのう党大会を開いた。

待機児童問題で安倍政権を追及する若手の山尾志桜里氏を政調会長に起用したが、岡田代表らほとんどの役員が民主党からの横滑り。党名以外にどこが変わったのかとの批判もある。

冷ややかな視線を浴びるのも無理はない。

自民党の長期政権に代わる新たな政治への期待を背負って09年に発足した民主党政権は、国民の思いを裏切り続けた。

実現できないマニフェスト、空回りした政治主導、そして消費増税をめぐる党の分裂。その時に出ていった議員の一部とよりを戻しただけだ、との印象はぬぐいようがない。

政権を失った民主党が立ちすくむうちに、安倍政権は、民主党の野田内閣による12年の衆院解散から3度続けて国政選挙に勝ち、「1強」の政治体制を築いてきた。

安倍首相は「民主党政権時代より、企業倒産件数は約3割減った」などと、政権交代で経済は上向いたと強調する。半面、格差の拡大や待機児童問題などへの国民の不満は根強い。

首相はまた、集団的自衛権の行使容認や安全保障法制に見られるように、憲法の枠組みを越えかねない危うい道を進む。その先に見すえるのは「変えること」を目的とした憲法改正だ。

安倍氏の政権運営に危うさは感じるが、ほかに選択肢が見あたらない――。こんなもどかしさを抱く有権者は多い。安倍政権のもとでの13年参院選と14年衆院選がいずれも52%台の低投票率だったことは、そのひとつの証左だろう。

岡田代表は党大会で、民主党政権時代に期待に応えられなかったことを「深く反省する」と語った。そのうえに、新たな一歩を踏み出すべきときだ。

衆参で156人の野党第1党となる民進党が、1強に対峙(たいじ)しうる存在になれるかどうか。それが、政治に緊張感を取り戻せるかどうかのカギを握る。

民進党は「自由、共生、未来への責任」を結党の理念とし、教育、雇用、男女の三つの格差是正や立憲主義の堅持を打ち出すという。方向は妥当である。

国民一人ひとりの思いをすくいあげ、具体的で説得力ある政策として政権にぶつけ続ける。

政党にしかできないこの地道な作業を通じてしか、信頼を取り戻すことはできない。

読売新聞 2016年03月28日

民進党結党大会 国民の不信感を払拭できるか

民主党に対する国民の根強い不信感を払拭する契機にできるのか。

民主、維新の両党が合流した「民進党」の結党大会が開かれた。岡田代表は挨拶で、「日本に政権交代可能な政治を実現するためのラストチャンスという認識を共有しよう」と強調した。

改革結集の会だった4人が参加し、衆院議員は96人となった。参院では、無所属の1人が加わった民進党の60人と、維新からの5人が統一会派を近く結成する。

新しい党名は、「国民と共に進む」との意味を込めたという。

民主党が推した「立憲民主党」は世論調査で、維新が提案した「民進党」を下回った。結果的に、政権時代の負のイメージを引きずる「民主党」の名を捨て去ることができたとも言える。

党役員人事で、待機児童問題を巡って注目された若手の山尾志桜里衆院議員を政調会長に抜擢ばってきしたのは清新さを求めたのだろう。

肝心なのは、民進党が政権を担える党として現実的で説得力ある政策を打ち出せるかどうかだ。

連合の神津里季生会長は結党大会で、民進党の政策について「目先の人気取りで、魂まで失ってはならない」と指摘した。

その意味で、結党大会で決まった新綱領の内容は物足りない。

憲法改正については「未来志向の憲法を国民とともに構想する」との曖昧な文言にとどまった。維新は改正に前向きだが、民主党に慎重論が強かったためだ。

安全保障政策では、「専守防衛を前提に現実主義を貫く」と訴え、「日米同盟の深化」も掲げた。

しかし、民主、維新両党は、米国が高く評価する安保関連法について、廃止法案を共産党などと共同で国会に提出した。こうした言行不一致で、同盟をどう深化させるつもりなのだろうか。

原発政策は、「原発に頼らない社会」を目指すとした。当初案は「2030年代稼働ゼロ」だったが、電力系労組などの反対で、より現実的な表現に落ち着いた。

夏の参院選に向けて、共産党などとの選挙協力も課題となる。

共産党が1人区で独自候補を取り下げることで、野党候補の一本化は徐々に進んでいる。衆院選での協力も検討するという。

だが、そもそも共産党との間では、憲法や日米安保など政策面の隔たりが大きい。民進党内の保守系議員などには、「共産党にすり寄りすぎだ」との反発も高まっている。今のままでは、「野合批判」が一層強まろう。

産経新聞 2016年03月26日

民進党の結党 名前以外に何が変わった

結党大会を開く以上、民主党を母体とする新党がどう生まれ変わったのかを強くアピールする機会とすべきだろう。

それなのに、名称以外に特段の目新しさがあるとは考えにくい。野党第一党として政権の受け皿となる気構えが、どこまであるかも疑わしい。

「自由」「共生」「未来への責任」を理念に据えた。それに基づき重要政策をどのように打ち立て、巨大与党との論戦に挑むのか。そこが見えないのだ。

参院選では、安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」を批判したいのだろう。

ならば民進党としてのデフレ脱却に向けた目玉政策は何か。まだないというなら、直ちに党内で意見を集約し、論戦への備えを進める必要がある。

注目したいのは、消費税増税を含む社会保障・税一体改革をどうするかである。自民、公明、民主の3党の合意で消費税増税は進められた。合流を経て民進党は3党合意を引き継ぐのか。

民主、維新両党間では、消費税再増税について温度差がある。維新側は消費税増税凍結法案の提出を主張するなど、再増税に反対する考えなのに対し、民主は凍結法案には否定的だ。

「軽減税率を前提とした消費税引き上げは認められない」との統一見解は、亀裂を生じさせないための方便に聞こえる。

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